古本屋Harmasの雑記

2016-02-18

「翼の王国」 ANA

f:id:harmas:20160218000847j:image:medium:rightANAの機内誌「翼の王国」に載っていた佐伯誠さんの文章が好きだった。サン=テグジュペリジュール・ベルヌ、ヘンリー・ソローエドワード・ホッパー、ピーター・ビアードなどをキーワードに詩的に躍動感ある言葉を綴っていく様が魅力的だった。

ある文章の一節から


アライグマが窓の戸を叩く夜に、詩人は、こんなふうに書きつける。「まことに最良のことはすべて夜におこる」
そして、やがて力つきて、くすぶる残り火になって眠り込む。

きまぐれに訪れる若い娘に、独居の詩人は、こんなふうに語りかける。「ぼくは老いているから、待つのは平気だ」
ほんとうに裸になるには、齢をかさねなけりゃいけない。ほんとうにやさしくなるのにも。

ダイナーにいた少女を描くのに、フェルメールの手をわずらわせることはない。ホッパーが町ごと描いてくれるだろう。
あるいは、ボブ・ディランが唄ってくれる。名もない、通りすぎる、北国の少女を。


ミズナラの木には、その幹の中を水が流れているんだ。そう、つぶやいたので、「エ?」と聞き返した。
分厚いネル地のシャツの背は、振り返ることをしなかった。ハンティング・ブーツの下で、枯れた小枝が、ミシッと音を立てて折れた。


隣の煙突からケムリが見えたら、そのときが引越しのとき。
フロンティアの住民たちは、空間の広さを神のように敬った。汝の隣人、それは隔たったところにいる、抽象的な隣人のことだった。彼らは、ロンサムであることを固いパンのように噛みしめた。

クーパーズ・タウンは、ベースボールの聖地というだけではない。
モヒカン族に属するウイルダネスだった。そこでは、まず銃が。それから、トリネコのバットが。戦いの叫びは消え、球場の歓声も消え、ひっそりと静まり返っている。


良い感じでしょ。
あっそうそう、佐伯誠さん、例えるならスナフキンかな。会ったことないけど。