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2015-01-14

永水の六女仙の元ネタである『霧島山幽境真語』のご紹介

遅ればせながら皆さまあけましておめでとうございます。昨年の途中からめっきりブログの更新頻度も落ちてしまいましたが、今年もこんな感じにたまーにブログ更新していくんじゃないかと思うのでよろしくお願いいたします。

立先生の日記が更新されて新たな設定が幾つか明らかになりましたね。興味深い点はいくつもあるのですが、やはりその中でも永水に関する設定はとても衝撃的なものでした。永水に関する設定で重要なポイントは

  1. 霧島神境と神境の海はこの世界とは異なった特別な場所
  2. 神境には色々な山から辿り着く事が出来るけど入口の山と別の山へと出る事は出来ない

の二点になりますが、この内の1つ目のポイントである霧島神境が通常の世界とは異なった特別な場所であるという点については、作中にも出てくる「六女仙」というキーワードの元ネタである『霧島山幽境真語』を読んでみる事で多少なりともヒントが得られるのではないかと思うので、その原文を簡単に紹介しようと思います。
内容については既に簡単にジャファーさんが紹介してますけど、宮守の『遠野物語』と違ってこっちは滅多に読む人いないだろうし近代デジタルライブラリーはすごい読みづらいしって事で。
なお、原文の現代語訳というか解説っぽいものも一応書いてますけど自分の古文レベルは高校卒業して以降ずっと錆びついたままだったので間違えてる箇所が幾つもあると思います。もし何かしらのミスに気付いたら指摘してくれるとありがたいです。

『霧島山幽境真語』は江戸末期に霧島山の女仙たちの元へ訪れたという善五郎の体験談を八田知紀が聞き取りしてまとめた一種のフィールドワークのようなものとなっています。
八田知紀は著名な国学者である平田篤胤に頼まれてこの聞き取りを行ったのですが、彼は何十年も前に善五郎の話を風の噂で耳にして詳しい内容を知る事をずっと熱望していて、遂にこの『霧島山幽境真語』が篤胤の元へ届けられた時にはこの本を神棚に祀るぐらい大喜びしています。
何故、彼がそんなにこのお話を聞きたがっていたのかはまた別の機会に語るとしてその平田篤胤の序文の後に霧島山幽境真語』の本文が始まります。

拾六歳になりし時獨り明礬山を夜あるきしけるに身のたけ七尺ばかりなる山伏法師の如きもの前をさへぎりてたてり
善五郎云そこもとはなにものそたとひ變化のものなりとも我をばよも喰ふことはえあらじとて打まもり居たれば即かきけちて失ぬ
其ののちのちも同じさまにものせしこと三年の間に六たびまでありけるを人にもらすべき心露おこらざりしとなり


これは六女仙たちと出会う前のお話ですが、善五郎が山の中を一人歩いていたら目の前をいきなり身長が七尺もあるかと思われる山伏のような異形のものが目の前に現れるという事が三年間に六回もあったそうです。一尺は大体30cmですから2mを優に超える大男ですね。姉帯さんより大きい。
けれど、こんな大男がいきなり目の前に現れたというのに「まぁ、これがどんな妖怪であったとしても流石に自分を取って食べてしまう事はないだろう」と考えて逃げる事もせずにその山伏をただ見つめていただけでなく、その出来事を誰にも語る事のなかったという善五郎はかなりの大物ですね…。六度も目の前に現れたとか、この山伏は霧島山に連れて行く男を見極めるテストでもしていたのでしょうか。もし善五郎がこの山伏から逃げ出したりこの出来事を誰かに話していたとしたら、その後彼は霧島神境を訪れる事は出来なかったのかもしれません。

かくあやしき事六度ありてそれよりいくほどもあらぬに夏のよの暁がた端ちかく居ねふりてありけるを外より善五郎が名をよぶものありけり…(中略)…
五十ばかりの男我は山神の御使なりそこを召すべきことありて迎につかはし給へればとく我しりへに付て來るべしといふままに從ひて出行ほど白晝のやうにて大路ありけり
一町もゆかぬやうにて大門のあるを入もてゆけば檜皮ふきなる家のいと清くひろなるに十七八ばかりの女六人あり
いづれか主なりとも見分かたくみな髪ながくかき埀りきよらにそうぞきたるがあひ迎へたり


その後のある夏の明け方頃、善五郎は山の神の使いを名乗る男に連れられて霧島神境を訪れる事となります。神境の館の中には17,8歳ほどの髪の長く美しい女性たち、六女仙が出迎えてくれました。年齢が17、8歳ほどという事はちょうど霞さんたちと同じ年齢ですよね。
また、六女仙の描写については他にも「かほかたちのうつくしきこといはんかたなく世にあるたぐひにあらず」とも書かれているように全員がみなとても美しい女性であるという事も同様です。
他にも六人の中で誰が主人なのかはわからなかったと書かれてますが、これは姫様が六女仙を従えるという永水の図式にも当てはまりますね。
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また明け方のはずなのに外は昼間のように明るかったり100メートルほど歩いただけでいきなり目の前に大きな門が現われたりと、『霧島山幽境真語』の中で神境は明らかに私たちがいる世界とは異なった特別な場所として描かれています。
実はこの後も善五郎は何度も神境を訪れるんですが毎回同じ場所から神境を訪れている訳ではなく神境から二十里も離れた善五郎の故郷からも一晩のうちに神境との間を往復する事が出来たそうです(実家以外の場所からは神境に行く事は出来なかったみたいですが)。永水の場合は世界各地の山から神境へと入る事が出来るみたいですが、このお話では特に山が重要なポイントとなる事はありません。ただ、霧島山に限らない色々な場所から神境を訪れる事が出来るという点は一致していますね。
また神境を訪れる善五郎は他の人からどう見えていたのかという事なんですが

さて行んとする前かたは眼色かはりよろづ常やうならぬことのあるを人々も目につけは出行あとをとめて試るものもありけれど
一町ばかりゆくとみゆるほど影もなくなりしとぞ(ゆかむする前かたのことみつからはなにの覚えもなしとぞ)


このように善五郎さん、自分では何も覚えていないそうなんですが明らかにワープしちゃってます。善五郎以外にも仙境を訪れたという人のお話は江戸末期から明治にかけて幾つかあるんですが、大体において他の人が近くにいたとしてもいきなり目の前から消えてしまうみたいですね。この辺りも永水の神境が特別な場所であるという事にも繋がりますし、またはっちゃんがワープして試合会場に現われた事などにも通じるかと思います。
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後はこれも既にジャファーさんが言及してますが本文に登場するお菓子の描写について幾つか。

茶と菓子を出してあしらひ給へり(のちのちのたびにもかならず茶と菓子とのみなり)


神境では必ずお茶とお菓子のみで普通の食事が出される事は一度もなかったそうです。ここら辺は控え室で天ぷらそばを食べていた永水とは異なりますね。あえて言うならいつも黒糖を食べてるはるるが関係あるかな?
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また善五郎さんは色々なモノを仙女たちから頂いていたみたいでその中にはたくさんの薬もありました。その薬もまた「其くすりは白砂糖と真珠丸のごときもの」で「味ひ甘し」と書かれており、お菓子の一種が薬である事が窺えます。
つまり、はるるは黒糖ばっかり食べてるけどあれは本当は薬の一種でとても身体にいいものだから何の問題ない訳ですね!
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ちなみに善五郎さん、仙女から頂いたこの薬やお金なんかはみんな他人に分け与えてしまって八田知紀が訪れた時には全く手元に残っていない状態だったそうです。つくづく大物ですね、善五郎さん。この善五郎の無欲さやお話の中で描かれる神境の館の描写はマヨヒガとかぶる点も多々あって永水と宮守の繋がりを考える上では気になる点ですね。

とまぁ、こんな感じで咲の本編や今回立先生の日記で明かされた永水の設定を考える上で参考になりそうな箇所をいくつか紹介してみました。もし全文に興味がある方は国立国会図書館デジタルコレクション - 本朝神仙記伝. 下之巻や平田篤胤全集などに収録されているはずなので読んでみてはいかがでしょうか。


ところで、『霧島山幽境真語』のお話は神境を訪れた善五郎に対して六女仙たちが親子の縁を切って神境に永遠に留まるよう求めるのに対して、善五郎はその求めに応じる事なく元の世界に戻った為にその後は神境へ決して訪れる事は出来なくなった、というラストで締めくくられます。仙女たちとのハーレムエンドを拒否して慎ましやかな一生を送った善五郎さんってほんっっとうに大物ですよね。
みなさんは永水のメンバーと一生一緒に暮らせる代わりにこの世界に二度と戻る事が出来ないと言われたらどのように答えるでしょうか?

ジャファージャファー 2015/01/14 19:01 隠れ里関係だと竜宮も水のあるところなら山の中であっても入り口があったりしますが、霧島神境もそんな感じっぽいですね。全ての霊峰は霧島神境に通じるんでしょうか。

hannoverhannover 2015/01/18 08:54 >ジャファーさん

確かにそんな感じなのかもしれないですね。ただ、しばらくは永水関連の考察の記事を書いていくつもりなんですけど、そこでは隠れ里とかではなく篤胤が探し求めた異界の話について書いていこうかなと思います。まだ自分も調べ途中で何が何やら全然わかっていないんですが。

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