美味しんぼ大ヒットの秘密
ビッグコミックスで連載されていた大ヒット漫画『美味しんぼ』(作:雁屋哲、画:花咲アキラ)
第一話に登場する食べものは“豆腐と水”。見た目は同じですが、読者は作者の描写によってリアルな違いを感じという。
雁屋さんは知っているのです。
人の認識というものなんて、実際に感じることよりも、丁寧に描写してやることの方がずっと、それをリアルに感じるということを。
そこでは、水という、「もっとも味に違いのなさそうな物」に対し、「水道水」を「カルキ臭い」と言い、「この辺りは昔は海の底だったから、ほんの少し塩分のまじっている風味を感じた」と「井戸水」を、「カルシウムの味がする」と「鉱泉水」を形容しています。
豆腐においても同様に、風味の描写で違いを形容しているのです。
「美味しんぼ」のエポックメイキングなところは、まさにココなのです。
(中略)
時として、他の人が体験したことを言葉で丁寧に描写して聞かされることの方が、自分が実際に体験して覚えているよりもずっとリアルに感じることがあるということです。
『思わず買ってしまう…マインドコントロール マーケティング! TVショッピングの仕掛け人が明かす9つの心理操作テクニック』より引用
描かれているのは皆同じ“コップに入った水”と“白い四角いお豆腐”なのに、あたかも別のもののように違いを感じていたように思う。
料理をどんなにリアルに描くよりも、具体的な言葉で説明される方が「そうなんだ」とリアルに感じるのかも。『美味しんぼ』をそんな視点で読んだことがなかったのですが、大ヒットの秘密があったんですね。
思わず買ってしまう…マインドコントロール マーケティング! TVショッピングの仕掛け人が明かす9つの心理操作テクニック
著者:星野卓也(シナリオマーケター)
出版:フォレスト出版