半熟三昧 このページをアンテナに追加 RSSフィード

ようこそ。 わたし半熟ドクター(Half-Boiled Doctor)が音楽とか本とか映画とかをだらだらと書き連ねる、
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ジャズグループ:半熟三昧Jazz味もどうぞ。

2018 - 02 - 22 (Thu)

[]『怒り』吉田修一 『怒り』吉田修一を含むブックマーク

怒り (上) (中公文庫)

怒り (上) (中公文庫)

怒り (下) (中公文庫)

怒り (下) (中公文庫)

外勤先の職場の子が「今読んでいます」みたいな感じで教えてくれたので読んでみた。映画になったやつよね、なんか不愉快な筋のやつよね?くらいの認識しかありませんでしたが。

理不尽な通り魔殺人を犯し、消えた犯人。その足取りは不明であるが、3つの場面で、ささやかな生活を営む人達のもとに、ふらりとあらわれる三人の男。犯人は誰なのか――

みたいな感じでしたが、導入部分で、刑事、三つの場面の登場人物が登場し、並列して話が進んでいくので、やや序盤は攻めあぐねた。中盤から後半にかけては怒涛の展開。

感動?というのとも違うが、心に迫るものもありつつ、後味の悪さ、みたいなものも感じつつ。

俺、この世界には住みたくないな。

B009CTUD8E
幻冬舎 吉田修一
購入: 2人 クリック: 2回
B008V9UNV8
毎日新聞社 吉田修一
購入: 2人 クリック: 2回
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2018 - 01 - 28 (Sun)

[]三浦大知のこと 三浦大知のことを含むブックマーク

三浦大知が紅白にでていた。

というか、2−3年前から音楽活動も再びトップシーンに浮上していたわけだが、ようやく紅白にでるレベルのポピュラリティになったことが、懐かしくも嬉しくもあった。

おじさんの私は何を隠そうFolder時代からの三浦大知が結構好きだった。

 形態としては、キッズグループの、最年少の男の子のセンターボーカル。ジャクソン5で言えば、マイケルの立ち位置そのもの。ジャクソン・ファイブ好きとしては、当然そりゃ好きになるでしょ。

 しかしその重責に違わぬ、ダンスと歌唱力は、ただならぬ将来性を感じたものだが、同時に(今でもそうだが)少し眠たげなまぶたと、日野日出志感も醸し出す見るものを少し不安にさせる個性的なルックスは少し課題だよなと思ったりもした。

 しかし、変声期にFolderを外れ、ガールズユニットとしてFolder 5は残るが、満島ひかりを残した以外は大きな意義もなく活動を終え、三浦大知は一時シーンから外れる。その後じわじわと知名度をあげつつシーン再登場し、今に至る。グループ脱退とソロの再登場は、マイケル・ジャクソンの足跡とある種共通点もあるが、まあ何しろすごい人だなと思います。

 私は R&Bやヒップホップは自分でやらないので、そんなには聴かない。音楽としてはあまり馴染みはないのですが、まあしかし幼少期からの、圧倒的な光の中にいても少しだけ闇を感じさせるルックスを引きずりながら、どこまでスターダムに上っていくのか。そしてもしスターダムに上っていった時に、マイケルのネバーランドみたいな変な方向にいってしまやしないか。

めったにカラオケとかでも歌いませんが、Glory Gloryすきでした。

D

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2017 - 12 - 10 (Sun)

[]百田尚樹『カエルの楽園』 百田尚樹『カエルの楽園』を含むブックマーク

カエルの楽園 (新潮文庫)

カエルの楽園 (新潮文庫)

ちょっと前に流行ったやつを買ってみて読んでみた。

私はジョージ・オーウェルは『1984』よりは『動物農場』が好きな人間なので、あの作品らしきディストピア小説でした。読後感は似た感じのイヤーなもので、まあよくできていると思った。

一面的な書かれ方かなあとも思いつつ、ネトウヨであったり左翼リベラルであったり、そういうカテゴライズされた人たちに、どのように届くのかなあと興味深くもあった。

文庫版・単行本含めて、はてな界隈の論評は、例えば村上春樹の本とくらべても驚くほど少ない。はてな民のクラスターではないのだな。

中国・韓国が、ここで書かれているような邪悪な集団であるかどうかは論評しないが、彼らにすれば、経済的に困窮していたり格差社会の中での社会騒乱を解決するために、豊かな日本を狙う、というのは、たとえ彼らが邪悪でなくたって、ありうるとは思う。

ウォー・ギルト・インフォメーション(WGIP)は、まあ我々はもっと知っておいたほうがいいと思うので「三戒」は、確かに絵空事ではない。

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2017 - 12 - 08 (Fri)

[]珍説愚説辞典 珍説愚説辞典を含むブックマーク

あれまあ、気がつくと3ヶ月くらい経っていました。いやほんと10月から仕事面で怒涛の展開で…またどこかでまとめて書くことができればいいのですが、今はちょっと生生しすぎます。

珍説愚説辞典

珍説愚説辞典

これは、多分2年前くらいに買った本。タイトルだけでジャケ買い。

かなり分厚い本です。本棚においたらこんな感じです。あえて真面目な棚に置いてはみました。その手前にある世界毒舌大辞典、っていうのもどうかとは思うけど。

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珍説愚説辞典は、古今東西の変な考え方(=珍説・愚説ですね)を網羅的に集めて、ラベリングをし、分類したものです。以上。

紙の値段が高額であった時代に発せられた珍説・愚説はある種の価値があるのではないかなあと思う反面、昔だろうが珍説愚説はくだらなくて、時間のムダではある。この私のBlogもそうだが、無名の人間が大量の文章を垂れ流す現在では、1日でこの本にある量の数倍の珍説・愚説がネット上では吐き出され続けている。単位時間あたりに生成されるテキストの中で、意義あるものの比率は、紙書籍の時代は意義あるテキストの比率は相応に高かっただろうが、今ではむしろ逓減して、ゼロに近づいていると思う。現代は珍説愚説も味わうことなくそのまま廃棄され忘れ去られてしまう時代である。

 しかし、それはさておき、網羅的な閲覧や検索の利便性から言うと、紙の書籍であるより、電子書籍の方がいいのではないか、とも思う。ラベリングの恣意性を考えると、検索には全く向いていない。そういうのも含めて全く無意味な一冊ではある。大学生の時分であれば「おれ本棚に変な本持ってるんだぜ」的に宅飲みの際に見せびらかす為に飾っておく、くらいの意味しかない。

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2017 - 10 - 14 (Sat)

[]ボクたちはみんな大人になれなかった 燃え殻 ボクたちはみんな大人になれなかった 燃え殻を含むブックマーク

ボクたちはみんな大人になれなかった

ボクたちはみんな大人になれなかった

ボクたちはみんな大人になれなかった

ボクたちはみんな大人になれなかった

なんかWebで人気だそうでなんとなく購入(Kindle版)

主人公はいわゆる成功した業界人。仕事も順調、人間関係も、そしていい女も蛇口をひねるように手に入る生活を送っている。Wanna beの女子と寝て「そうなの君もがんばんなよ」みたいな余裕な生活。

だけど、自分が何者でもなかった時代、かっこ悪い青春時代。

自分を守ることで精一杯だった。そのぶん近くにいる人を守っている余裕なんてなかった。そんななかお互いに社会の中であがき、傷つけあった異性の話。別に主人公が一方的に悪いわけではないが、自分だけが夢にたどり着いたせいで、後ろめたさを感じているんだけど、たまたまFacebookで、その元カノを見つけて、そしてなんとなく友達申請してしまったところから回想の1日がはじまる。

んー。なんつーか。Facebookめ。

これは作中主人公の感想(マーク・ザッカーバーグめ…的な言辞)と同じではあるのだが。

筆致は、あちこちに印象的な言い回しが光る、クリスプで、オシャレクソ野郎的な文体。

糸井重里のエッセイの文体に近い匂いを感じられた。

構造の堅牢さよりは瞬間最大風速性の高い文章。

「賢治はずっと東北の田舎町で人生の大半を過ごしたのに 、銀河まで旅したんだよ 」車窓から差し込んでくる朝の光に目を細めた彼女が 、カ ーテンを半分閉めながら言う 。 「きっと 、妹を一緒に連れて行ってあげたかったんじゃないかな 」そしてボクの目を見てこう続けた 。 「どこに行くかじゃなくて 、誰と行くかなんだよ 」

マ ーク ・ザッカ ーバ ーグがボクたちに提示したのは 「あの人は今 」だ 。

「でも人生に真面目に取り組んだら犯罪くらい犯しちゃうと思うの 。運転する人はゴ ールドカ ードじゃないし 、車にキズがあるのと一緒で

そういうのも含めて、いろいろ痛い。だがそれは自分の痛さでもある。

そりゃみんな悶絶するわ。

昔なら、下積み芸人を支える糟糠の妻、という話になったのではないかと思う。あえて、こういう希薄な関わりにしたせいで、圧倒的な普遍性を獲得したのかなあと思った。私の人生はこれとは全然違うが、やはり未熟ゆえに相手を気遣う余裕のなかった過去の恋愛を思い出し、過去の罪に対して心の中で懺悔をした。

っていうか、そうか。俺も主人公と同じ43歳になったんだった。うわっ、痛〜。

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2017 - 09 - 22 (Fri)

物男 [book][comic] 物男 [book][comic]を含むブックマーク

物男 1

物男 1

なんじゃこれ。

久しぶりにいろんな意味で唖然とする作品をみた。

物語は現代日本だが、「物男」なる、物品の肩代わりをする賤業集団がいて、主人公はラブホテルのベッド役をやっている童貞男子。

……もうのその時点で設定がよくわからないのだけれども、そこから無理矢理に物語がはじまったりするのだけれども。

で、時事ネタなのか大塚家具を模した「大角家具」っていうのがでてきたりして、そこのデザイン家具の素材として、物男が採用されて、でも椅子の格好するのには、勃起や射精がネックになって……

という、改めて書くとくだらないとしかいいようがないのだが、物語って恐ろしいもので、そんな設定でも話がすすめば読み進んでしまうものなのだ。

物男 3

物男 3

デザインコンペで勝ったりしていた2巻まではともかく、急展開をむかえるのはついこの前出た3巻。

なんだかよくわからないうちに、SFっぽい展開になり、星間旅行をさせられてしまう主人公。そしてよくわからないうちに物語は終わる。

なんだこりゃ。

ほんと……なんだこりゃ。んー?

いい意味でクレイジーさと、オナニー感あふれる世界観の同居。

最後は、なんかものすごい大きい世界愛的な感じを匂わせて作品は終わる。

(でもまあこれって、射精後の『賢者タイム』的な感覚に、きわめて近いような気もする)

この作品って、童貞男子(男はみんな元童貞男子なので、男子は全員該当するわけだが)なら共感できるようなリビドーを前提としているわけですが、サブカル女子とかには、この作品は一体どのように受容されるんだろうか。

陰茎を持たない人にとっては、この作品はどう受け止められるんだろうか?

単純に「気持ち悪い」、なんだろうな。エヴァ映画版のラストみたいに。

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2017 - 08 - 27 (Sun)

[book]Facebookを使った節税術  [book]Facebookを使った節税術を含むブックマーク

経営者、もしくは個人事業主は、仕事の範囲が多岐に渡る。どこまで経費として認めるか、というのは、税理士事務所的にも解釈がまちまち。税理士事務所としても、OKと明言してしまって税務調査で税務署に怒られたくはない。やはり経費として認めるには「ストーリー」が必要。Facebookで個人ログをとっておくと、ストーリーの実証にしやすいですよ。と、そういう内容。

その他、海外への資産逃避とか、事業計画やキャピタルフライトの話とかが、裏話・座談会のように話されていて面白かった。

ちょっと小金をもっている人の中でよくある財テクとしてHSBC(香港上海銀行)に個人口座を作って、現金を持ち出して海外逃避資産を作る、なんてのがまことしやかにささやかれているけれども、これなんて国税庁の職員にしてみれば、マルバレらしい。なんとなれば、HSBCの入っているビルの二階には日本国税庁の出張所がある。馬鹿だよねー。みたいな話。

ではなぜ取り締まらないかというと、いちいちきりがないから。タイミングを取り計らっているらしいよ。

警察にインターポールがあるように、現在、世界各国の税務署同士は情報交換をしているので、資産はガラス張りなんだとか。

[]税金恐怖政治が資産家層を追い詰める(幻冬舎) 副島隆文 税金恐怖政治が資産家層を追い詰める(幻冬舎) 副島隆文を含むブックマーク

税金恐怖政治が資産家層を追い詰める

税金恐怖政治が資産家層を追い詰める

面白いことに、これは同じ現象を全く逆の視点からみている本である。ここでは、税務を「タックス・テロリズム」と断じ、「富裕層への課税強化宣言」を行い、資産家の資産はガラス張りだ、と嘆く。

「公務員は利益を産まない 「利益を産んではいけない」と教育される、公僕という建前をとって、税務署員のやっていることは、収奪そのものではないか。相続税の規制強化も進んでいるし、この国、といわずすべての税務職員は、働いて正当に得た対価を、収奪するひどいやつらだ、と。

まあ、確かに高額所得者の税金は高いから、その言い分はわからんでもないが、しかし30年前にくらべると、所得税は結構さがっているからいいじゃないかと思ったりはするのだ。

挙句の果てにはこの先生、現金でタンス預金していて、泥棒にとられてしまったのだとか。

その恥エピソードを発表するのはある種の立派さではあるが、国家に収奪されるか、治安紊乱者に収奪されるかだったら、国家に収奪されたらいいじゃないか、と思ったりもする。

この本では「10億以上の富裕層は、とっくに資産を海外に逃がしているが、5億以下の小金持ちは逃げ場がない」ということについて警鐘を鳴らしている。

一方、「Facebook節税術」では、そういう海外に離脱した人たちが、しみじみと「もうでも俺たちは日本には戻れないんだよねえ…」という嘆息を紹介してた。国税庁ににらまれている富裕資産者は、もう国内に定住することはできないのだとか。「やっぱり私は税金を納めるなら日本に納めたいし、死ぬなら日本で死にたいよなあ」ということを書いていた。私もそう思う。

もちろん、納めた税金は有意義には使ってほしいと思う。それとこれとは全く別の話だ。

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2017 - 06 - 07 (Wed) 「ロボニートみつお」は現代の「ライ麦畑」か。

[comic]小田原ドラゴン『ロボニートみつお』  [comic]小田原ドラゴン『ロボニートみつお』を含むブックマーク

あまり賛意が得られないのでありますが、小田原ドラゴンの一連の作品群がとても好きなんです。

どちらかというと下から目線。労働者階層、ですらないニート的な視点からみえる、おかしくも悲しい現代社会。

山野一『四丁目の夕日』に近い毒をもった世界なのに、変にファンシーな絵柄。

そんな小田原ドラゴンの作品を楽しみにヤンマガ、ことヤングマガジンを見ています。

しかし『チェリーナイツ』は大好きで、特に「バンギャ編」に涙した私ですが、世間的な評価はあまり、というか全然高くありません。

チェリーナイツ続編である『ワイルドチェリーナイツ』、これは、江藤が宇宙戦士となり戦ったり作者のマンション購入の経験を踏まえたエピソードが語られたりしつつ本当に正しい餃子のタレを探しに宇宙の果てまで探しに行くという「間違ったセカイ系」の話でありました。しかし 2017年5月現在、Kindle化もされていません。さらにその続編、『チェリーナイツR』「田中ワレ」こと風俗大好きの田中が、金玉を覆う男性用ブラジャー会社「タマブラジャー」の社長になっている話なんですが、Rに至っては単行本化さえされていない始末。

商業的には苦戦を強いられています。

まとめて読むには向いていないんですかね。

f:id:hanjukudoctor:20170607221518p:image

こんな感じで身も蓋もないのが持ち味です。


そんな小田原先生の新作「ロボニートみつお」はこの度完結し、めでたくKindleでも出版されました。良かった。

町外れの研究所で博士が作り出したロボが深夜目覚め…

という冒頭で始まるのだが、このロボは働きたくないロボ、ニートロボなのである。

揺籃期、博士との怠惰なニート生活を経て、博士は死んでしまい、みつおは、街を彷徨うことになる。

いろいろな濃い人々と出会う。いってみれば地獄めぐりに近いその道行きは、キャラの濃さと脱力も含めて、現代版『ライ麦畑』のテイストがある。

主人公はホールデン・コーンフィールド同様に、ただただ流される。しかし明るく屈託がない。

ロボニートみつおには、前出の「チェリーナイツ」の江藤と田中もちょっと客演してくれる。

読後感はあくまで虚しく、そしてなんともいえない悲しさが残る。そういうところも少し「ライ麦畑」です。

私はニート的な生活とは無縁で、社会的にはむしろ真逆と言ってもいいのであるが、作中のニートに共感することハンパないのはなぜでしょう。

個人的には

ネットを見ること風のごとく

親の説教を聞き流すこと林の如し

フィギュアを買うこと火の如く

働かざること山の如し

の、ニート風林火山の皆様が好きだったですね。

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)

* * *

ちなみに前述した暗黒下町物語『四丁目の夕日』はトラウマ級の後味の悪さです。

疲れたり、死んじゃいたいような気分の時は僕はこれを読みます。まだましだって思うから。

四丁目の夕日 (扶桑社コミックス)

四丁目の夕日 (扶桑社コミックス)

でも山野一は妻ねこぢると共作し、ねこぢる自死のあと再婚、今は双子の娘を描いたほのぼの育児マンガを発表してらっしゃる(絵柄はねこぢる)。人生何があるのかわからないものですよ。

そせじ(1)

そせじ(1)

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2017 - 04 - 24 (Mon)

大本営発表』辻田真佐憲 『大本営発表』辻田真佐憲を含むブックマーク

そういや、かつて「ものぐさ精神分析」で名をなした岸田秀先生が、自分の精神分析の原点は、太平洋戦争の戦史を読み解きながら、涙し、怒り、どうしてこんな愚行をおかしたのだろうと疑問を感じたことだ、と語っていた。

「個体発生は系統発生を繰り返す」と少し似ているのだが、岸田学説のおもしろさは『国家と個人の行動様式は同じ手法でアナライズ(精神分析)できる』と仮定し、それを実際にアナライズしちゃって彼の一連の作品群ができた。あんまりにも知的啓発力が強かった(おもしろかった)ために、その手法の正当性はさておき、時代の寵児となり、うやむやになってしまったが、そう氏に行動せしめた原点が、昭和軍部であり大本営発表にある。また司馬遼太郎も、繰り返し、昭和軍部の奇胎性をあげつらう。

その昭和軍部の無茶苦茶ぶりの代表とされる、「大本営発表」についての考察が本書だ。

まあ大方は、現代の視点で振り返れば、検証するまでもなく、無茶苦茶なのであるが、ただ、成立の歴史的な経緯などをみると、意外と知らないことも多かった。

例えば、大本営発表がエスカレートした原因には海軍と陸軍の競り合いがあったこと。東条英機がまあまあ話せる陸軍の報道部長を、政敵の応援演説に行ったって理由で更迭。新任の部長はあがり症のめちゃくちゃ口下手な男だったため、『海軍の発表はいいのに陸軍はね…』みたいになっちゃって、原稿を作るスタッフが、美辞麗句を入れて、原稿の段階で艶を出そうと涙ぐましい努力をしたらしい。それが、その後の事実よりは形容詞などの重視につながったとか。陸軍の不適正人事を弥縫しようとしたところに蹉跌があったというわけ。

 それから、大本営発表は、開戦当初は比較的正確な発表をしていたんだって。それを、当初は新聞社の方が、まだ占領していない都市を占領したように フライング報道をしていた。それを国民の士気を下げないため黙認、とかしていたらしい。ようするに正確な情報を上げない風潮のきっかけを作ったのは報道側だそうで。

 それがミッドウェー海戦の惨敗以来、逆に振れ、負けをごまかすために積極的に嘘をつくようになる。美辞麗句と、被害の過小評価・戦果の過大評価で、現実との解離がおこるさまは、本当におそろしく、情けない歴史である。

 天皇陛下もそのへんはわかっていて「そういえばサラトガが沈むのは4度目じゃないか」と侍従に漏らしたとか。

 ちなみに「玉砕」という表現は1944年の半ば、一瞬使われただけで、意外に定番化しなかったそうだ(批判が多かったらしい)。

 私も、岸田秀なみに、腹の底から怒りが湧いてきたから、みんなも読んでみたらいいんじゃないかな。

 新書にありがちな感じで、最後は「まあねえこういう昔の話だとみんな思っていますけど、今の政府と報道のあり方とかも、みなさんも考えてみたらいいんじゃないでしょうか?」みたいな問題提起で終わってます。まあ、そうですけど、ちょっとあざとい。

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2017 - 03 - 05 (Sun)

『刻刻』堀尾省太 『刻刻』堀尾省太を含むブックマーク

刻刻 コミック 1-8巻セット (モ-ニングKC)

刻刻 コミック 1-8巻セット (モ-ニングKC)

Facebookとかやっていると、「漫画が無料で読める!」みたいなアプリの宣伝がよくありますね。そこで割とおもしろげな漫画が取り上げられてて、だからまあKindleで読んでしまう。そうすると、なんか、一見目を惹くどぎつい漫画ばかりが増えてゆくわけです。割とわかりやすい展開ですよね。

そういう漫画ばかり読んでいると、購入傾向からの「Amazonのオススメ」というリストも、そんなどぎつい漫画ばっかりになるのな。悪循環です。

『村祀り』『死囚獄』『ギフト』『生贄投票』『監禁嬢』『奈落の羊』『死役所』『蝶獣戯譚』…悪貨は良貨を駆逐する…とまでいうと言い過ぎであるが、共通点は屋台のジャンクフードのように、読み手をぱっと惹きつけはするけど、それ以降の展開力にいささか難があり、今ひとつ深みにかけること。

 そういう読み味の連続にやや辟易としていました。

 なんかね、読めば読むほど頭が悪くなっていく感じがあるんです。

 あ、『死役所』は面白かったですよ。

しかし『ゴールデンゴールド』堀尾省太はかなり面白いなあと思いました。なにより舞台となっている向島〜備後地区が地元なので、そういう意味でもぐっと来た。やっぱり地元びいき的なものってありますわな。

 冒頭のシーンのアニメイト、福山駅前の元トポスのビルのアニメイトや!僕がよくいくカラオケの建物や!とか、そういうのもちょっと嬉しかったんですけれども。

で、堀尾省太の出世作…*1

『寄生獣』の岩明均、『アイアムアヒーロー』の花沢健吾絶賛!

という釣り文句に惹かれて *2、『刻刻』を読んでみたんですが、面白かった。

うーん、なんというか、先程の作品群と比べ「読めば読むほど頭がよくなっていく」感じはしました。

 時間を止め、その中で活動できる能力をもつ一族と、別の集団と、その戦いと言うかなんというか。

 そういう設定だと、何度も時間をとめたり戻したり、みたいに、プロットの中で能力を使うのかなあと思っていたら、そうではなくて。

 そういう設定の中でダレもせずストーリーがぐいぐい動いて、一気に読ませられてしまいました。ものすごく完成度が高く、きっちりしています。「ライオン仮面」的な要素 *3全くなし。 

 連載時にはアンテナにひっかかっていなかったのが悔やまれます。まあ、モーニング・ツーだもんなあ。

 最初の印象では、第一巻の序盤のところだけ、やや展開が早くて不親切かな?と思いましたが、そのあと十分没入できたので、別にいいんだと思った。「?」を残しながらストーリをすすめるのもテクニックですよね。

*1:というか、そんなに出世してないのでなんですけれども、

*2:アイアムアヒーローの終わり方で若干「…」となってしまったので、この釣り文句は今現在相対的にやや価値が減弱しているようには思うが

*3:どらえもんの漫画中漫画で、フニャコフニャ夫先生は締め切りに追われるあまりストーリーなんか無視してでたとこ勝負で毎週切り抜けている、という設定

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