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2013-01-28

 姉帯豊音と山女について

『宮守女子の謎に迫る』シリーズのその6です。過去の記事のまとめはこちらになります。
前回の塞さんの記事は思いのほか好評で、いくつかのサイトで取り上げて頂いたようでありがとうございます!この調子で今回の姉帯さんの謎に関してもすっきり解き明かしてみたい所なんですが、彼女に関しては未だに謎が多く今回の記事もあくまで暫定的なものとなります。というか、正直新しい情報は何もない面白みのない記事なのでご了承ください。いつか彼女の謎についても解き明かせるといいなぁ…。
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  • 名前の由来

まずはいつも通り名前の由来について。名字の姉帯については、かつて二戸郡にあった旧姉帯村が起源とされてます。現在、姉帯の名字が特に多いのがこの二戸郡とその北にある二戸市ですね。名前の豊音については後述します。

  • 山女について

そんな姉帯さんの元ネタなんですが、一番よく指摘されるのが山女との関連です。山女を含めた山人に関するお話は『遠野物語』に数多く登場するんですが、そのお話は大きく分けて

  1. 背がとても高く髪もとても長くて異様な目をした妖怪の山女のお話
  2. 山男によってさらわれて元の場所に戻る事を許されない人間の山女のお話

の2つのタイプに分ける事が出来ます。ここでは、その中でも最も代表的なお話をひとつ紹介しますね。

三 山々の奥には山人住めり。栃内村和野の佐々木嘉兵衛という人は今も七十余にて生存せり。この翁若かりしころ猟をして山奥に入りしに、遥かなる岩の上に美しき女一人ありて、長き黒髪を梳りていたり。顔の色きわめて白し。不敵の男なれば直に銃を差し向けて打ち放せしに弾に応じて倒れたり。そこに馳けつけて見れば、身のたけ高き女にて、解きたる黒髪はまたそのたけよりも長かりき。のちの験にせばやと思いてその髪をいささか切り取り、これを綰ねて懐に入れ、やがて家路に向いしに、道の程にて耐えがたく睡眠を催しければ、しばらく物蔭に立寄りてまどろみたり。その間夢と現との境のようなる時に、これも丈の高き男一人近よりて懐中に手を差し入れ、かの綰ねたる黒髪を取り返し立ち去ると見ればたちまち睡は覚めたり。山男なるべしといえり。
○土淵村大字栃内。

柳田国男 遠野物語


このお話を含む多くのお話で山女は背が高い、とても長い黒髪、美しい女性、目の色が常人と異なる、肌が白かったりあるいは赤い顔だったりなどの特徴があります。これらの要素はほぼ姉帯さんの身体的特徴そのままですし、こちらのコマの
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姉帯さんの私服も山女、そして山人の特徴を表す時によく描写される色である白と赤で構成されています。これらから考えると少なくとも姉帯さんのキャラクターデザインが山女を基にしたものである事はほぼ間違いないんじゃないかと思われます。

また、彼女の名前の豊音も山女のお話から採用されたのではないかといわれています。実は上で紹介した『遠野物語』の3話の山女は佐々木喜善の大叔母にあたる佐々木トヨなのではないかという仮説がありまして*1、これとは別のお話の別の女性の話ですが、トヨという女性と山男に関わるお話もあるようです*2

後、先程も書いたように『遠野物語』に登場する山女がしばしば山男によってさらわれ元の場所に戻る事を許されない存在として描かれている事も興味深いですね。
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姉帯さんは今まで村に閉じ込められて外に出る事を許されなかったんじゃないか、と思わせる描写が随所にありますが、もしそういった設定があるのならばそれもこの山女から採用された設定なのかもしれないですね。

猟人某もこの女に行き逢った。鉄砲で撃ち殺そうと心構えをして近づいたが、急に手足が痺れ声も立たず、そのまま女がにたにたと笑って行き過ぎてしまうまで、一つ処に立ちすくんでいたという。*3

また、このお話のように山女は山奥に住んでいて人恋しいからか人懐っこい行動を取ったり笑ったしている描写が結構多いんですよね。この辺りもいつもワクワクでちょー楽しそうな姉帯さんの性格に反映されているかもしれません。

ところで、姉帯さんの元ネタとしてネットなどでよく言われるものに八尺様というものがあります。

八尺様 - 死ぬ程洒落にならない話を集めてみない?

八尺さま by からあげ on pixiv



このお話は2chオカルト板発祥のものらしいですが、イラストなんかを見ると確かに姉帯さんの姿にそっくりですね。八尺様の話も幾つか読んでみましたが、舞台が東北というパターンが割と多い印象を受けました。そして、先程の山女のお話と八尺様のお話を比較してみると身体的特徴は言うまでもなく一致していますし、山男にさらわれる点についても八尺様のお話では八尺様の方が人間をさらうお話になってますが、お話の構造自体は変わらないですし、基本的に八尺様は山女の現代版のお話であると考えて差し支えないでしょう。ひょっとしたら最初に八尺様を考えた人が『遠野物語』を参考にしたのかもしれませんね。山女は帽子はかぶってないですから、立先生が姉帯さんのビジュアルに八尺様を参考にした可能性も十分あり得ると思います。

  • 姉帯さんと六曜について

さて、ここまでは非常にすんなりといくんですが、姉帯さんと麻雀描写についてのお話になると、途端に繋がりがまるで見えなくなってしまいます。彼女の麻雀における能力といえば
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六曜といわれています。正確には本編において、先負、友引、赤口が言及されている為に、ここから彼女が六曜使いである事が推測されている訳ですね。それでは、山女と六曜を関連付ける何かが『遠野物語』内にあるかというと…ないんだな、それが。というか、作品のどこを見ても六曜の「ろ」の字も出てこないんですよね。
そもそも六曜はその起源自体がはっきりとしてなくて、日本には室町時代に伝わったとされていますが、江戸末期まではほとんど知られる事のなかった暦で、一般に広まり始めたのは明治以降らしいです。『遠野物語』が著されたのが明治43年なので、そもそも当時の遠野の人が六曜を知っていたかすら危うい訳で、『遠野物語』内に六曜が登場しなくてもそれは当然の事と思われます。

とすると、姉帯さんの六曜は元ネタとは全く関係ない能力なのかもしれない訳ですが…個人的にはその可能性はあまり考えたくないんですよね。だって、彼女以外の宮守のキャラクターは(恐らく)元ネタや名前と能力が深く関係してる訳です。それなのに姉帯さんだけ無関係だったら
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姉帯さんがぼっちでかわいそうじゃないですか!
という訳で、興味がある方はこの謎について考えてくれたらちょーうれしいよー。

  • 姉帯さんの住んでいる村はどこにあるのか?

結局、姉帯さんと六曜の繋がりについては謎のままなんですが、それを解くカギとなるかもしれないと個人的に思っているのが彼女が住んでいる村についてです。もし、この場所がはっきりすればそこに伝わるお話などから姉帯さんの能力の謎が解き明かす事ができるかもしれません。なので、咲−Saki−本編内の描写から彼女の村がどこにあるかについて多少なりとも推測できないか考えてみました。

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第93局[歓迎]の1コマ。また、この時の時間は18時50分である事が別のコマから確認できます。宮守女子のモデルとなった遠野高等学校情報ビジネス校は宮守駅から徒歩15分です。これらの情報から考えると彼女がいう次の電車は上り、あるいは下りの19時15分の電車の事で間違いないと思います*4。とすると、彼女が住んでいる村の最寄駅は宮守を19時15分に出発するとギリギリ最後のバスに間に合う駅という事になるんですが…ちゃんと調べたわけではないので断定は出来ないんですが、この条件に当てはまる駅ってわずかしかないと思われるんですよね。岩手県交通のHPを見る限りだと北上駅と花巻駅ぐらいかなぁ。という訳で、姉帯さんの村がこの辺りにあるのではないかと仮定して彼女と六曜を繋ぐ何かがないか考え中です。しかも、六曜がわりかし最近広まった事から考えるにわりかし最近のお話じゃないかと思う訳ですが…。


と、こんな訳で今回はなんともすっきりしない終わり方となってしまいました。う〜む、悔しい。一応今回で『宮守女子の謎に迫る』シリーズは終わりな訳ですが、今回調べていく内に宮守以外の繋がりも見えてきたところがあるので、次回は今までのまとめとそれらを番外編として触れつつ、最後に参考文献についても紹介しようと思います。それでは、また。

*1:著:菊池照雄『山深き遠野の里の物語せよ』の中の 山に消えた娘たち2.漁師に撃たれた山女トヨ より。…が、『注釈 遠野物語』ではこの仮説を間違いだと結論付けていたりします

*2:伊能 嘉矩の『遠野のくさぐさ』より「門助婆」というお話。

*3:柳田国男『遠野物語拾遺』114話

*4:電車のダイヤに変更がなかったり、立先生がきちんと姉帯さんの村の場所を決めているのだとするならば、ですが

白揚羽白揚羽 2013/01/28 22:47 始めまして。アンテナさんのとこではお世話になってます。
自分のとこでは豊音の名前の由来までは調べ損ねてましたー。
他の部分でも行き届いた考察さすがだと思います。
自分のとこでも結構無理矢理にですが、豊音と六曜を関連付けて考察してみたので、
よろしければご覧くださいm(_ _)m

hannoverhannover 2013/01/28 23:10 >白揚羽さん

こちらこそはじめまして。いつもサイト楽しみに拝見してます。
「豊音と遠野と六曜」の記事の事ですね。すいません!余りに時期がかぶりすぎてたので紹介しませんでしたが、記事は見てました。また違った視点から書かれたいい記事だと思います。色々な人の考察が読めるのは楽しいですね。

次回では少し永水についても触れる予定ですのでその際に「霧島の巫女」についても紹介しようと思ってます。
それでは今後ともよろしくお願いします。

あおいあおい 2013/01/28 23:14 豊音ちゃんと六曜の関係は難しいですね。
六曜は近世に博打打ちの験担ぎとして流行していたもののようですが、博徒が山中の天狗や仙人と博打を打ってマジカルアイテムをせしめるという民話が各地に伝わっていたりしますから、そういう話が岩手にも伝わっているという記録さえ見つかればなんとなくいい感じに繋がるかな?と思っています。ほんの思いつきにすぎませんが、柳田の『天狗の話』によれば、天狗=山人ですし・・・
あとは「空亡」(元々は六曜と六曜の切れ目の時間のことだったが、近年では『百鬼夜行絵巻』の最後に出てくる火の玉のことと説明されるように)のイメージが重ねられているとか・・・?いろいろ考えられそうですが・・・
私ももう少し調べてみます。

hannoverhannover 2013/01/28 23:28 >あおいさん

確かに『遠野物語』においても山人、山の神、天狗はそれほど違いがあるものではないような描写なのでそちらからも調べられるかもしれませんね。後、考えられるものとしては山人のモデルの1つとなったサンカなどと六曜の繋がりを探ってみるとかでしょうか…。

正直な所、自分の中でもかなり手詰まり感が強いので、あおいさんのような方に一緒に調べて頂けるのはちょーうれしいです。

白揚羽白揚羽 2013/01/29 00:13 おおお、ご覧くださってましたか。ありがとうございます。
私の方でも機会があれば紹介させていただきたく思います。
今後ともよろしくお願いします。

うっす有珠うっす有珠 2013/01/29 00:36 豊音さんの能力は「六曜」ではなく「背向(そがい)」なのだと思います。
「背向」を六曜の先負に見立てて、友引、赤口を開発。他(仏滅、大安、先勝)は開発途中、とか。
なにせ、あそこで使える能力を使わない理由がありませんし。
※赤口はチーが必要なため友引と同様に上家の霞さんに抑えられてしまったと予想。
なので、遠野と「背向」との関連付けが出来れば十分ではと思います。
あと、豊音さんの由来は豊間根(とよまね)村とする説はどうでしょうか?
以上、考察がんばってください。

hannoverhannover 2013/01/29 09:13 >白揚羽さん

よろしくお願いします(ぺっこりん

>うっす有珠さん

なるほど、けれど「背向」には後ろ向きなどという意味しかないので、その場合索引を頼る事は出来ないので関連性を見つけるのは大変そうですね。
豊間根駅については似てはいるけどう〜ん、他に姉帯さんと関連付ける要素がないので決め手に欠けますね。成香ちゃんみたいに全く同じ名前の地名があれば話は別なんですけど。

たぬきたぬき 2013/02/04 22:44 「六曜」の他に「六輝」「衝天」も考えた事があります。「六輝」は「六曜」の別名。「衝天」は歴史小説「天を衝く」から。

hannoverhannover 2013/02/05 01:20 >たぬきさん

「六輝」はわかりますが「衝天」は「天を衝く」の内容に姉帯さんを連想させる要素があるという事でしょうか?何にせよ、面白そうな小説ですね。今度読んでみようと思います。

たぬきたぬき 2013/02/10 21:19 「九戸政実の乱」を調べて見れば分かると思います。南部宗家に反し、そして豊臣秀吉の支配に屈しなかった男達の物語(史実)です。

hannoverhannover 2013/02/10 22:35 >たぬきさん

情報ありがとうございます。『天を衝く』と共に調べてみる事にします。

ガバメントガバメント 2013/04/08 23:17 「咲るつぼ」ってサイトに姉帯サンの六曜について考察してる記事がありましたよ。
見てみてはいかがでしょうか?

hannoverhannover 2013/04/09 09:00 >ガバメントさん

情報ありがとうございます。う〜ん、面白いとは思うんですけどちょっと気になる点が幾つかありますね。一番ネックなのはこれだと姉帯さんの「全体効果系」が説明出来ない点ですかね、赤口が全体効果系でない限りは。ただ「集まった人材を能力者に仕立て上げた」はありそうな気がしますね〜。

さぼてんさぼてん 2014/05/01 17:26 なるほどーおもしろいー
自分も勝手な想像を......根拠は薄いですが
追っかけリーチは八尺様からの連想、どこまでも相手を追いかける
裸単機は泣いて(鳴く)泣いて泣いて、最終的に一人ぼっち(単機待ち)誰かを待ち続けるような八尺様を連想させたかったんじゃないのかなーって

製作側が山女と八尺様のイメージを混在させたという想像です

hannoverhannover 2014/05/04 10:22 >さぼてんさん

確かに姉帯さんは泣いている描写が多いですしね。その可能性もあってもおかしくはないと思います。

かねなりかねなり 2014/09/05 02:03 初めまして。宮守女子と遠野物語に関する考察、大変楽しく読ませていただいております。
本当に素晴らしいの一言です。

既にご承知かもしれませんが、
豊音さんの出身についての部分で気になる点がありましたので私なりに書かせていただきます。
五月雨式で、まとまっていない文で申し訳ありません。
拾って読んでいただけると幸いです。

まず、全国編第1話のアニメ名シーンで気になっている所ですが、

1。豊音さんが乗った電車が、めがね橋を通過
2。宮守女子の4人が左手から右手に通過していく電車を見る
3。宮守女子の4人が階段をあがる
4。そして4人が、駅を背中にした豊音さんの左手方向から向かってくる(めがね橋を背中に走ってます)

これらをみると、豊音さんは、遠野方面から花巻行の電車に乗って来ている事がわかります。
補足として全国編10話でも、豊音さん視点で電車の右手側窓から、4人が歩く姿をみています。
つまり、モデルとなっている遠野高校情報ビジネス校の位置とは(めがね橋を挟んで)逆側から4人は駅に向かっています。

ここから推論とモヤモヤが増幅しますが、豊音さんの自己紹介で「岩手からきました・・」という台詞。
で、岩手がついている釜石線の駅名は2つあって、遠野駅方面に「岩手二日町」「岩手上郷」があります。
「岩手県」ではなく「岩手」と言っているのも、ちょっと気になっています。。

ただ、小さい駅ですと「例の最終バスに・・」で19時を超える路線は皆無、
この2つの駅もマッチしなさそうです。(遠野駅ですら19時を超えるとありませんので・・・)

もう一つ、岩手上郷駅についてですが気になる点があります。

この駅の目の前が、遠野物語で随所にでてくる六神牛山、駅から徒歩でもいける距離のようですが、
六神石神社が登山口で出迎えます。山女との関わりは残念ながらなさそうですが、どうでしょう。。

岩手上郷駅の愛称が「鹿踊り」と付けられていましたので、六神石神社に関わる鹿踊りを動画でみると
残念ながら六曜ではなく、九曜に近い紋様ですが(ただ九曜でもなさそうですが)
着物にデザインされているのがわかります。何かありそうですし、関係ないかもしれません。
無形文化財に秘められた六曜に関する何かがあるかもと期待していますが、発見できませんでした。

色々なホームページに「姉帯地区」の話はでているのですが、
前半に書かせていただいたシーンに、どうしてもマッチしない気が拭えず、
咲素人ながらも、色々と書かせていただきました。。

末筆ながら、今後の、更なる調査と更新を楽しみにしております。

hannoverhannover 2014/09/06 11:54 >かねなりさん

コメントありがとうございます。

姉帯さんの乗っている電車が遠野から花巻行の電車である事は姉帯さんが姉帯地区出身である事との矛盾点として確かにたまに指摘される所ですね。

そもそも姉帯さんが姉帯出身であるという根拠はその名字の為なのであって、それならばシロは小瀬川地区出身で塞さんも臼沢出身なのかという話になってしまうので僕自身も姉帯さんが姉帯地区出身という説にはそれ程納得している訳ではないです。

岩手県ではなく岩手と言っている所から岩手という名前がつく駅名が最寄り駅なのではないかという推測は面白いですね。
六角牛山には山女のお話はないのかもしれませんが山の女神のお話は遠野物語にもあるのでそこからまた何か結び付けられるかもしれませんね。

姉帯さんについては未だに分からない事だらけですのでまたいつでも情報や考察お待ちしてます。

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