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2017 - 03 - 05 (Sun)

『刻刻』堀尾省太 『刻刻』堀尾省太を含むブックマーク

刻刻 コミック 1-8巻セット (モ-ニングKC)

刻刻 コミック 1-8巻セット (モ-ニングKC)

Facebookとかやっていると、「漫画が無料で読める!」みたいなアプリの宣伝がよくありますね。そこで割とおもしろげな漫画が取り上げられてて、だからまあKindleで読んでしまう。そうすると、なんか、一見目を惹くどぎつい漫画ばかりが増えてゆくわけです。割とわかりやすい展開ですよね。

そういう漫画ばかり読んでいると、購入傾向からの「Amazonのオススメ」というリストも、そんなどぎつい漫画ばっかりになるのな。悪循環です。

『村祀り』『死囚獄』『ギフト』『生贄投票』『監禁嬢』『奈落の羊』『死役所』『蝶獣戯譚』…悪貨は良貨を駆逐する…とまでいうと言い過ぎであるが、共通点は屋台のジャンクフードのように、読み手をぱっと惹きつけはするけど、それ以降の展開力にいささか難があり、今ひとつ深みにかけること。

 そういう読み味の連続にやや辟易としていました。

 なんかね、読めば読むほど頭が悪くなっていく感じがあるんです。

 あ、『死役所』は面白かったですよ。

しかし『ゴールデンゴールド』堀尾省太はかなり面白いなあと思いました。なにより舞台となっている向島〜備後地区が地元なので、そういう意味でもぐっと来た。やっぱり地元びいき的なものってありますわな。

 冒頭のシーンのアニメイト、福山駅前の元トポスのビルのアニメイトや!僕がよくいくカラオケの建物や!とか、そういうのもちょっと嬉しかったんですけれども。

で、堀尾省太の出世作…*1

『寄生獣』の岩明均、『アイアムアヒーロー』の花沢健吾絶賛!

という釣り文句に惹かれて *2、『刻刻』を読んでみたんですが、面白かった。

うーん、なんというか、先程の作品群と比べ「読めば読むほど頭がよくなっていく」感じはしました。

 時間を止め、その中で活動できる能力をもつ一族と、別の集団と、その戦いと言うかなんというか。

 そういう設定だと、何度も時間をとめたり戻したり、みたいに、プロットの中で能力を使うのかなあと思っていたら、そうではなくて。

 そういう設定の中でダレもせずストーリーがぐいぐい動いて、一気に読ませられてしまいました。ものすごく完成度が高く、きっちりしています。「ライオン仮面」的な要素 *3全くなし。 

 連載時にはアンテナにひっかかっていなかったのが悔やまれます。まあ、モーニング・ツーだもんなあ。

 最初の印象では、第一巻の序盤のところだけ、やや展開が早くて不親切かな?と思いましたが、そのあと十分没入できたので、別にいいんだと思った。「?」を残しながらストーリをすすめるのもテクニックですよね。

*1:というか、そんなに出世してないのでなんですけれども、

*2:アイアムアヒーローの終わり方で若干「…」となってしまったので、この釣り文句は今現在相対的にやや価値が減弱しているようには思うが

*3:どらえもんの漫画中漫画で、フニャコフニャ夫先生は締め切りに追われるあまりストーリーなんか無視してでたとこ勝負で毎週切り抜けている、という設定

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2017 - 01 - 22 (Sun) カレー沢薫という人 このエントリーを含むブックマーク

最近、僕のKindleの中に、カレー沢薫さんの作品が微妙に増えてきた。

 きっかけは、なんかのキュレーションサイトで。(Cakesだったっけ?)「ブスの本懐」という、これまたキャッチーなタイトルの本が取り上げられていたこと。

 コラムの、淡々とした中に、妙にだったのだが、妙に印象的だったのを覚えていた。

「ブスの本懐」はその頃Kindle化されていなかったので、まず、負ける技術と、クレムリンを買って、読んだ。

「負ける技術」

負ける技術 (講談社文庫)

負ける技術 (講談社文庫)

は、カレー沢氏の日々の生活コラムではある。このコラムでも、通底にあるのは自分のブスぶりに対する冷静さと語彙の豊富さである。

なんてったって、著者の自画像は「陰毛」なのだから。その自己評価というか「こじらせ」というかは、かなりのところまで到達していると言える。

負ける技術は結構量もあって、割とお得な本であります。

一方氏の本業「クレムリン」は確かにモーニングで見たことがあったが、読まずに飛ばしていた漫画であった。

リズムやツッコミなどは一定のクオリティがあるし、ストーリーがつながる4コマとしては飽きさせないが、ローテンションのままダラダラと続く漫画である。いかにも平成の漫画という感じだ。

結構面白かったんだが、二巻まで一気に読んでしまおう、というふうにはならず、そのままにしている。多分、猫は好きだが、猫アレルギーなのであまり感情移入が出来ないからかもしれない。

やりへん

というわけで、カレー沢薫さんは、語彙力はあるが、画力はほぼゼロの、コラムのような4コマのようなフィールドの人で、あくまでこれは漫画家ではないわ、とも思ったのだが、この漫画を読んで全然印象がかわった。コマ割も普通の漫画ですし、絵も、そりゃめちゃうまいとは言わないが(特に柔らかいもの(女体とか)の動きとか、そういうものだと、お世辞にもうまいとは言えない。でも『カイジ』の人よりは上手いと思う)、漫画としては全く成立するレベルで、ちゃんとしている。ストーリーやキャラクターは破天荒で、リアリティはないが、まあ面白い。

コラムと、クレムリンで、推量していた作者の力量を大幅に上回った。仕事のできる同僚が、カラオケに一緒にいったらやたらうまかった、みたいな感じだ。

アンモラル・カスタマイズZ

アンモラル・カスタマイズZ

アンモラル・カスタマイズZ

なるほど。多分、作者としては成長途上で、「クレムリン」から「やりへん」の間をつなぐ存在なんだろう。

絵はやっぱり下手で、視線がところどころ変だったり、デッサンはすごく狂っていたりするけど、ストーリーはなかなか共感をさそうものだし(ビルドゥングスロマンになっているのがよかったのだと思う)やはり極端な設定の中で、キャラは動いている。

「ブスの本懐」

ブスの本懐

ブスの本懐

かなり面白い本であるが、「負ける技術」と基本的な部分は変わらない。ただそれはマンネリというよりは、むしろ安定の面白さ、と形容してもいいと思われる。

読んで面白いのだが、作者も書いているように、結論めいたものもないし、後に何も残らない。

でも、破壊力のあるツッコミフレーズにハイライトをつけていくと、20−30個くらいになったので、多分後に残ると思う。

カレー沢薫、面白いですよ。コラムにおける毒をもったフレーズの貫通力はナンシー関のようであるし、メジャー誌の中でぞんざいに扱われる画力軽視のギャグマンガという意味では「チェリーナイツ」の小田原ドラゴン先生のようでもある。みなさんも是非一度ふれてみてください。

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2016 - 12 - 09 (Fri)

[]『住友銀行秘史』国重淳史 『住友銀行秘史』国重淳史を含むブックマーク

住友銀行秘史

住友銀行秘史

Kindle版はこちら(私はコチラで購入)。

住友銀行秘史

住友銀行秘史

なんかのブックキュレーションサイトで紹介されていたので買った。

イトマン事件のあたりのモヤモヤ、ドロドロした話を、銀行内の優秀な中級職の手によって記録された随想録。

うーん「リアル半沢直樹シリーズ」みたいに思われる。事実は小説よりも奇なり。いや、生々しさと前時代さは、「不毛地帯」かもしれない。私は『金融腐食列島』を読んでいないが、あれもその手の生臭い話なんだろうと思うが、とにかく、むちゃくちゃ面白い。

頭のいい人の叙述というのは、メモの断片だけだけでも、やはりそうとしれる。

すぐれた棋譜を見た際の知的興奮というか。『ガリア戦記』のような面白さだと思う。


著者の国重さんは、実力では皆に一目置かれるバンカーで、同期の中では最も早く役員になるなど行員出世レースではトップを走っていたが、結局頭取にはならず銀行人生を終えた。

その後紆余曲折のあと楽天の副会長になるも女性問題で職務を全うせず不本意な辞め方をすることになる。巷の噂では、女性関係には色々問題があった、ということだった。バンカーとして大成しなかったのも、そういう部分もあったのかもしれない。

だが、そういう自分に関するところは、当時の記録からも巧みにクレンジングされている。

つまりこの作品は「信用できない語り手」による叙述トリックの部分がある。


いまこの歳になって、若い頃の記録を振り返って述懐するに…ということは、ある種、自分の人生の総括をする、ということだ。

しかしこの本からは、その時の、そしてその後の自分の人生に対する反省とか、そういう自省は微塵も見られない。正直にいって自省をしたような葛藤さえもないように思われる。

そもそも、この国重さん、彼が行動し、退陣に追い込んだ「住友銀行の天皇」とも称された樋口頭取の秘書と結婚しているんである。当然ながら、情報の出所として、彼女の存在も多分にあっただろうが、この本にはその事実は一切書かれてはいない。

だから、この本は、晩年期に全てのことを正直に書いて自分の仕事人生を後世の批評に耐えうるべく記録するという「人生の総括本」ではなく「まだまだやったるでー。そや、昔の俺の武勇伝を聴かせてやろう」という趣きの本で、その息の生臭さには、いささか鼻じらむところがある。

こうした「元気中高年」といった生臭オヤジは、まあまあ巷にいる。こうした人々が日本経済を引っ張って行き、今後も引っ張っていくであろうことは確かであるが、あまり接したくないタイプではあるなと思った。

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2016 - 07 - 16 (Sat)

[book]参勤交代シリーズ [book]参勤交代シリーズを含むブックマーク

んー気が付くと一ヶ月くらいすぐ経っちゃいますね。InputはともかくOutputを増やそうと思いつつ、ダメね。

ちょっと前からアマゾンプライム(プライム自体はだいぶ前から使っていたんですけど、プライムビデオを利用するという頭がなかった)を観ていますが、こりゃ便利といえば便利っすね。

問題は少ない可処分時間をさらに食うこと。

なんかでオススメされていたので、観てみたわけです。

超高速!参勤交代

超高速!参勤交代

おもしろいじゃん。

ちょっとストーリーとプロッティングに無理があるような気もしたけど、テンポよくハラハラが連続し、飽きさせない佳作と思います。

湯長谷藩と同じく、映画製作チームもそんなに予算が潤沢ではないこともうかがえるのですが、それも含めて、よかったです。お殿様を中心とした、ホモソーシャルな集団のありようは、ちょっと昭和っぽい古さがあるものの、実に楽しそうでよかった。

貧乏だけど、武芸の達人、とかいいよね。

深田恭子もかわいいなあ。

超高速! 参勤交代 (講談社文庫)

超高速! 参勤交代 (講談社文庫)

ノベライズも読んでみたが、割とわかりやすくお金がかかるシーンは映画ではカットされていたように思う。あと、藩主の妹が、藩主になりすますくだりがあるのだが、その部分もカット。これは、映画化された場合に、もうちょっと若いイケメンタレントの場合は実現したのかもしれない。いや、おそらくプロットをシンプルにするためでしょう。

最近、続編のリターンズが出たので読んでみたが、あー、これはちょっとあー。

エイリアンが面白かったのでエイリアン2をみた時と同じ、感想。

荒唐無稽さとリアリティのバランスが、前作ではギリギリのバランス(若干アウト気味)だったのが、今回はさすがに完全にアウトで、そのためにストーリーを受け入れられませんでした。

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2016 - 06 - 10 (Fri)

[book]『羊と鋼の森』宮下奈都 [book]『羊と鋼の森』宮下奈都を含むブックマーク

羊と鋼の森

羊と鋼の森

Kindle版はこちら

羊と鋼の森 (文春e-book)

羊と鋼の森 (文春e-book)

紹介には『祝福に満ちた長編小説』とあった。

確かに、そうだった。

音楽にかけらも興味をもったことがない田舎の少年が、とある偶然か運命か、調律師を目指すようになる。ひとことで言うと、調律師のビルドゥングスロマン。

私もピアノというものに長年縁がなかったんだが、つい最近自宅にピアノが来たので、下手なりにピアノを弾くようになった。それまでは長年ジャズトロンボーンを吹いていた(今もである)。

トロンボーンというのは、まっすぐ正しい音を出す、というのがとにかく難しい。音程感覚がないと、正しい音は絶対に出ないのである。ドレミファソラシド、をまともに出せるようになるのに、年単位かかるのだ。

ピアノというのはそれと真逆の楽器で、鍵盤を押すと正しい音は出る。ドレミファソラシドを出すことは、簡単だ。

 だからこそ、ピアノでは、その先、つまり何をどのように音を配列するか、それが難しい、と理解していた。

トロンボーンが単音楽器であるのに対し、ピアノでは同時に複数の音を出すことが要求される。

 ただ数年前から持っていた電子ピアノから、生楽器のピアノに進出してみると、自分のそうした理解が全く浅薄であることに気付いた。指の沈め方で音色は全く千差万別であるし、その日の気温・湿度によっても、ピアノのフィーリングは全くかわってくる。もちろん、楽器ごとの個体差というのもすごくある。そんなことは触ってみるまで気づかなかった。

 だから調律という作業は、狂っているものを直す、という単純なものではなく、とんでもなくクリエイティブなものなんだろう…ということも想像がつく。理想を言えば、到達点は無限のかなたにある。

 

 この小説は、本来あまり主役にならない調律師の仕事のありようを、とても誠実に好意的に描いています。だから音楽にもピアノにも、もちろん調律にも興味がない人間にも、魅力を伝えることに成功していて、さすが本屋大賞と思いました。

 ただ、美化しすぎかなあとは思いました。地方都市のなんでも調律する楽器店にそこまでの俊才があつまるかしら。地方都市の駅前ヤンキーの言う「世界征服」のような「閉じた世界」感が…

 いや、でも。

 私の妻は子供の頃からピアノを弾いているのだが(プロじゃないですよ)、たまたま自宅のピアノを調律しに来ていた方が、その後スタインウェイの認定調律師になってらっしゃって(すごい調律師ということなんですよ)県をまたいで、今うちのピアノの調律をしにわざわざ来てくれている。

僕のまわりにだって、そういうドラマはあるわけだから、この小説が、何も荒唐無稽というわけでもないかも。

 ピアノという楽器は、ほかの楽器より、ちょっと熱量の桁が違う感じが確かにあります。ピアニストのいう「ピアノが好きです」という言葉は、結構な魂の底の底の方から発せられているし、ほかの楽器に比べて、人生狂わせられちゃう度合いも多いような気がする。

 トロンボーンの場合は、自分の声を音にしている感じなので主体性はこっちにある。でも、ピアノって、自分の意志もあるけど、ピアノの中に何かが棲んでいて、それが音の半分を担っている感じがするのよね。

私、大人になって人生決まってからピアノ触ってますから、まだ多少の距離を置けますけど、確かにこの楽器、魅入られるやばさがあるんですよ。

 

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2016 - 05 - 06 (Fri)

[book]世界最悪の旅 [book]世界最悪の旅を含むブックマーク

えーと、ちょっと前、岡山に行く用事があって、シンフォニーホールの下にある古本市でなんとなく購入。

なんとなくね。なんとなく。

CDだと「ジャケ買い」という言葉があるが、この本はずばりタイトル買い。

内容は、南極探検にいった「スコット探検隊」の話。

ノルウェーのアムンゼン隊と、イギリスのスコット隊が南極点を目指していたのだが、スコットは結構前から準備していて南極点到達を前もって目標にしていたのに対して、アムンゼンはわりと不意打ち的に南極探検に向かったらしいっす。

 結果的にはアムンゼン隊が一番のり。犠牲者ゼロ。

 スコット隊は南極点到達はしたものの、一番のりは逃すわ、帰りに全員死んでしまうという、いいところなし。

 おまけに、スコットちょういいやつだったらしくて。アムンゼンはトップダウン型のアクの強い性格。

 なんかかわいそうだなー。

しかしこのアムンゼン隊とスコット隊の対比、何かに似ているなと思ったんですけれども、「八甲田山」の青森隊と弘前隊との対比と共通点が多いように思う。

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2016 - 04 - 06 (Wed)

[]五十嵐大介『魔女』 五十嵐大介『魔女』を含むブックマーク

魔女 第1集 (IKKI COMICS)

魔女 第1集 (IKKI COMICS)

魔女 第2集 (IKKI COMICS)

魔女 第2集 (IKKI COMICS)

Kindle版はコチラ。(僕はこっちを読みました)

魔女 (IKKI COMIX)

魔女 (IKKI COMIX)

魔女(2) (IKKI COMIX)

魔女(2) (IKKI COMIX)

浦沢直樹の『漫勉』シリーズ2は、萩尾望都を除けば、花沢健吾、五十嵐大介、古屋兎丸と、サブカル系の人にはたまらない感じのテイストのピックアップでした。この3人は、漫画というジャンルの多様性の中で総花的な選択とはいえず、ちょっと振り幅が少ないんじゃないかと思うわけですが、「漫画」をハンドクラフト・アートの方法論ととらえ、その方法論を追求する意味では、確かに興味深い作風です。

セカンド・シーズンは、漫画読みの声よりも同業漫画家(および草の根の同人漫画家)のニーズに依っているのかなあと思いました。

 そんなこんなで、五十嵐大介。僕、今まで読んだことがなかったんですけども。

 確かに巷間言われているように絵うまい。

 ムチャクチャ絵がうまい。

 それがために、デッサンに裏付けられたリアルのものを書くのに、ほとんど抵抗を感じさせない。繊細すぎる描線は、好みはあるとは思うけれど。

 そのデッサン力を踏まえて、想像上のものを提示されると、ものすごい説得力がありますな。

 ピカソは精緻なデッサン力を基礎に、世界の見方を独自な視点で歪めて絵を描いた。五十嵐大介は、絵の語法としては精緻なデッサンの論理性を保ったまま、「歪んだモノ」を書いて提示する。

 漫画の優れているところだと思う。


 魔法、というものの不思議さや、女性のもつ神秘的な部分が合わさった「魔女」というアウトサイドの存在に対し、作者でさえも、なぞめいた存在に対して深く詮索しない態度をとっている。

 それがためにあまり物語として構築的な印象をうけないが、それこそが作者の志向したことなんだと思う。

 読み終わって感じるなんとも「もわーん」とした狐につままれた感じが、諸星大二郎の印象に近い。

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2016 - 02 - 21 (Sun)

[]星野源『Yellow Dancer』 星野源『Yellow Dancer』を含むブックマーク

YELLOW DANCER (通常盤)

YELLOW DANCER (通常盤)

YELLOW DANCER (初回限定盤A)

YELLOW DANCER (初回限定盤A)

"SUN"のシングルカットがあまりにもよかったので、カラオケでも歌い出したのが2015年の夏のことだったろうか。ファズのかかった音で始まるイントロはむやみにテンションが上がった。こりゃあかっこええわいと思ってたら満を持してアルバム発売。当然初回限定版を購入。


トロンボーン吹きの端くれの私にとって、星野源はまず『Sakerock』のボーカルとしてでした。ハマケンこと浜野謙太のトロンボーンはジャズ的なイディオムではないけれども、とてもメロディアスですごくよかった。ただバンド全体としてはちょっとエッジが効きすぎていて、毎日聴くのはちょっときついかなと思ってました。すごいテンション高いトラックは、なんかヤバイクスリとかキメてんじゃない?感じがあったし。


ソロになったら『ハナレグミ』的な文脈?なのかなあ…歌詞にところどころいいところがあるけど、ハナレグミほどはグッとこないような…みたいな印象でした。最初は。

次にみたのは、広島ローカルの深夜番組で『夢の外へ』がテーマ曲になってて、これのPVが、なんとも言えない中年男(井手茂太さんというそうです)の不思議なダンスで。なんとも簡単に咀嚼できない感じを抱いていました。

あとは『地獄でなぜ悪い』の出演とか、よくみると自分の好きそうな文化圏の中で着実に地歩を進めていて。ううむあなどれないぞ星野源、と思ってましたが、その挙句に出てきたこのアルバムにはやられてしまった。もうノリノリ。

結局70-80年代のソウル、ブラックミュージックの雰囲気が私は大好きなので、もろ好みど真ん中。この祝祭感は、オザケン「LIFE」以来ですよ。

星野源、オザケン、2人とも、うすい顔、体育できなさそう、女子の保護欲をそそりそうなところとか、実際多分歌は超絶うまくはないところなど、共通する雰囲気がある。(ただまあオザケンはエリート、セレブ一家であるが、星野源は八百屋の息子で売れるまで結構苦労してる違いはある)


二曲目「weekend」のホーンセクション、「地獄でなぜ悪い」のスガダイローのキレッキレのピアノが特にオススメ。

あ、あとベースがダウンタウン浜田の息子、ハマ・オカモトなんですが、これがとても気持ちいいほどよい粘りのあるグルーブを出してます。

過去オザケン的なポジションをとりそこなった存在として、私は及川光博(ミッチー)を思うのだが、彼の場合は曲とかはダンサブルなナンバーだったが、バックトラックのグルーブが足りなかったようにおもわれる。

D

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2016 - 02 - 15 (Mon)

[]土橋正『モノが少ないと快適に働ける―書類の山から解放されるミニマリズム的整理術』 土橋正『モノが少ないと快適に働ける―書類の山から解放されるミニマリズム的整理術』を含むブックマーク

ここ最近「ミニマリスト」というのも市民権を得てますけども、そういう感じの考え方の最初は「断捨離」でしたね。あれって何年くらいからだったかな?

私なんて、ミニマリストから真逆の存在で、CDも本も捨てられない。いわゆるコレクター気質で本は数万冊、CDは数千枚レベルのやつ。*1

3年前自宅を建てたときにも、4面の壁すべてを占有する書棚を有する書斎を作ってますし、CDはそれでもおさまらないので、プラスチックのケースを取り払ってCD本体と紙の部分だけ納めるやつに入れてる。それでも相当な量がある。

 というので、それ以外のモノについても、基本的に捨てられなかったんですけれども、まあ仕事場も家も雑然とすること山の如しなので、最近はとぼとぼとものを捨てているわけです。

 で、何度かこういう片付け系の本をみているのですが。

…いやあ、すっきりと片付いた書斎っていうのは羨ましいもんですね。確かにシンプルな思考とシンプルなアウトカムを目指すなら、構想空間もシンプルな方がいいのは確か。

 整理が終わったら書斎も執務室も公開できればいいなあ。

しかしここ最近の文化的な潮流では、この本にあるような書斎から発信されたような言辞が主流を占めてるだけのことかも。

例えば、澁澤龍彦の書くようなものは、こんなシンプルモダンの中では生まれっこないようにも思う。衒学的な潮流があるかもしれない。

ただ平均的な教養レベルは年々下がっているから、その手のもんが今後うけるチャンスは期待できないのかもしれないなあ。

*1:とはいえ、何度も引っ越しをして、膨れ上がる蔵書に何度か捨ててはいるんですけれども

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2016 - 01 - 28 (Thu)

[]『東京都北区赤羽』清野とおる 『東京都北区赤羽』清野とおるを含むブックマーク

Kindle版はコチラ。二巻以降はお好みで。

前掲の「おこだわり」(http://d.hatena.ne.jp/hanjukudoctor/20160123)があまりにも異色だったので、作者の出世作『東京都北区赤羽』をちょっと読んでみたら、これ、面白いのなんのって。

漫画自体の絵柄は出た時から認識はしていたのですが、あまり清潔感のない描線に、若干拒否反応を示していたのであった。食わずぎらいでした。

結局、増補版の1から4巻、それから漫画アクションに移籍してからの4巻、すべてKindleにて購入。

* *

赤羽という町は、僕は全然行ったことがない。

広島県在住の私で、東京へはよく出張でいくんですが、西日本から東京に行く場合、品川が玄関口になる。

多くの場合講演会場は山手線でいうと西〜南側に位置しており、東京駅よりも東側にはほとんど行かない。*1

そんな自分からすれば、赤羽というのはかなり馴染みのない街だ。

だが、そんなことは関係なく面白い。

学生時代神戸にいたんですが、神戸には阪急沿線より山の手に立ち並ぶ瀟洒な町並みとは別に、阪神沿線沿いにはダウンタウンともいうべき庶民の街が連なっているわけです。赤羽はそこと街のにおいが似ている気がしました。

昔ながらの商店街って、やっぱりいいよね。

大阪にもそういうところ沢山あって、やっぱりいい味を出していますね。

ダメな居酒屋、謎な店、開発から取り残されているために古い街の奇妙なものが残った街並み。

そしてそこに巣食うディープな人々。

女性ホームレスのペイティさん、ダメな居酒屋、「ちから」の愛されるダメっぷり。

* *

ただ、そういう「オモシロ自慢」「奇人変人図鑑」のようなものであれば、それほどは面白いという感想をいただかなかったと思う。『東京都北区赤羽』は、時系列に沿って描かれ、作者の街との関わりやアイデンティティのあり方もきちんと書かれていて、ノンフィクションでありながらきちんとストーリーもある。

漫画家として芽が出ず、もんもんとした生活の中、赤羽の奇妙な住人と出会い、交流があり、結果的には漫画家としてのヒットを出すに至るまでの、清野とおる氏のビルドゥングスロマン(成長譚)が縦軸にしっかりあるからこそ、続きが読みたくなったんだと思う。

学生時代所属していたジャズ研では(正式には軽音楽部ジャズなのだが)、そのころ、フリーインプロヴィゼーションみたいなジャンルが猖獗をきわめていて、エッジの効いたキッチュなものをことさらにありがたがる風潮があった。ペイティさんのような人をありがたがる素地は、その頃を思い出して懐かしい気がしたのも、引き込まれた理由だと思う。


学生時代を思い出したのは、昔青春期をすごした街に似ていたことと、学生時代に、僕もそういう物の見方をしていたからに違いありません。*2


* *

そういえば「その『おこだわり』俺にもくれよ!」であった、奇矯なリアクションは、今作では全くみられなかった。奇怪な住人たちとのやりとりのなかで作者とおぼしき「のび太」然とした風貌の主人公は狂言回しなのか、ことさらに「ノーマル」な感じで描かれている。おそらく本物の清野氏は、両方の要素をもっているんでしょうね。

*1:趣味のジャズのジャムセッションのライブハウスが錦糸町あり、そこへ行くのが僕の東限。上野、浅草も訪れたことがない

*2:どちらかというと飲み友達赤澤氏のシニカルな視点に近いと思う

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