半坪ビオトープの日記

谷川岳、天神平


梅雨入り直前の6月上旬に、谷川岳を眺めに出かけた。山頂まで登りたいのは山々だが、筋力低下と膝の故障のため、天神尾根を途中まで花を見ながら歩いてみた。天神平(1319m)にはロープウェイで上り、そこからさらに天神峠(1502m)までリフトを使った。天神平は一点の雲もないほど晴れ渡っていて、爽やかな空気もかなり温まっていた。

リフト乗り場から右手(北西)を見ると、谷川岳(1977m)と西黒尾根がわずかに眺められた。山頂付近にはまだ雪が残っていた。

西黒尾根のさらに右側(北)には朝日岳(1945m)が堂々と聳えていた。

リフトから下を見ていたら、「ナエバキスミレ」の標識と花を見つけ、慌てて写真を撮った。ナエバキスミレ(Viola brevistipulata var. kishidai)は、オオバキスミレが小型化した変種で、上越国境付近の亜高山帯に自生する。

天神峠に着くと谷川岳が大きな姿を現した。ここから見ると一番高く見えるのはトマの耳(1963m)で、その右奥のピークがオキの耳(1977m)であり、この双耳峰が谷川岳と呼ばれる。オキの耳の向こう側に一ノ倉岳(1974m)や茂倉岳(1978m)と続く縦走路が伸びている。

谷川岳の左手には万太郎山(1956m)、仙ノ倉山(2026m)、平標山(1984m)と続く長い縦走路が伸びている。

谷川岳の右手には西黒尾根から湯檜曽川の対岸に朝日岳が聳え、その間の彼方には巻機山や八海山などの越後の山々が見える。

天神峠の草むらには、シラネアオイ(Glaucidium palmatum)の大きな株があった。北海道と本州中部地方以北の山地帯〜亜高山帯の林内のやや湿ったところに生える多年草なので、これは移植されたものと思われる。

天神峠からは天神尾根を20分ほど下っていく。歩き始めてすぐ、タムシバ(Magnolia salicifolia)の真っ白い花が元気よく青空に向かって咲き誇っているのに出会う。花の姿に勢いを感じるのも妙だが、それが醍醐味というものだ。タムシバは本州日本海側に多く分布し、低山〜亜高山帯に生え、高さが5m前後になる落葉小低木。よく似るコブシの花は、花の下に小葉が付くので見分けられる。コブシの方が高くなり、タムシバの方が花が大きく高い山に多い。

尾根を下っていくと小さなアヤメ科の花が咲いていた。ヒメシャガ(Iris gracilipes)だ。和名はシャガより小型で似ているからというが、常緑の葉が厚く、艶があり花が白っぽいシャガとは全く異なると思う。北海道南部から九州北部までの山地のやや乾いた林下に生え、葉は冬に枯れる。

小さな沢筋に沿って下っていったが、やがて右手の視界が開け、天神平が見下ろせた。向かいの山は高倉山(1449m)である。

こちらの黄色が鮮やかな小花は、初夏の山ではよく見かけるキジムシロ属のミツバツチグリ(Potentilla freyniana)。花はキジムシロ(Potentilla sprengeliana)とそっくりだが、ミツバツチグリは小葉が3枚、キジムシロは5〜9枚なので区別できる。

こちらのリンドウの花はタテヤマリンドウ(Gentiana thunbergii var. minor)。よく似るハルリンドウの高山型で、中部地方以北の本州および北海道の亜高山帯〜高山帯に生える。

こちらは春から初夏の山でよく見かけるイワカガミ属の花。イワカガミ属(Schizocodon)にはイワカガミとオオイワカガミ、コイワカガミなどがあるが、よく似ていて見分けがつきにくい。谷川岳でもたくさん咲いているので比較してみよう。