二人では行けぬ彼岸や秋の虹 はるみ

最近玄関に小さな鏡をかけた。訳は、ある日のこと、夫が「行ってきます」私が「行ってらっしゃい」とやり取りの後、夫をふりかえると、何と夫の鼻にテープが付いている。鼻腔拡張テープというもの。安眠のためのテープらしい。「え、そのまま行くの?」「そのままって?」と、夫は気付かぬ様子である。
私の人生の予定では、我が家では私が一足さきに彼の世に行くことになっている。もし、私なき後、夫が鼻テープを付けて外出したら、たいへんである。ひと
人なかで、クスクスと笑いものになるかと思えば、彼の世にいる私は安眠すら出来ない。そこで、鏡を掛けた次第。