半坪ビオトープの日記

ジンチョウゲ(沈丁花)

あちこちの庭先でジンチョウゲ沈丁花)の花が特有の甘い香りを漂わせるようになって久しいが、まだ元気よく咲いている。
葉は厚い革質で光沢があり互生する。3月から4月、枝先に香りのよい花を10〜20個頭状につける。花弁はなく、萼は筒型で先が4裂して花弁のように見える。外側は紅紫色で内側は白色。雌雄異株だが、日本では雄株が圧倒的に多い。まれに赤い果実をつけるが有毒である。
中国原産で、日本には根を薬用にするために室町時代に渡来した。寒さに弱いので東北南部以西に植えられている。高さ1.5mほどになる常緑低木。香りが高く遠く千里に及ぶとして千里香の名もある。別名にチョウジグサ、ハナゴショウ、リンチョウがある。漢名は瑞香、沈丁香。和名は花の香りをジンコウ(沈香)とチョウジ(丁字)の香りにたとえたもの。
ジンチョウゲジンチョウゲ属で、学名は Daphne odora といい、花の白いシロバナジンチョウゲ(cv.Alba)や、葉の淵に白い覆輪が入るフクリンジンチョウゲ(cv.Marginata)などの園芸種がある。この写真がそのフクリンジンチョウゲの花であり、葉に特徴がある。
外国種はジンチョウゲ属の属名であるダフネ(Daphne=ギリシャ神話の女神の名)と総称される。太陽神アポロンはキューピットに愛の矢を射られ、最初に出会った森のニンフ、ダフネに恋をし追い回す。 ダフネは驚いて逃げ回り、ゼウスに助けを求める。ゼウスはゲッケイジュ(月桂樹)に姿を変えて助けた。アポロンは嘆いて月桂樹を神木とし、その樹下で竪琴を弾くようになった。その後、音楽や詩、物語に優れた芸術家にこの枝葉で作った月桂冠があたえられるようになった、という。
ゲッケイジュの学名は Laurus nobilis (ラウルス=ローレル)であり、地中海原産である。
では、なぜジンチョウゲ属(ヨーロッパではダフネ属という)にダフネの名が付いたかといえば、古代ギリシャではゲッケイジュとジンチョウゲが同じ仲間と見なされていたと考えたい。ところがどう見ても似ていない。そこで、スイスに見られるダフネ属5種とゲッケイジュを比較すると次のことが分かった。日本で見かけるジンチョウゲとそっくりに外側は紅紫色で内側は白色の花が1種(striata) 、内側も外側も濃ピンクの花が2種(mezereum、cneorum) 、葉が緑灰色で細かい毛が密生して花の白いものが1種(alpina) 、そして最後にゲッケイジュの仲間と見なしたであろう花を見つけた。その名も Daphne laureola という。つまり、ダフネ属のローレルである。シロバナジンチョウゲととてもよく似ている。これでゲッケイジュがいつの間にかジンチョウゲに混同されるようになったのではなく、古代よりジンチョウゲとゲッケイジュ(ローレル)は同じ仲間とされていたが、属や種を厳密に区別する近代になって、違う属だと認識されたのだろうと想定できる。