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2017 - 09 - 22 (Fri)

物男 [book][comic] 物男 [book][comic]を含むブックマーク

物男 1

物男 1

なんじゃこれ。

久しぶりにいろんな意味で唖然とする作品をみた。

物語は現代日本だが、「物男」なる、物品の肩代わりをする賤業集団がいて、主人公はラブホテルのベッド役をやっている童貞男子。

……もうのその時点で設定がよくわからないのだけれども、そこから無理矢理に物語がはじまったりするのだけれども。

で、時事ネタなのか大塚家具を模した「大角家具」っていうのがでてきたりして、そこのデザイン家具の素材として、物男が採用されて、でも椅子の格好するのには、勃起や射精がネックになって……

という、改めて書くとくだらないとしかいいようがないのだが、物語って恐ろしいもので、そんな設定でも話がすすめば読み進んでしまうものなのだ。

物男 3

物男 3

デザインコンペで勝ったりしていた2巻まではともかく、急展開をむかえるのはついこの前出た3巻。

なんだかよくわからないうちに、SFっぽい展開になり、星間旅行をさせられてしまう主人公。そしてよくわからないうちに物語は終わる。

なんだこりゃ。

ほんと……なんだこりゃ。んー?

いい意味でクレイジーさと、オナニー感あふれる世界観の同居。

最後は、なんかものすごい大きい世界愛的な感じを匂わせて作品は終わる。

(でもまあこれって、射精後の『賢者タイム』的な感覚に、きわめて近いような気もする)

この作品って、童貞男子(男はみんな元童貞男子なので、男子は全員該当するわけだが)なら共感できるようなリビドーを前提としているわけですが、サブカル女子とかには、この作品は一体どのように受容されるんだろうか。

陰茎を持たない人にとっては、この作品はどう受け止められるんだろうか?

単純に「気持ち悪い」、なんだろうな。エヴァ映画版のラストみたいに。

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2017 - 08 - 27 (Sun)

[book]Facebookを使った節税術  [book]Facebookを使った節税術を含むブックマーク

経営者、もしくは個人事業主は、仕事の範囲が多岐に渡る。どこまで経費として認めるか、というのは、税理士事務所的にも解釈がまちまち。税理士事務所としても、OKと明言してしまって税務調査で税務署に怒られたくはない。やはり経費として認めるには「ストーリー」が必要。Facebookで個人ログをとっておくと、ストーリーの実証にしやすいですよ。と、そういう内容。

その他、海外への資産逃避とか、事業計画やキャピタルフライトの話とかが、裏話・座談会のように話されていて面白かった。

ちょっと小金をもっている人の中でよくある財テクとしてHSBC(香港上海銀行)に個人口座を作って、現金を持ち出して海外逃避資産を作る、なんてのがまことしやかにささやかれているけれども、これなんて国税庁の職員にしてみれば、マルバレらしい。なんとなれば、HSBCの入っているビルの二階には日本国税庁の出張所がある。馬鹿だよねー。みたいな話。

ではなぜ取り締まらないかというと、いちいちきりがないから。タイミングを取り計らっているらしいよ。

警察にインターポールがあるように、現在、世界各国の税務署同士は情報交換をしているので、資産はガラス張りなんだとか。

[]税金恐怖政治が資産家層を追い詰める(幻冬舎) 副島隆文 税金恐怖政治が資産家層を追い詰める(幻冬舎) 副島隆文を含むブックマーク

税金恐怖政治が資産家層を追い詰める

税金恐怖政治が資産家層を追い詰める

面白いことに、これは同じ現象を全く逆の視点からみている本である。ここでは、税務を「タックス・テロリズム」と断じ、「富裕層への課税強化宣言」を行い、資産家の資産はガラス張りだ、と嘆く。

「公務員は利益を産まない 「利益を産んではいけない」と教育される、公僕という建前をとって、税務署員のやっていることは、収奪そのものではないか。相続税の規制強化も進んでいるし、この国、といわずすべての税務職員は、働いて正当に得た対価を、収奪するひどいやつらだ、と。

まあ、確かに高額所得者の税金は高いから、その言い分はわからんでもないが、しかし30年前にくらべると、所得税は結構さがっているからいいじゃないかと思ったりはするのだ。

挙句の果てにはこの先生、現金でタンス預金していて、泥棒にとられてしまったのだとか。

その恥エピソードを発表するのはある種の立派さではあるが、国家に収奪されるか、治安紊乱者に収奪されるかだったら、国家に収奪されたらいいじゃないか、と思ったりもする。

この本では「10億以上の富裕層は、とっくに資産を海外に逃がしているが、5億以下の小金持ちは逃げ場がない」ということについて警鐘を鳴らしている。

一方、「Facebook節税術」では、そういう海外に離脱した人たちが、しみじみと「もうでも俺たちは日本には戻れないんだよねえ…」という嘆息を紹介してた。国税庁ににらまれている富裕資産者は、もう国内に定住することはできないのだとか。「やっぱり私は税金を納めるなら日本に納めたいし、死ぬなら日本で死にたいよなあ」ということを書いていた。私もそう思う。

もちろん、納めた税金は有意義には使ってほしいと思う。それとこれとは全く別の話だ。

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2017 - 06 - 07 (Wed) 「ロボニートみつお」は現代の「ライ麦畑」か。

[comic]小田原ドラゴン『ロボニートみつお』  [comic]小田原ドラゴン『ロボニートみつお』を含むブックマーク

あまり賛意が得られないのでありますが、小田原ドラゴンの一連の作品群がとても好きなんです。

どちらかというと下から目線。労働者階層、ですらないニート的な視点からみえる、おかしくも悲しい現代社会。

山野一『四丁目の夕日』に近い毒をもった世界なのに、変にファンシーな絵柄。

そんな小田原ドラゴンの作品を楽しみにヤンマガ、ことヤングマガジンを見ています。

しかし『チェリーナイツ』は大好きで、特に「バンギャ編」に涙した私ですが、世間的な評価はあまり、というか全然高くありません。

チェリーナイツ続編である『ワイルドチェリーナイツ』、これは、江藤が宇宙戦士となり戦ったり作者のマンション購入の経験を踏まえたエピソードが語られたりしつつ本当に正しい餃子のタレを探しに宇宙の果てまで探しに行くという「間違ったセカイ系」の話でありました。しかし 2017年5月現在、Kindle化もされていません。さらにその続編、『チェリーナイツR』「田中ワレ」こと風俗大好きの田中が、金玉を覆う男性用ブラジャー会社「タマブラジャー」の社長になっている話なんですが、Rに至っては単行本化さえされていない始末。

商業的には苦戦を強いられています。

まとめて読むには向いていないんですかね。

f:id:hanjukudoctor:20170607221518p:image

こんな感じで身も蓋もないのが持ち味です。


そんな小田原先生の新作「ロボニートみつお」はこの度完結し、めでたくKindleでも出版されました。良かった。

町外れの研究所で博士が作り出したロボが深夜目覚め…

という冒頭で始まるのだが、このロボは働きたくないロボ、ニートロボなのである。

揺籃期、博士との怠惰なニート生活を経て、博士は死んでしまい、みつおは、街を彷徨うことになる。

いろいろな濃い人々と出会う。いってみれば地獄めぐりに近いその道行きは、キャラの濃さと脱力も含めて、現代版『ライ麦畑』のテイストがある。

主人公はホールデン・コーンフィールド同様に、ただただ流される。しかし明るく屈託がない。

ロボニートみつおには、前出の「チェリーナイツ」の江藤と田中もちょっと客演してくれる。

読後感はあくまで虚しく、そしてなんともいえない悲しさが残る。そういうところも少し「ライ麦畑」です。

私はニート的な生活とは無縁で、社会的にはむしろ真逆と言ってもいいのであるが、作中のニートに共感することハンパないのはなぜでしょう。

個人的には

ネットを見ること風のごとく

親の説教を聞き流すこと林の如し

フィギュアを買うこと火の如く

働かざること山の如し

の、ニート風林火山の皆様が好きだったですね。

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)

* * *

ちなみに前述した暗黒下町物語『四丁目の夕日』はトラウマ級の後味の悪さです。

疲れたり、死んじゃいたいような気分の時は僕はこれを読みます。まだましだって思うから。

四丁目の夕日 (扶桑社コミックス)

四丁目の夕日 (扶桑社コミックス)

でも山野一は妻ねこぢると共作し、ねこぢる自死のあと再婚、今は双子の娘を描いたほのぼの育児マンガを発表してらっしゃる(絵柄はねこぢる)。人生何があるのかわからないものですよ。

そせじ(1)

そせじ(1)

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2017 - 04 - 24 (Mon)

大本営発表』辻田真佐憲 『大本営発表』辻田真佐憲を含むブックマーク

そういや、かつて「ものぐさ精神分析」で名をなした岸田秀先生が、自分の精神分析の原点は、太平洋戦争の戦史を読み解きながら、涙し、怒り、どうしてこんな愚行をおかしたのだろうと疑問を感じたことだ、と語っていた。

「個体発生は系統発生を繰り返す」と少し似ているのだが、岸田学説のおもしろさは『国家と個人の行動様式は同じ手法でアナライズ(精神分析)できる』と仮定し、それを実際にアナライズしちゃって彼の一連の作品群ができた。あんまりにも知的啓発力が強かった(おもしろかった)ために、その手法の正当性はさておき、時代の寵児となり、うやむやになってしまったが、そう氏に行動せしめた原点が、昭和軍部であり大本営発表にある。また司馬遼太郎も、繰り返し、昭和軍部の奇胎性をあげつらう。

その昭和軍部の無茶苦茶ぶりの代表とされる、「大本営発表」についての考察が本書だ。

まあ大方は、現代の視点で振り返れば、検証するまでもなく、無茶苦茶なのであるが、ただ、成立の歴史的な経緯などをみると、意外と知らないことも多かった。

例えば、大本営発表がエスカレートした原因には海軍と陸軍の競り合いがあったこと。東条英機がまあまあ話せる陸軍の報道部長を、政敵の応援演説に行ったって理由で更迭。新任の部長はあがり症のめちゃくちゃ口下手な男だったため、『海軍の発表はいいのに陸軍はね…』みたいになっちゃって、原稿を作るスタッフが、美辞麗句を入れて、原稿の段階で艶を出そうと涙ぐましい努力をしたらしい。それが、その後の事実よりは形容詞などの重視につながったとか。陸軍の不適正人事を弥縫しようとしたところに蹉跌があったというわけ。

 それから、大本営発表は、開戦当初は比較的正確な発表をしていたんだって。それを、当初は新聞社の方が、まだ占領していない都市を占領したように フライング報道をしていた。それを国民の士気を下げないため黙認、とかしていたらしい。ようするに正確な情報を上げない風潮のきっかけを作ったのは報道側だそうで。

 それがミッドウェー海戦の惨敗以来、逆に振れ、負けをごまかすために積極的に嘘をつくようになる。美辞麗句と、被害の過小評価・戦果の過大評価で、現実との解離がおこるさまは、本当におそろしく、情けない歴史である。

 天皇陛下もそのへんはわかっていて「そういえばサラトガが沈むのは4度目じゃないか」と侍従に漏らしたとか。

 ちなみに「玉砕」という表現は1944年の半ば、一瞬使われただけで、意外に定番化しなかったそうだ(批判が多かったらしい)。

 私も、岸田秀なみに、腹の底から怒りが湧いてきたから、みんなも読んでみたらいいんじゃないかな。

 新書にありがちな感じで、最後は「まあねえこういう昔の話だとみんな思っていますけど、今の政府と報道のあり方とかも、みなさんも考えてみたらいいんじゃないでしょうか?」みたいな問題提起で終わってます。まあ、そうですけど、ちょっとあざとい。

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2017 - 03 - 05 (Sun)

『刻刻』堀尾省太 『刻刻』堀尾省太を含むブックマーク

刻刻 コミック 1-8巻セット (モ-ニングKC)

刻刻 コミック 1-8巻セット (モ-ニングKC)

Facebookとかやっていると、「漫画が無料で読める!」みたいなアプリの宣伝がよくありますね。そこで割とおもしろげな漫画が取り上げられてて、だからまあKindleで読んでしまう。そうすると、なんか、一見目を惹くどぎつい漫画ばかりが増えてゆくわけです。割とわかりやすい展開ですよね。

そういう漫画ばかり読んでいると、購入傾向からの「Amazonのオススメ」というリストも、そんなどぎつい漫画ばっかりになるのな。悪循環です。

『村祀り』『死囚獄』『ギフト』『生贄投票』『監禁嬢』『奈落の羊』『死役所』『蝶獣戯譚』…悪貨は良貨を駆逐する…とまでいうと言い過ぎであるが、共通点は屋台のジャンクフードのように、読み手をぱっと惹きつけはするけど、それ以降の展開力にいささか難があり、今ひとつ深みにかけること。

 そういう読み味の連続にやや辟易としていました。

 なんかね、読めば読むほど頭が悪くなっていく感じがあるんです。

 あ、『死役所』は面白かったですよ。

しかし『ゴールデンゴールド』堀尾省太はかなり面白いなあと思いました。なにより舞台となっている向島〜備後地区が地元なので、そういう意味でもぐっと来た。やっぱり地元びいき的なものってありますわな。

 冒頭のシーンのアニメイト、福山駅前の元トポスのビルのアニメイトや!僕がよくいくカラオケの建物や!とか、そういうのもちょっと嬉しかったんですけれども。

で、堀尾省太の出世作…*1

『寄生獣』の岩明均、『アイアムアヒーロー』の花沢健吾絶賛!

という釣り文句に惹かれて *2、『刻刻』を読んでみたんですが、面白かった。

うーん、なんというか、先程の作品群と比べ「読めば読むほど頭がよくなっていく」感じはしました。

 時間を止め、その中で活動できる能力をもつ一族と、別の集団と、その戦いと言うかなんというか。

 そういう設定だと、何度も時間をとめたり戻したり、みたいに、プロットの中で能力を使うのかなあと思っていたら、そうではなくて。

 そういう設定の中でダレもせずストーリーがぐいぐい動いて、一気に読ませられてしまいました。ものすごく完成度が高く、きっちりしています。「ライオン仮面」的な要素 *3全くなし。 

 連載時にはアンテナにひっかかっていなかったのが悔やまれます。まあ、モーニング・ツーだもんなあ。

 最初の印象では、第一巻の序盤のところだけ、やや展開が早くて不親切かな?と思いましたが、そのあと十分没入できたので、別にいいんだと思った。「?」を残しながらストーリをすすめるのもテクニックですよね。

*1:というか、そんなに出世してないのでなんですけれども、

*2:アイアムアヒーローの終わり方で若干「…」となってしまったので、この釣り文句は今現在相対的にやや価値が減弱しているようには思うが

*3:どらえもんの漫画中漫画で、フニャコフニャ夫先生は締め切りに追われるあまりストーリーなんか無視してでたとこ勝負で毎週切り抜けている、という設定

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2017 - 01 - 22 (Sun) カレー沢薫という人 このエントリーを含むブックマーク

最近、僕のKindleの中に、カレー沢薫さんの作品が微妙に増えてきた。

 きっかけは、なんかのキュレーションサイトで。(Cakesだったっけ?)「ブスの本懐」という、これまたキャッチーなタイトルの本が取り上げられていたこと。

 コラムの、淡々とした中に、妙にだったのだが、妙に印象的だったのを覚えていた。

「ブスの本懐」はその頃Kindle化されていなかったので、まず、負ける技術と、クレムリンを買って、読んだ。

「負ける技術」

負ける技術 (講談社文庫)

負ける技術 (講談社文庫)

は、カレー沢氏の日々の生活コラムではある。このコラムでも、通底にあるのは自分のブスぶりに対する冷静さと語彙の豊富さである。

なんてったって、著者の自画像は「陰毛」なのだから。その自己評価というか「こじらせ」というかは、かなりのところまで到達していると言える。

負ける技術は結構量もあって、割とお得な本であります。

一方氏の本業「クレムリン」は確かにモーニングで見たことがあったが、読まずに飛ばしていた漫画であった。

リズムやツッコミなどは一定のクオリティがあるし、ストーリーがつながる4コマとしては飽きさせないが、ローテンションのままダラダラと続く漫画である。いかにも平成の漫画という感じだ。

結構面白かったんだが、二巻まで一気に読んでしまおう、というふうにはならず、そのままにしている。多分、猫は好きだが、猫アレルギーなのであまり感情移入が出来ないからかもしれない。

やりへん

というわけで、カレー沢薫さんは、語彙力はあるが、画力はほぼゼロの、コラムのような4コマのようなフィールドの人で、あくまでこれは漫画家ではないわ、とも思ったのだが、この漫画を読んで全然印象がかわった。コマ割も普通の漫画ですし、絵も、そりゃめちゃうまいとは言わないが(特に柔らかいもの(女体とか)の動きとか、そういうものだと、お世辞にもうまいとは言えない。でも『カイジ』の人よりは上手いと思う)、漫画としては全く成立するレベルで、ちゃんとしている。ストーリーやキャラクターは破天荒で、リアリティはないが、まあ面白い。

コラムと、クレムリンで、推量していた作者の力量を大幅に上回った。仕事のできる同僚が、カラオケに一緒にいったらやたらうまかった、みたいな感じだ。

アンモラル・カスタマイズZ

アンモラル・カスタマイズZ

アンモラル・カスタマイズZ

なるほど。多分、作者としては成長途上で、「クレムリン」から「やりへん」の間をつなぐ存在なんだろう。

絵はやっぱり下手で、視線がところどころ変だったり、デッサンはすごく狂っていたりするけど、ストーリーはなかなか共感をさそうものだし(ビルドゥングスロマンになっているのがよかったのだと思う)やはり極端な設定の中で、キャラは動いている。

「ブスの本懐」

ブスの本懐

ブスの本懐

かなり面白い本であるが、「負ける技術」と基本的な部分は変わらない。ただそれはマンネリというよりは、むしろ安定の面白さ、と形容してもいいと思われる。

読んで面白いのだが、作者も書いているように、結論めいたものもないし、後に何も残らない。

でも、破壊力のあるツッコミフレーズにハイライトをつけていくと、20−30個くらいになったので、多分後に残ると思う。

カレー沢薫、面白いですよ。コラムにおける毒をもったフレーズの貫通力はナンシー関のようであるし、メジャー誌の中でぞんざいに扱われる画力軽視のギャグマンガという意味では「チェリーナイツ」の小田原ドラゴン先生のようでもある。みなさんも是非一度ふれてみてください。

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2016 - 12 - 09 (Fri)

[]『住友銀行秘史』国重淳史 『住友銀行秘史』国重淳史を含むブックマーク

住友銀行秘史

住友銀行秘史

Kindle版はこちら(私はコチラで購入)。

住友銀行秘史

住友銀行秘史

なんかのブックキュレーションサイトで紹介されていたので買った。

イトマン事件のあたりのモヤモヤ、ドロドロした話を、銀行内の優秀な中級職の手によって記録された随想録。

うーん「リアル半沢直樹シリーズ」みたいに思われる。事実は小説よりも奇なり。いや、生々しさと前時代さは、「不毛地帯」かもしれない。私は『金融腐食列島』を読んでいないが、あれもその手の生臭い話なんだろうと思うが、とにかく、むちゃくちゃ面白い。

頭のいい人の叙述というのは、メモの断片だけだけでも、やはりそうとしれる。

すぐれた棋譜を見た際の知的興奮というか。『ガリア戦記』のような面白さだと思う。


著者の国重さんは、実力では皆に一目置かれるバンカーで、同期の中では最も早く役員になるなど行員出世レースではトップを走っていたが、結局頭取にはならず銀行人生を終えた。

その後紆余曲折のあと楽天の副会長になるも女性問題で職務を全うせず不本意な辞め方をすることになる。巷の噂では、女性関係には色々問題があった、ということだった。バンカーとして大成しなかったのも、そういう部分もあったのかもしれない。

だが、そういう自分に関するところは、当時の記録からも巧みにクレンジングされている。

つまりこの作品は「信用できない語り手」による叙述トリックの部分がある。


いまこの歳になって、若い頃の記録を振り返って述懐するに…ということは、ある種、自分の人生の総括をする、ということだ。

しかしこの本からは、その時の、そしてその後の自分の人生に対する反省とか、そういう自省は微塵も見られない。正直にいって自省をしたような葛藤さえもないように思われる。

そもそも、この国重さん、彼が行動し、退陣に追い込んだ「住友銀行の天皇」とも称された樋口頭取の秘書と結婚しているんである。当然ながら、情報の出所として、彼女の存在も多分にあっただろうが、この本にはその事実は一切書かれてはいない。

だから、この本は、晩年期に全てのことを正直に書いて自分の仕事人生を後世の批評に耐えうるべく記録するという「人生の総括本」ではなく「まだまだやったるでー。そや、昔の俺の武勇伝を聴かせてやろう」という趣きの本で、その息の生臭さには、いささか鼻じらむところがある。

こうした「元気中高年」といった生臭オヤジは、まあまあ巷にいる。こうした人々が日本経済を引っ張って行き、今後も引っ張っていくであろうことは確かであるが、あまり接したくないタイプではあるなと思った。

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2016 - 07 - 16 (Sat)

[book]参勤交代シリーズ [book]参勤交代シリーズを含むブックマーク

んー気が付くと一ヶ月くらいすぐ経っちゃいますね。InputはともかくOutputを増やそうと思いつつ、ダメね。

ちょっと前からアマゾンプライム(プライム自体はだいぶ前から使っていたんですけど、プライムビデオを利用するという頭がなかった)を観ていますが、こりゃ便利といえば便利っすね。

問題は少ない可処分時間をさらに食うこと。

なんかでオススメされていたので、観てみたわけです。

超高速!参勤交代

超高速!参勤交代

おもしろいじゃん。

ちょっとストーリーとプロッティングに無理があるような気もしたけど、テンポよくハラハラが連続し、飽きさせない佳作と思います。

湯長谷藩と同じく、映画製作チームもそんなに予算が潤沢ではないこともうかがえるのですが、それも含めて、よかったです。お殿様を中心とした、ホモソーシャルな集団のありようは、ちょっと昭和っぽい古さがあるものの、実に楽しそうでよかった。

貧乏だけど、武芸の達人、とかいいよね。

深田恭子もかわいいなあ。

超高速! 参勤交代 (講談社文庫)

超高速! 参勤交代 (講談社文庫)

ノベライズも読んでみたが、割とわかりやすくお金がかかるシーンは映画ではカットされていたように思う。あと、藩主の妹が、藩主になりすますくだりがあるのだが、その部分もカット。これは、映画化された場合に、もうちょっと若いイケメンタレントの場合は実現したのかもしれない。いや、おそらくプロットをシンプルにするためでしょう。

最近、続編のリターンズが出たので読んでみたが、あー、これはちょっとあー。

エイリアンが面白かったのでエイリアン2をみた時と同じ、感想。

荒唐無稽さとリアリティのバランスが、前作ではギリギリのバランス(若干アウト気味)だったのが、今回はさすがに完全にアウトで、そのためにストーリーを受け入れられませんでした。

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2016 - 06 - 10 (Fri)

[book]『羊と鋼の森』宮下奈都 [book]『羊と鋼の森』宮下奈都を含むブックマーク

羊と鋼の森

羊と鋼の森

Kindle版はこちら

羊と鋼の森 (文春e-book)

羊と鋼の森 (文春e-book)

紹介には『祝福に満ちた長編小説』とあった。

確かに、そうだった。

音楽にかけらも興味をもったことがない田舎の少年が、とある偶然か運命か、調律師を目指すようになる。ひとことで言うと、調律師のビルドゥングスロマン。

私もピアノというものに長年縁がなかったんだが、つい最近自宅にピアノが来たので、下手なりにピアノを弾くようになった。それまでは長年ジャズトロンボーンを吹いていた(今もである)。

トロンボーンというのは、まっすぐ正しい音を出す、というのがとにかく難しい。音程感覚がないと、正しい音は絶対に出ないのである。ドレミファソラシド、をまともに出せるようになるのに、年単位かかるのだ。

ピアノというのはそれと真逆の楽器で、鍵盤を押すと正しい音は出る。ドレミファソラシドを出すことは、簡単だ。

 だからこそ、ピアノでは、その先、つまり何をどのように音を配列するか、それが難しい、と理解していた。

トロンボーンが単音楽器であるのに対し、ピアノでは同時に複数の音を出すことが要求される。

 ただ数年前から持っていた電子ピアノから、生楽器のピアノに進出してみると、自分のそうした理解が全く浅薄であることに気付いた。指の沈め方で音色は全く千差万別であるし、その日の気温・湿度によっても、ピアノのフィーリングは全くかわってくる。もちろん、楽器ごとの個体差というのもすごくある。そんなことは触ってみるまで気づかなかった。

 だから調律という作業は、狂っているものを直す、という単純なものではなく、とんでもなくクリエイティブなものなんだろう…ということも想像がつく。理想を言えば、到達点は無限のかなたにある。

 

 この小説は、本来あまり主役にならない調律師の仕事のありようを、とても誠実に好意的に描いています。だから音楽にもピアノにも、もちろん調律にも興味がない人間にも、魅力を伝えることに成功していて、さすが本屋大賞と思いました。

 ただ、美化しすぎかなあとは思いました。地方都市のなんでも調律する楽器店にそこまでの俊才があつまるかしら。地方都市の駅前ヤンキーの言う「世界征服」のような「閉じた世界」感が…

 いや、でも。

 私の妻は子供の頃からピアノを弾いているのだが(プロじゃないですよ)、たまたま自宅のピアノを調律しに来ていた方が、その後スタインウェイの認定調律師になってらっしゃって(すごい調律師ということなんですよ)県をまたいで、今うちのピアノの調律をしにわざわざ来てくれている。

僕のまわりにだって、そういうドラマはあるわけだから、この小説が、何も荒唐無稽というわけでもないかも。

 ピアノという楽器は、ほかの楽器より、ちょっと熱量の桁が違う感じが確かにあります。ピアニストのいう「ピアノが好きです」という言葉は、結構な魂の底の底の方から発せられているし、ほかの楽器に比べて、人生狂わせられちゃう度合いも多いような気がする。

 トロンボーンの場合は、自分の声を音にしている感じなので主体性はこっちにある。でも、ピアノって、自分の意志もあるけど、ピアノの中に何かが棲んでいて、それが音の半分を担っている感じがするのよね。

私、大人になって人生決まってからピアノ触ってますから、まだ多少の距離を置けますけど、確かにこの楽器、魅入られるやばさがあるんですよ。

 

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2016 - 05 - 06 (Fri)

[book]世界最悪の旅 [book]世界最悪の旅を含むブックマーク

えーと、ちょっと前、岡山に行く用事があって、シンフォニーホールの下にある古本市でなんとなく購入。

なんとなくね。なんとなく。

CDだと「ジャケ買い」という言葉があるが、この本はずばりタイトル買い。

内容は、南極探検にいった「スコット探検隊」の話。

ノルウェーのアムンゼン隊と、イギリスのスコット隊が南極点を目指していたのだが、スコットは結構前から準備していて南極点到達を前もって目標にしていたのに対して、アムンゼンはわりと不意打ち的に南極探検に向かったらしいっす。

 結果的にはアムンゼン隊が一番のり。犠牲者ゼロ。

 スコット隊は南極点到達はしたものの、一番のりは逃すわ、帰りに全員死んでしまうという、いいところなし。

 おまけに、スコットちょういいやつだったらしくて。アムンゼンはトップダウン型のアクの強い性格。

 なんかかわいそうだなー。

しかしこのアムンゼン隊とスコット隊の対比、何かに似ているなと思ったんですけれども、「八甲田山」の青森隊と弘前隊との対比と共通点が多いように思う。

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