半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

アイザック・アシモフ『ファウンデーション』1,2,3

 中学生の時、SFにはまった私は、当然アシモフなども読んでいたわけなんですけれども、その時は、創元版『銀河帝国の興亡』を買っていたのです。そうすると、じきにハヤカワ書房から"ファウンデーションシリーズ"と銘打たれたシリーズが出てきたんですけれども、やっぱり訳の世界というかさ、系列を乗り換える気にはならなくて、そのままハヤカワの方は読まずじまいになっていました。続きが読みたいなー、なんて思っていたらアシモフ死んでもうたし。

 その後SF熱は冷め、度重なる引っ越しで、アシモフ作品は気がつくとすべて手元を離れてしまいました。今回、古本屋でファウンデーションシリーズが安かったのを見つけ、1から読み直すことにしたわけです。
 とりあえず、3巻まで、つまりすでに読んだことがある所までの感想です。
 一番の印象は、読み味が随分違うなあってこと。創元版では漢語に訳されていたのが、ハヤカワではカタカナだったりとか、そういう細かい違いがある。たとえば、この本のキモである<セルダン計画>(創元版)は、ハヤカワ版では<ザ・プラン*1>と、英語そのままである。あと、テルミナス→ターミナスだったり。
 そういう細かいところでニュアンスってだいぶ変わるもんです。そうね、たとえていうとですね、『ネバーエンディングストーリー』映画版で、バスチアンが幼心の君の名前を呼ぶところで、原作も読んでいた僕は、てっきりモンデンキント*2だと思っていたら、ムーンチャイルドだったとか、それくらいの違いがあるよ、テルミナスとターミナスには。
 あと、会話文も随分ニュアンスが違いますねえ。

 話自体は、学生時代に読んだものだから、基本的に驚きはないが、本人が後日記で書いていたように、結構やっつけで書いているとは思えない完成度だ。これは、理系のSFではなくて、文系のSFだな。経営学とか、そういうの*3メカトロニクスとか、そういうのはほとんど抽象的にしか書かれていないが、この点は、クラークやグレッグ・イーガンなどとは随分肌触りが違う感じがします。

 ところで、作中で言及される心理歴史学という架空の学問は、心理学/精神医学の中でも、アメリカが中心の力動精神医学に大きくインスパイヤされているのではないか。あと、三巻で現れる、心理歴史学者のサイコメトラーぶりは、アメリカにおける精神医学の(特にLSDなどが導入される60年代より以前の)、フロイディズムの持つオカルト要素を投影しているのだろうと思った。
 中学の時に読んだ時にはそういう時代性というものはあまり気にならなかったんですけれども、おそらくそうやってアシモフも時代性の制約を受けていたんだなあと、今にして気づきました。

*1:ダイソーみたいですけれども。

*2:ドイツ語、月の子という意。映画版は、当然英語なのである。

*3:ポリティカル・フィクションという言葉もあるらしい。なるほど。