Hatena::ブログ(Diary)

日記

2018-06-13


 7時過ぎに起きて、ジョギングに出る。不忍池を眺めて引き返す。帰りに「大平製パン」のたまごドッグと、「やなか珈琲」で今週のおすすめの豆を買い求める。午前中はアパートの目の前にある小さな公園に出かけ、『不忍界隈』の原稿に赤を入れてゆく。太陽にジリジリ焼かれる。アパートに戻り、最後のひと段落を書き終えたところで、ふと昨晩の知人の言葉が思い出され、「橋本節ってどういうこと」とLINEで問いただす。「ドライブインでやってたことを近所でやってるんだなって感じで、新鮮味はないじゃん」と知人が言うので、喧嘩になる。新鮮味もくそもあるか、今は毎回違うことをやるよりも、自分のスタイルを知ってもらう時期だろと反論するが、暗くなる。

 昼、書き終えた原稿を持って、取材させてもらったお店へ。修正したほうがいい場所があれば修正しますのでと伝えて、読んでおいてもらえるようお願いする。昼、焼きそばを食べてアパートを出る。ロケをしている芸人さんを見かけ、心の中では小躍りしたい気持ちに駆られつつ、ぶすっとした表情ですれ違う。谷中ぎんざの酒屋で生ビールを飲みながら、「ドライブイン」展に向けてキャプションを考える。2杯ほど飲んだところでアパートに戻り、考えたテキストをメールで送付。夕方、新宿思い出横丁「T」。先日渡した個展のチラシを貼ってくださっていて嬉しくなる。チューハイと鰯の梅煮をいただきながら、「待つ」と「酒ぎらい」を読んだ。

 19時、三鷹駅でA・Iさんと待ち合わせ。今日飲もうと約束していたところ、「橋本さんが良ければなんだけど、明日、もし良ければ、三鷹に行かない?」と誘われていた。すぐに「太宰ですか?」と返信し、三鷹で待ち合わせる約束をしていたのだ。てっきり玉川上水の近くで飲むのかと思って缶ビール赤ワインを買っておいたのだが、そうではなく、まずはお墓を目指すことになる。お供えの花がなく、アスファルトの隙間から顔を出していた小花をいくつか摘んだ。大きな通りに行き当たると、スーパーマーケットがあり、そこに百合の花が並んでいたので、お刺身やお菓子と一緒に買い求める。お墓についてみると、お参りできるのは日没時刻までで、門は閉ざされていた。

 そこから玉川上水を目指して歩いていると、「三ちゃん」という気になる外観の前を通り過ぎた。さっきの店、気になりますね。ラーメン屋だけど、何でも屋って貼り紙もありましたよ。ハートランドの瓶ビールを出してる店だったら立ち寄りたかったですね。えっ、ハートランドって書いてありましたよ?――そこで踵を返し、「三ちゃん」に立ち寄る。Aさんはラーメンを、僕は餃子ハートランドを注文する。空き瓶を花瓶にしたかったのだ。会計を済ませて、玉川上水。ここが入水自殺した人がいるなんて想像もつかないほど静かだ。Googleマップには発見の地が記されているけれど、特に碑などは建てられていないようだ。

 川べりを歩いているうちに、そこはもう井の頭公園であるらしかった。広いトラックがあり、ベンチがあるので、そこに座って飲み始める。そのだだっ広さに、武蔵野という言葉がどうしても思い浮かんでくる。広々とした公園は他の地域にもある。前住んでいた高田馬場であれば戸山公園があった。ただ、夜の戸山公園はあちこちで酒を飲んでいる人が目立っていた。でも、ここではほぼ全員がハイペースで走り、体を鍛えている。Aさんはなぜか禁酒を命じられているらしく、コーヒー牛乳を飲んでいた。まあ相手が飲まずとも構わないだろうと思っていたのだが、今振り返ってみるととても物足りない気持ちになった。僕にとってAさんは飲み友達になっていたので、僕ひとりだけ飲み続けるのはつまらなかった。赤ワインのボトルは半分も飲み干せなかった。この人と話すことはもう出来ないのではないかという気持ちにさえなったが、そのことは伝えなかった。身を投げた場所に花を備えて、総武線に揺られて帰途についた。

 と、ここまでの日記を書き終えたのは6月15日のことだ。今は6月19日で、飛行機に乗って空を飛んでいる。これから1週間は取材することと書くことに追われて過ごすので、6月13日から18日までの日記は書けそうにない。「この人と話すことはもうできないのではないか」と書いたけれど、その3日後、つまり昨日の晩、荻窪トークイベントをやったときにAさんは会場を訪れてくれて、そこで話をした。「そうやって『もう話せないのでは』とか、すぐそういう風に考えるからあかんのやで。そうやって言葉にすることで、ほんまに会われへんようになるねんから」とAさんに怒られたけれど、それは本当にその通りだと思う。どうしても閉じるほう、閉じるほうに考えてしまう。

この飛行機が向かっているのは沖縄だ。2013年、『cocoon』の舞台化に向けて沖縄を旅する皆に同行してからというもの、6月下旬には毎年沖縄を訪れている。今年は一週間、牧志公設市場近くのゲストハウスに滞在することに決めた。来年には建て替え工事が始まってしまうので、今年は市場の風景を記述して過ごそうと思った。その滞在記はここではなく、noteに書く。https://note.mu/hstm1982

2018-06-12

 7時過ぎに起きて、ジョギングに出る。不忍池をぐるり。シャワーを浴びて、ラジオをつけると、「米朝首脳会談、まもなくです」と別所哲也が熱っぽく語っている。サッカーの試合でも始まるみたいだ。午前中は『月刊ドライブイン』(12)の原稿をもう一度読み返す。あいまにテレビをつけてみると、二人が握手する姿が繰り返し映し出されている。若い男は南北首脳会談とは対照的な様子で、緊張している。握手を交わしたあと、年長の男は何かいやなものに触れたような表情を浮かべたように見える。正午までに入稿作業を終える。これですべて終わった。

 自転車本郷郵便局に出て、郵便物を発送したのち、昼休み中のA・Tさんと待ち合わせ。「万定」に入ってみると、他に誰もお客さんがいなくて驚く。ここと「ルオー」が東大前の二代カレー屋さんだと思っていたのだが、最近は変わってきたのか。カレーライスを注文してふと壁を見ると、「きたなトラン」の賞状がある。番組の影響でお客さんがどっと押し寄せて、普段通っていたお客さんが離れてしまったのだろうか。Aさんが最近広島に出張した話を聞いたり、『不忍界隈』の話をしたり。カレーを食べ終えると、せっかくだからと生ジュースも飲んだ。今度酒を飲みに行きましょうと約束をして、別れる。

 午後も引き続き原稿を書いた。原稿を考えていてストレスが溜まっていたのか、知人が買っていたかっぱえびせんを一気食いしてしまう。夕方になって、締めのひと段落をのぞいて書き終える。気晴らしに谷中ぎんざに出て、酒屋で生ビールを2杯飲んだ。アパートに戻ると、キャベツともやしのナンプラー炒めと鯖のみりん干しを焼き、20時半に帰宅した知人と一緒に食す。書き終えたばかりの『不忍界隈』の知人に読ませる。感想を尋ねると「橋本節って感じやった」と知人が言う。

 23時過ぎ、『群像』に掲載されている川上未映子さんと穂村弘さんの対談を熟読する。ふたりの対談を読みながら、どうして僕は事実の切れ端にこだわってしまうのだろうかと考える。ふたりのようにフィクションに託すのでなく、どうしてノンフィクションなのだろう。そこには一つ、自分も含めた誰かの死を決定的なこととは考えられないという部分がある気がする。この日記を書いている今、「手紙」展の会場にいる。写真に収められた人がもし死んでしまったとしても、その死そのものよりも、こうして永遠に留まり続ける記憶の切れ端を、いつまでも思い出して過ごすばかりで、それがフィクションという形を伴うことはないように思える。その差は一体何によるものなのだろう?

2018-06-11

 7時過ぎに起きる。雨だ。まずはコーヒーを淹れる。お豆腐屋さんで木綿豆腐を買ってきて、豆腐とネギの味噌汁を作る。朝ごはんを食べたのち、久しぶりに知人を送り出し、『月刊ドライブイン』の原稿を推敲。11時半に原稿が完成し、編集後記を書く。レトロ印刷の締め切りは正午で、ものすごく急げば今日の入稿扱いに間に合わせることもできそうだが、ミスが怖いのと、もう一晩寝かせたいので、入稿は見送る。かけこみサービスを利用すれば、来週18日のトークイベントでの先行販売に間に合わせることができるので、とりあえずはホッとした。

 昼、焼きそばを作る。自宅のお昼はいつもパスタを茹でていたが、「焼きそばなら茹でる必要がないじゃないか」と考えた。もう一つ、昨晩眺めていた『バナナマンのせっかくグルメ!!』という番組でお好み焼きが映し出されていて、身体がソースを欲していた。インターネットに頼りきって、「美味しい焼きそば 作り方」で検索した方法で作ってみたのだが、麺がだるだるになってしまった。14時過ぎにアパートを出て、雨の中を歩き、荻窪「Title」。「手紙」展も今日で5日目だ。湿度が高いせいか、壁に貼った手紙が少したわんでいる。物販のリトルプレスたちを綺麗に並べて、椅子に座って音楽をかけ、誰かがやってくるのを待つ。時々一階に降りて本棚を眺めては二階に戻り、『不忍界隈』の原稿を書き、待つ。

 待っているうちに20時になり、店を後にした。5時間滞在してみたけれど、誰もやってこなかった。僕が在廊することで「わあ! 橋本さんに会える!」とやってくる人がいないことくらいわかっている。それでも会期中にアパートで過ごすのは落ち着かなくて、こうして足を運んでしまうのだが、さすがに誰もやってこないとは思っていなかった。ただゼロ人となればもはや清々しく、改めて言葉を書くとは何か、考える。書かれた言葉は永遠にそこにある。僕が死んだあとも残り続ける。今現在読まれることがなくても、いずれ読まれることがある。だから今この瞬間に読まれなかったとしても落胆する必要はないのだ。それに、道ゆく人の手を引いてきて「読んでくれ!」と言ったところで、そこに書かれた言葉がほんとうに読まれることはないだろう。ただそのときがやってくることを信じて待つことしかできないのだ。それはわかっているのだけれども、では、ここにいる私という容れ物はどうしていればいいのだろうと途方に暮れる。

 何度目かに一階に降りたとき、「こういう静かな日もいいですね」と辻山さんは言った。僕に悪いと思ったのか、すぐに「いいってことはないか」と言い直していたけれど、その言葉を帰り道にも反芻する。お店を構えている方の、待つ、ということに対する構えの大きさを痛感させられたような気がする。中央線新宿に出て、思い出横丁の「T」、そして新宿3丁目「F」とハシゴ酒。それぞれのお店に「手紙」展のフライヤーを渡し、南北線で帰途につく。いつもと違う地下鉄だったこともあり、酔っ払った頭では道を把握できず、住宅街をいつまでもぐるぐる歩いた。

2018-06-10

 8時過ぎに起きる。まだ雨は降っていなかった。コーヒーを淹れて、『月刊ドライブイン』の原稿を書く。昼、知人が「ピザを食べたい」と言う。知人が名前を挙げたのはナポリの釜だったが、ナポリの釜だとハーフ&ハーフのようなメニューが存在しないようだ。迷った挙句、ドミノピザクアトロミルフィーユを注文。これまではLサイズを頼んできたけれど、今回はMサイズにした。Lサイズだと、最後の一切れは満腹であるのに押し込む形になっていたけれど、Mサイズだとちょうどいい満腹具合だ。

 午後も引き続き『月刊ドライブイン』の原稿を書く。16時過ぎに脱稿し、プリントアウトして知人に読ませる。そのあいだに『TB』誌から依頼のあった原稿を考えて、完成させて送信。雨の降る中を買い物に出て、ほっけを焼き、「アメトーーク!」を観ながら晩酌を始める。徹子の部屋芸人、面白く観る。『不忍界隈』の原稿の構成を考えたり、『月刊ドライブイン』の原稿を修正したりするが、もうすでに酒がまわってしまっている。

2018-06-09

 8時過ぎに起きて、入念にストレッチをしたのち、ジョギングに出る。明日と明後日は雨で走れなそうだから、今日は長い距離を走ることにする。上野桜木から鶯谷を経由し、浅草を目指す。今日は気温が高く、汗が噴き出してくる。何度もタオルで拭いながら隅田川に出て、しばらく川沿いを下り、蔵前橋で右折。初めて鳥越という住所に足を踏み入れると、今日はお祭りがあるらしく、屋台がいくつも並んでいる。一本入れば「おかず横丁」という路地があり、なかなか楽しそうだ。12キロほど走り、アパートにたどり着く。この倍の距離を走ればハーフマラソンだが、走りきれるものだろうか。

 シャワーを浴びたのち、昨晩のうちに作っておいたコンソメスープを温めて、食パンを焼き、コーヒーを淹れ、知人を起こして朝食をとる。12時過ぎにアパートを出て、荻窪にある本屋「Title」。今日は土曜日だということもあり、きっと誰かきてくれるだろうから、一日在廊することにする。まずは二階に上がってみると、展示を観てくださっている方がいらっしゃる。邪魔をしないように静かに動き、未映子さんが送ってくれた花のスポンジに水を含ませて、芳名帳のそばに「一階のカフェにいます」と書き添えておき、カフェでアイスコーヒーを注文する。今日はほとんど夏のような気候だから、アイスコーヒーがいつにもまして美味しく感じられる。

 2時間ほど経過したところで、再び二階に上がる。ちょうど誰もいなかったので、37通の手紙たちが剥がれないように、1枚ずつぎゅっと壁に押しつける。初日はA・Iさんがギタレレを弾いてくれていたから音があったけれど、今は無音で、そのことがとても寂しいことであるように感じられる。そこで、Aさんがいつだか送ってくれた練習音源をiPhoneから小さな音量で再生し、リピートされるようにしておく。再びカフェに戻り、八丁ブレンド(浅煎り)。2時間ほど経ったところで、今度はTitleブレンド(深煎り)を注文して、ずっと『月刊ドライブイン』の原稿を書いていた。夜になっても原稿を書き終えられず、ハートランドを飲みながら書き続ける。

 20時半になったところで、何冊か本を購入して「Title」をあとにする。土曜日だからきっと誰かきてくれるだろう。そんなことを思っていたけれど、知り合いは誰ひとりやってこなかった。珍しく絶望的な気持ちになる。知人にメールすると、「そんなもん」「人気者やないんやし」とドライな返信が返ってくる。書かれた文章というのは、今現在という時間に読んでもらえなくとも、いつか未来に読んでもらうことができる。そのことには確信を抱いている。でも、こうして展示を行なっているあいだは、そんなふうに安心して過ごすことはできない。

 やるせないので、荻窪駅前の「鳥もと」(2号店)に立ち寄る。チューハイと刺身の盛り合わせ、それにもつ煮込みを注文。小一時間で切り上げて、ハイボールを飲みながら帰途につく。大した量を飲んだわけでもないのに、アパートにたどり着く頃にはへろへろに酔っ払っていた。