「貧困ジャーナリズム大賞2009」 受賞者一覧

昨日3月28日に開催された「反貧困フェスタ2009」にて、貧困ジャーナリズム大賞2009が発表されました。

貧困ジャーナリズム大賞

朝日新聞 竹信三恵子記者

派遣労働など雇用問題を継続、かつ、多角的に報道した実績を高く評価。「官製ワーキングプア」で先鞭をつけたほか、「女性と貧困」も独自に取り上げ、テーマの先見性も抜群。

貧困ジャーナリズム調査報道賞

朝日新聞 永田豊隆記者ほか

生活保護申請拒否の全国的な実態を“情報公開”を使って調査報道(08年7月22日1面)。申請率が45%にとどまる実態を暴き「水際作戦」の広がりを報道。派遣切りと生活保護受給の関連データも報道し、行政が出そうとしない情報を調査報道する姿勢は立派。

朝日新聞 諸麦美紀記者

派遣労働の「2009年問題」を記事に。派遣先が派遣労働者の直接雇用申し込み義務を免れるため2年11ヶ月の派遣の後で短期間のクーリング期間だけ直接雇用し、再び派遣に戻すケースが横行する実態を暴いた。後日、厚労省がこれを認めない通達を出した。

テレビ朝日&ジンネット

サンデープロジェクト」(09年2月1日、8日)の「独走追跡スクープ証言!派遣法誕生の真実」において、労働者派遣法の制定時における関係者の“証言”を集めながら、大量の派遣切りという現状を招いた根っこの法律誕生にまつわる関係者の関わりや責任の所在を追及した。

貧困ジャーナリズム賞

産経新聞 大阪社会部 「明日へのセーフティーネット」班

最後のセーフティーネット生活保護について現状の問題を多角的に報道。一般に広く知られていない複雑な制度の運用や当事者、職員の関わりについて分かりやすく伝えた。連載記事を単行本にするなど、知られざる制度を世に知らしめるための努力を重ねた。

読売新聞 大津和夫 記者ほか社会保障

年金、介護、医療、労働など、社会保障問題に関して多角的な報道を継続して展開。様々なデータを駆使し、諸外国の実例も紹介したほか、財政問題も見据えた専門的な報道は他社の追随を許さなかった。

テレビ東京 「ガイアの夜明け」制作スタッフ

 「"使い捨て"雇用を問う 〜働くものに明日はあるか 」(08年9月9日)他
派遣労働など雇用問題に関するドキュメンタリー番組を連発したスタッフの熱意は画面を通じて伝わった。サブプライム問題と日本の地域で起きている解雇問題がつながっている、ということを文字通り目に見える形で報道した。

毎日放送  「映像‘08」制作スタッフ

「息子は、工場で死んだ 〜急増する非正規労働者の労災事故〜 」(放送08年12月)
偽装請負で働かされてきた男性の労災事故死。増え続ける非正規労働者の労災事故に焦点を当てた。制度や行政がきちんとしないなか、泣き寝入りする人々が増えている実態を視聴者に想像させる力作だった。 

札幌テレビ放送 「NNNドキュメント‘09」制作スタッフ

「がん患者、闘いの家計簿」(放送09年2月)
もし自分や家族ががんになったら。真っ先に考えるのはお金。まともな医療行為を受けることが出来るのだろうか? そんなことを考えさせる身につまされる番組だった。

月刊「文藝春秋」 飯窪成幸編集長

貧困問題をめぐる一連の特集
“月刊誌”の休刊が相次ぐなかでひとり健闘する総合月刊誌「文芸春秋」。エスタブリッシュメント層に絶大な影響力を持つ同誌が「貧困」に着目する特集を次々に出したことは社会的な事件ともいえる画期的な出来事だった。

週刊「ダイヤモンド」編集部 「あなたの知らない貧困」をはじめとする一連の特集

実際に困難を抱える当事者の立場でのドキュメントと適切なデータ・表などとの組み合わせで、今の貧困の問題を「理」と「情」で伝える良い企画を連発した。

貧困ジャーナリズム功労賞

週刊東洋経済」編集部

「雇用壊滅」「北欧」「自治体の貧困」(09年2月)「子ども格差」などの一連の特集 
大賞を受けた昨年に引き続き、雑誌ジャーナリズムのなかでは「貧困」に関するダントツの好企画を続々と連載。特に「子ども格差」は専門の研究者も舌を巻くほど深い取材に裏打ちされていた。

NHK「セフティーネットクライシス1、2」制作スタッフ

(放送08年5月11日、12月15日)
サーカスでブランコ芸をする時に万一の際のために張る、安全の網。それがセーフティーネット。そんな分かりやすい例えで、雇用保険、年金、健康保険、生活保護などを検証。すでにJCJ賞を受けているが、ここに改めて表彰したい。

貧困ジャーナリズム特別賞

朝日新聞 月曜連載の朝日歌壇「ホームレス歌人」 公田耕一さん

野宿している身の上を冷静に見つめる歌の数々。どれも切実さとペーソスに溢れて読む者の胸を打つ。おそらくは教養の高い、趣味人だった過去を持つ人なのだろう。ホームレスとは決して、生きる意欲をなくしたダメな人間ではない、ということを優れた作品をもって示した意義は大きい。


(以上、14の個人または団体)