感想 清瀬赤目 『アンネッタの散歩道』1巻

 大体の内容「妖精と人間が織りなす少し不思議で愉快なファンタジー」。帯の惹句からとらせていただきましたが、もうちょっと書くと、妖精のメイブと人間のアンネッタが出会うまでの物語、と言えばいいでしょうか。しかし、アンネッタはメイヴが妖精だとは知らないので、この辺がどういう風になっていくのか、というのが重要になってきますが、それはまだ先の話でありましょう。
 さておき。
 この漫画はケルト系の話がバックボーンにありますが、そこをムリムリと重点する事はそうなく、基本は妖精さんであるメイブ達が冒険の旅をしていく、というお話であります。きらら系列なので基本的に楽しい旅を、という面がありますが、単純にそれだけと言う事はなく、色々と考えてみるに値するものが含まれているのがこの漫画の良さです。それがアンネッタとの手紙の内容として書かれて、それで更に今回がどういう話だったのかなあ、というのが感じられるのがいい塩梅となっております。それも含めて、全体的にジュブナイルの方向性、特に海外物のファンタジーな物の味わいがとても強く感じられるのも、いい塩梅。特にこの単行本の装丁は本当にその方向性、海外ジュブナイルファンタジーの装丁めいているのがカバーにも本体にもあるので、その方向性を本作る、装丁する側もきっちりと視野にいれて作られている、というので完成度の高い仕上がりとなっているのも見逃せないでしょう。個人的にはこの装丁だけで元取れたくらいに気に入っています。
 という話はさておき。
 基本的にこの、メイブ達の旅というのは珍道中という言葉がしっかりするものですが、先にも書いたようにそこで起きる事は単に楽しいとか愉快だけでもなく、ちょっと考えたくなる物があるのがいいのです。個人的にはメイヴとモリーがいつもの役目を変わる回の、やっぱりお互いが違う事が出来るから一緒にいられるんだな、というのとか、人間の指輪を巡る回の人間男性がひたむきな姿に変わっていくのとかが好きです。片方はお互いの大変さを、片方は愛とは、というある種大上段な物ですが、それを嫌味に感じさせず、きっちりと見せてくるのは素直に脱帽です。これも先に書きましたが、ケルト系の話、例えばメイブ達が零落して妖精になっている昔の神の末席であるというのもそんなに強く見せないのも中々やるなあ、と。そういう設定をガツガツ出したくなるのを、さりげなく、でも印象には残るように、という所作な訳で、そりゃやるなあ、と思う訳ですよ。アンネッタの方もまた色々ある中で、メイヴとの文通で思う所を出しつつ自分を省みていく、というのもよかよか。ミラクという枠の中で、またきららという枠の中で、こういう雰囲気を出してくるのを見ると、ミラク好きが更に加速するなあ。
 とかなんとか。