世直しイッキ大集会報告:分科会

1.住まい分科会

 住まいは普遍的な人権であり、全ての人は健康で文化的な居住施設への権利を有しています。住まいは生存にとって必要不可欠なものであり、その権利は、社会的身分がどうあれ、国籍・宗教・性別・収入・家族関係等によって、いかなる差別による侵害も許されるべきではありません。そのような視点から、「安心できる住まいをみんなの手で」というスローガンの下、住まい分科会では、安定した住まいを確保できない、ハウジングプアともいうべき貧困層である当事者支援者12名より、取り組みや現状の報告がありました。
 ゼロゼロ物件被害当事者、ホームレス地域生活移行支援事業で行われた3000円アパート裁判支援者、東京借地借家人組合より主に住まいを不安定にさせる定期借家制度の問題点や廃止に向けての取り組みが述べられ、自立生活センターHANDS世田谷の横山さんら車いす身体障害者当事者、精神障害者支援者、シングルマザー当事者からは入居差別や生活保護への無理解、保証人制度による入居への困難が語られました。さらに、保証人代行詐欺事件当該からは保証人代行ビジネスの被害報告があり、自立生活サポートセンター・もやいの稲葉さんからは規制緩和により保証会社がビジネスチャンスを見つけて付け込んできたという報告がされました。外国人労働者からは住み込みで働き不当解雇とともに住まいも脅かされている現状が話され、最後に山谷労働者福祉会館活動委員会から野宿者が生活保護を集団申請することで野宿からアパートへ入っているという報告がありました。
 回収したアンケートには、今はルームシェアをしているが次に引っ越すときに保証人のことが心配といった意見や、入居時の差別や偏見に驚いたといった感想がありました。
 限られた時間の中ではありましたが、住まいと貧困の強固な結びつきを示すことができた画期的な集会であり大変意義深い取り組みでした。今後も、この集会を契機に互いにつながりを持つことで、住まいの貧困についてさらなる展開が期待されます。(藤本)

2.労働分科会

 労働分科会では、「使い捨てか、過労死か? ―これって“カニコー”(蟹工船) じゃん!? 今こそ、つながろう」とのロング・タイトルのもと、さまざまな雇用形態で働く人々や、雇用の入り口から疎外された人々が、自らの境遇と思いを語り、討議しました。
 2部構成の前半のリレー・トークでは、外国人労働者氷河期世代の求職者、女性労働者、介護労働者、日雇建設労働者らのおかれている状況について、当事者が差別と無権利の実態を語り、支援者が事態打開に向けた連帯を訴えました。
 後半は、制度改正の焦点ともなっている、派遣労働問題と長時間労働問題をテーマにパネル・ディスカッションを行ないました。雨宮処凛さんによるコーディネイトのもと、過労死遺族、「名ばかり管理職」、旅行添乗員、日雇派遣労働者、製造業務派遣の当事者が訴えました。
 会場発言も活発で、集会での発言は初めてという方や、もっと具体的な運動提起が欲しいとの注文も出ました。
 労働分科会の目標は、①「労働問題」をめぐって様々な立場に分断されている人々が、互いの状況を理解し合うこと、②孤立から抜け出し、人とつながること、③労働の改善と貧困根絶のために行動すること。当面、労働者派遣法の抜本改正を求め、声をあげること、が目標でした。
 音響トラブルで、参加者に忍耐を強いることになってしまいましたが、それを帳消しにする価値ある発言の数々で、分科会は成功しました。

3.食の危機分科会

分科会「食の危機」では、(1)農山漁村生産現場、(2)都市の食に関する労働現場、(3)食卓という現場で生きる人々が一同に会し、各現場の問題・課題を共有する「交流の場づくり」をめざした。
 当日は明治公園に張られたブルーシートの上に約50人が集った。まず養鶏業、遠洋マグロ漁業、コンビニ労働の現場を経験してきた3人のスピーカーから報告があり、討論では会場から次々に手が挙がった。都内の労働組合、生協、野宿者支援にたずさわるフードバンクはじめとしたグループなど、様々な活動に携わる人々が、「食の危機」を結節点に問題提起を行なった。いくつか議論の論点を挙げる。遠洋漁業の現場を知るスピーカーからは「『安くて良いもの』を求めることが貧困を生み出すのではないか」という根本的な問題提起がなされた。東北地方から駆けつけた食肉加工業者からは、第一次産業に携わる者が都市の高所得者層をターゲットとした販売戦略を選ぶのでは格差社会の解消という方向に向かわないのではないか、しかし暮らしを立てていくためには致し方ない面もある、というジレンマが語られた。
 分科会では、問題解決のための方策を話し合う前に、今や分断状態にある(1)(2)(3)の各現場で生きるそれぞれが問題を共有し、相互の関係づくりをめざすことを目的にすえた。その意味で当初の目的は達成できたが「個々の論点を深めながら、つないでいく」という課題が残された。今後、「食の危機」に集った有志で、細々でも活動を持続させたいと考えている。(相川陽一)

4.死刑に異議あり!分科会

「死刑に異議あり!」分科会では、日本と世界の死刑に関する情報や死刑台の実物大模型の展示、死刑廃止クイズ、新作講談の公演などを行いました。
 午後3時少し前から、アマチュア講談師の電脳文化桃さんが芥川龍之介原作の「桃太郎」を。続いてプロの田辺凌鶴さんが、この日のために準備した新作講談「死刑と裁判員制度」を披露しました。机と布でしつらえた舞台の上に演台と和服という姿が目を引き、テレビカメラを含めて50人〜60人の観客が集まり盛況でした。お二人とも当日だけの客演ではなく、受刑者の相談に返信するボランティアの仲間です。
 「死刑廃止クイズ」にも300人ほどの人が解答と賞品の受け取りに立ち寄ってくれました。展示のパネルを見て質問をする人もいて、大いに手ごたえを感じました。
 死刑判決と死刑執行の急増は日本社会の保守化を象徴しています。死刑制度は貧困や戦争と同じ根も持っているはずです。今後も相互連携の道筋を模索していきましょう。(中元義明)


5.多重債務・消費者問題分科会

 2006年12月の貸金業法改正に始まって、2007年の割賦販売法改正、そして消費者保護の立場から現在の解りにくい縦割りの行政を、横断的にアクセスし易くするための、消費者庁設置の構想等、消費者を取り巻く社会が大きく変わろうとしています。私達の運動によって変えてきました、と言っても過言ではありません。しかし、ここで油断しているとまた、元の消費者虐め弱い者虐めの社会のスタートラインに立ってしまいます。本分科会では、貧困の根元となっている弱い者いじめを許さないとこれら運動に携わっている法律家・労働団体・消費者団体が集まり、現状と課題をリレートークして頂きました。
秩父事件にちなんだ平成草の乱が続いていることをアピールするため、農民の姿で参加した方たちお疲れ様でした。
 司会は、全国青年司法書士協議会会長の稲本司法書士。最初に宇都宮弁護士(農民姿)の挨拶から始まり、最高裁で先頭になってサラ金と闘っている茆原洋子弁護士、割賦販売法や消費者庁設置で活躍の拝師弁護士、消費者問題、特に消費者庁設置問題で活躍の金融オンブズネットの原早苗さん、被連協澤口会長(農民姿)、被連協本多事務局長、利息制限法引き下げ対策の柴田武男教授(聖学院大学)、調停対策会議の水谷司法書士、全青司の若鍋司法書士(おにぎりの帽子をかぶっての出場)、中央労福協の高橋事務局長、商工ローン対策会議の新里弁護士(農民姿)、中日新聞の白井記者、ホームレス・生活保護問題で活躍の後関司法書士、愛媛たちばなの会の青野さん、ジャーナリストの北さん、金城大学の大山小夜さん、取鳥弁護士会の会長大田原弁護士(会長自らキャラバンを運転)等運動の第一人者に報告して頂きました。
最後に、改正貸金業法完全実施するぞ!ヤミ金を完全撲滅するぞ!消費者被害をなくす消費者庁設置を実現するぞ!等々のシュプレヒコールで盛り上げ終了しました。
 入れ替わりはあったけど5、60人の参加でした。
 隣では全国クレジット・サラ被害者連絡協議会が主催する、無料の飲食の模擬店もあり、周辺は常ににぎやかでした。ちなみに模擬店のカレーうどんは340食、完食でした。やきとり、焼きいか、バタじゃが、甘酒も好評で、全部無料にしましたが、カンパも集まり何とか赤字にはならなくてすみました。(井口鈴子)

6.コトバの貧困


「コトバの貧困」分科会では、論じる/論じ合うという方法ではなく、「路上文庫」と題した臨時のミニ図書館を開設し、利用者に自由に閲覧してもらうという方法を採った。
 「移動する広場」有志メンバーのうち7人が、「貧乏人が貧乏人に読んで欲しい」という基準で選んだ本を一人あたり3〜5冊持ち寄り、オリジナルのタグを付け展示した。また、カフェを併設し、メンバーが近所で採取した柿の葉に煎茶を加え「貧乏ブレンドティー」として廉価で提供するなど、メニューにもちょっとした手間と機知が盛り込まれた。
 また、朗読系パフォーマンスでは2名が同時に朗読することで、ポリフォニック(多声的)な空間の創出が試みられた。後半では3人の飛び入りが加わり5人の声が交差した。これとは別に朗読した人へのお茶半額サービスも実施した。1つ1つの実践は地味だが「お互いが少しずつ持ち寄る/少しずつ豊かになっていく」という意志で通底していたと思う。(植松青児)

7.社会保障分科会

 社会保障分科会では、(1)介護問題(2)手当の問題(3)年金問題(4)生活保護問題の4分野からの発言と、会場からの発言、全体のまとめを含めて16名の方が発言しました。
(1)介護問題では、介護保険の給付抑制制限が厳しくなり、事業者や従事者の多くがワーキンプア状態になっている実態が話されました。障害者分野からは、障害者自立支援法の施行後、障害当事者が在宅生活を続ける上で、それを支える介護者確保が困難になっている実態等が話されました。
(2)手当の問題ではシングルマザーの立場から、日本では9割近くの母子世帯が働いているが、母子世帯の1人当たり年間所得は高齢世帯の半分にも満たないこと。そのような状況なのに今年度から、児童扶養手当の支給が改悪され、支給後5年間経過した(子どもが8歳以上の)世帯については半額削減という改悪がなされたこと。しかし、当事者を中心とした運動の成果もあり、半額削減は「事実上の凍結」(一部支給停止適用除外届を出せば従前の額を継続支給)となった等の報告がありました。
(3)年金問題では、老齢年金の取り組み・制度の狭間にある障害年金問題や、在日無年金問題の報告がありました。
(4)生活保護問題では、不当な東京地裁の判決を受けた老齢加算廃止訴訟の原告の訴え・知的障害当事者からの生活保護問題・当事者からの、通院移送費問題での被害事例の報告を受け、生活保護問題対策全国会議の尾藤代表から、まとめの発言がありました。
最後に法政大学の杉村さんから、分科会全体のまとめをしていただき、参加者全体で「社会保障費を増やせ! 2200億円削減はもう限界」なんだということを確認しあいました。(渡辺潤)

8.後期高齢者医療制度分科会

 各分野からのリレートークが行われ、最初に障害者インターナショナル日本会議の三澤了議長が発言した。「障害者は65歳以上から後期高齢者医療制度に選択加入となるが移らなければ、それまでの医療費の助成制度が制限されたり、打ち切られる道県が十数ある」と語った。
労働者福祉中央協議会の高橋均事務局長は「人は年相応に病気になるから皆でバックアップすべきなのに、この制度は死ねというものだ」と同制度を批判した。
 医師の立場から全国保険医団体連合会の土岐昌弘理事が報告。「後期高齢者終末期相談支援料に至っては、どうせ死ぬならどのように死なせるかという項目だ」と追求した。
ミニ学習会の後のフリートークでは、「子供の被扶養者として死ぬことも許されない」、「(被保険者の経済力が脆弱で)保険制度といえないのに保険料が強制的に取られる」などの声が聞かれた。
 最後に、怒ってる会を代表して住江憲勇・保団連会長より廃止運動への更なる奮闘が呼びかけられた。
 なお、マイクの接続が悪く使用できず、急遽ハンドマイクをお借りすることになりましたが、冒頭にお話いただいた各分野からのご報告いただいた皆様にはたいへんご迷惑をおかけしました。(田村秀樹)

9.女性と貧困分科会

 まず、女性と貧困問題について、男性よりも貧困な女性が多いこと、そして低賃金不安定な女性労働を放置してきたことにより若い層にまで不安定労働を広げる結果になったという、9月28日の女性と貧困ネット立ち上げ集会の報告を行なった。そのあと、アイスブレイクを行なって体を動かした。その後、在日フィリピン人シングルマザーの西本マルドニアさんがビザの問題を、障害女性の貧困は障害男性よりも年収が低く深刻である、と臼井久実子さんと瀬山紀子さんが話し、それぞれがメッセージをテント村のいちむらみさこさんたちが準備したパペットに付けた。女性の働き方の分断を語る人、時給はせめて1000円欲しいと語る人(2000円でもいいのでは、と言う人もいたが)、部屋をシェアしたら児童扶養手当不正受給の疑いをかけられた、という社会保障の問題を話したシングルマザーなどさまざまな人が発言しそれぞれメッセージをパペットに付けていった。フリマも無料で行い、セカンド・ハーベストのトマトジュースも配られた。「Binbow women」「女性でも安心」という横断幕が非常に良かったという人が多かった。(赤石千衣子)



10.子どもワークショップ

 子どもワークショップは、日本社会の「子どもの貧困」問題が深刻な実態にあることが国際的に指摘されているにも関わらず、政策課題として取り上げられない現状があることから、子どもに関わる幅広いネットワークを作り発信していく必要を感じているメンバーが集い、企画したものです。運営にあたっては、(1)乳幼児期から青少年期に至るまでライフステージを通して子どもとその家族の現実を把握すること、(2)福祉や教育など子どもがかかわる様々な場を網羅すること、(3)当事者と支援者がともに現実を共有すること、どを大切にしようと話し合いました。当日は、新聞奨学生の立場から、児童養護施設の生活を経験した立場から、また教育ローンと化している「奨学金」の問題を問う大学生の立場からなど、若者の声が参加者の胸に響くものでした。また、定時制高校の統廃合問題をはじめ、保育所児童相談所、福祉事務所、自立援助ホームの現状など、多くの進行中の問題が提起されました。(湯澤直美)


11.フェアトレード分科会

 分科会の内容を『日本と世界の貧困はつながっている?〜フェアトレードから考える〜』というテーマ設定に基づき話をしました。比較的こじんまりした分科会でしたが、20〜30人くらいの方が参加してくれました。
 オルター・トレード・ジャパンが、フェアトレードの説明、コーヒー生産地の現状を話すのに加えて、実際フェアトレードのコーヒー豆を自分たちで焙煎して販売されている「こもれびコーヒー」さんに、なぜその活動を始めたかを話してもらいました。また、山梨県で若者たちが行っている有機農畜産物の産直活動を、国内のフェアトレード活動として捉え、その説明に加えて、一緒に農村で農作業をしながら生活してみませんか、と提案しました。
 参加者からの質問は、実際には、フェアトレードより、山梨の活動に関してのことが多かったのですが、どうやって困った状態から自立していくか、というフェアトレードの持つ活動の側面が、海外でも国内でも同じであることがつながった気がします。(吉澤真満子)


12.語り合い分科会

 参加して下さった人々は、途中で出入りがあったが、延べ数で27名程度だった。初めは2グループ、途中で3グループになった。「少人数でいい。あったかく『分かち合い』をやろうね」という合意を、賛同者7名の人々ととってはいたものの、他の分科会の大掛かりな横断幕や著名な発言者名を聞いて、「『分かち合い』の場は絶対必要」という確信とともに、「もしかしたらこの賛同者7名と私で『わかちあい』、「『ここの分科会の意義がみんなわからないんだね』という愚痴を分かち合うのかな」という不安もあったものだ。
 「記録をとらない、話しっ放し・聴きっ放し、秘密は守る」という約束があったから、詳細には報告ができないが、その約束を踏まえて報告する。
 広場の中で所在なさそうにしているカップルや「入ろうかな、どうしようかなと迷っている」風情の人々に声をかけると、大抵参加して下さった。そして障害者、多重債務を抱えた人々、僧侶、自称ニートの人々、元サラリーマンの初老の人々、有機農業家、ホームレスの人々、ホームレス支援者など実に多様な立場の人々が参加して下さった。『私にとっての貧困』『私が求める支援』について語り合った。『私にとっての貧困』については、経済的な問題も極めて重要だが、『人間関係』『絆』『心の貧困』『心の余裕』『生きがいを感じることができる仕事・活動』が失われていると指摘する声が多かった。『私が求める支援』については、多くの人々が『私にできる支援』を模索していることが語られた。また「困った時に安心して相談できるところがない」という切実な意見も多かった。
 賛同者の人々からは「各地でこのような安全で安心な場所ができるといい」「自分を主語にして語ることの重要性を改めて実感した」「多種多様な人々が参加してくださり、嬉しい驚きとともに参考になる意見を聞くことができた」「みなさんがご自分にできる支援について考えておられて、尊敬の念を覚えた」という感想が寄せられた。
 担当者としては、賛同者7名の人々が実に気持ちよくお手伝いくださり、また参加して下さった人々が分科会終了後も立ち去りがたく話し込んでいる情景もあり、片付けも一緒にして下さった人々もあり、深く感謝しています。ありがとうございました。(加藤真規子)