隠居の独り言 93

日本人の国語力が落ちている。もう何年も前から指摘され、憂慮されているが一向に改善されない。このほど文化庁で日本人の国語の意識の現状を調査したが、例えば学生に手紙を書く意識を問うてもあやふやで大人になると皆無で今やメールで簡単言葉で情報交換する現状になっている。メールは便利な反面、心のこもった情的な信頼に欠ける。最近の若者は文字を書かなくなった。若い人だけでなく年配者の人も含めて手紙や葉書を書かなくなっている。文字で書いた文章は一定の空間の中で静止した形で存在するから前後の文脈も捉えやすいし一字一字をじっくり見つめることもできる。書くという行為は相手に自分の気持ちを伝えるために文章を考え意思を込める。手紙には時候の挨拶など日本の伝統的な書式も添えて文章を作るものだが、その習慣も美しさも消えて久しい。それは国語を子供の頃にきちんと身につける重要性を親も学校も忘れている。現代のメール言葉の貧弱さよ。言葉を略すればいいというものでない。それに外来語や外国語のカタカナ語が、以前より一般化しているけれど、年寄りには意味不明で困ることも多いのを知って欲しい。イノベーション、コンセプト、モチベーション、フォーラム・これらの意味を解する年寄りはどれほどいるだろうか。言葉の貧弱の要因は若い連中はケイタイに夢中になり年寄りはテレビに噛り付いている。ケイタイもテレビも無かった昔は人に気持ちを伝えるのは言葉のみだった。それが国語力を磨くことであり家庭も含めて社会全体が言葉に満ち溢れていた。夫婦も恋人も「間」の持てないカップルが多いと聞くが言葉の紡ぎ方を勉強してほしい。国語力の衰退を加速させるよう小学校から英語教育を取り入れるのには戸惑いを感じる。大部分の日本人は日本で生まれ、日本で暮らし、日本で生涯を終えていく。英語を必要とする人達が習えばいいのであって英語を必須科目にする発想が解せない。国語に正しい言葉や様々な使い方に多くの時間を割いたほうが人間関係が豊かなものになる。読書の秋、国語力を身につけよう。