ローマクラブ成長の限界(1972年)、40年後の検証

インターネットで検索するとこんな文章で始まっている。
40年前に提出されて物議を醸した論文−成長の限界(1972年)−の結論:「世界は破滅へのレールを進んでいる」は、近年の研究でやはり正しかったことが検証された。オーストラリアの物理学者グラハム・ターナーは、振り返ってみると、1970年代において最も偉大で画期的な学問的業績は「成長の限界」であると述べている。

この「成長と限界」という論文はマサチューセッツ工科大学の複数の研究者が、世界的なシンクタンクであるローマクラブのために書いたものであり、日本では大来佐武郎氏が監訳をしている。その中で今のやり方のままのシナリオ、すなわち、もし人類が、自然が与えることができる量以上のものを消費し続けるシナリオで進んでいくとするならば、2030年までに世界的な経済崩壊と人口の急激な減少が起こるかもしれないと予測している。
ターナーは1970年から2000年までの現実のデータと、「成長の限界」の今のやり方のままのシナリオを比較している。そして、現実は「成長の限界」の予言にほぼ沿って進んでいることを見出した。ターナーは次のように言っている。「ここでは警告の半鐘の音が明らかに鳴り響き続けている」、「私たちは持続可能な軌道から外れている」
私は成長と限界という論文の名前は知っていたが実際に読んだことがなかった。そこに書いてある内容は将にターナーが指摘したように、悪夢のシナリオの軌道を現在の地球が突き進んでいることを再確認した。
それは単純なシナリオで、このまま80億人の人口増加が進めば食料が不足する。食料が不足すれば大規模化や遺伝子組み換え等の技術により食料を増産する。食料を増産すれば大量の石油エネルギー等の天然資源を消費する。天然資源を消費すれば地球温暖化等の環境汚染が拡大する。環境汚染が拡大すれば食料増産のための耕作地と収穫量が減少する。収穫量が減少すれば食料不足になり人口は減少する。この持続可能性の崩壊シナリオが成長の限界の構図なのだ。

この論文の最初のページに書いてあることは「人間の視野」である。世界中のすべての人はそれぞれ注意と行動を必要とする一連の関心事と問題を抱えている。あらゆる人間の関心はどれくらいの地理的広がりを持っているか、またどれくらいの時間的な広がりを持っているかに従ってグラフ上のある点に位置づけることができる。殆どの人々の関心はグラフの左下方に集中している。

私たちの視野がどのようになっているかを時間軸と空間軸のなかに落としてみた。選挙の争点になっている殆どの項目が左下方になっていることに気が付く。
皆さんも是非、自分で自分の視野表を作ってみたらどうか。私たちは成長の限界を観念的には理解しているが、実際の行動には移せないでいる。成長の限界を知りながら選挙では目先の経済成長を優先させる。ターナーの言うとおり、私たちは間違いなく持続可能な軌道から外れている。