ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

医者の手洗い不足

 サイエンティフィック・アメリカンサイトを毎日見ています。そこにあるポッドキャストでは、纏めた記事を1分間の音声で聴く事が出来るからです。スクリプト(台本)がついているので、モーレツな速さのものを聴き取る訓練には持って来いです。科学の話題を取り上げていますが、内容は決してやさしくありません。8月31日放送された中に、「患者の健康をねらったキャンペーンで、医者の手洗いが増えた」といった題のものがあったので、元の論文が読みたくなり、米国の「心理科学誌」サイトを覗いてみたら、要約だけでなく全てが公開されていました。長文ですが自分のテーマとも関わるので、何とか読み終えました。
 ただし英文の中にカイ二乗検定などの結果が出ているので、結構難しいです。http://www.management.wharton.upenn.edu/grant/GrantHofmann_PsychologicalScienceForthcoming.pdf
全体としての理解は今ひとつです。ここしばらくコメントしてくださっているiireiさんに是非ご専門の立場から教えて頂けたらと思っています。
 ペンシルバニア大学のアダムM.グラント博士と、ノースカロライナ大学のデヴィッドA.ホフマン博士が、「自分だけではない:患者に焦点を合わせ、病院関係者に手の衛生への意欲を起こさせる事」といった題で、上記雑誌に長い論文を投稿しました。
 手の衛生が感染や病気の拡大を防ぐのに重要な役割を果たしている事は、1847年以後認識されるようになりました。でも医療従事者たちはそうした忠告を受けているにもかかわらず、実際半分も手洗いを実行しておらず、その改善は難しいのだそうです。つまり彼らは自分の身を守る為、患者との接触で必要に迫られた時だけ手を洗っているようです。その背景には彼らが自己の身体の免疫力を過信している事が挙げられています。「私は医者だから守られている」とか「魔法の白衣を着ているから、侵襲など受けるはずがない」といった自信過剰な意識を持っています。仮に病気になっても、手の衛生を怠ったからかどうか分からないという気でいます。だからその結果、医者も手洗いしましょうと強調するような通達があっても、聴く耳を持たないわけです。
 そこで上記二人の博士たちは、もしその通達が自分たちの事より、弱い患者の健康の為だと強調するような内容になったらどうだろうかと考え、仮説を立てて見ました。そして検証に着手したわけですが、テスト前には医療従事者たちに気付かれないようにとかいろいろ気を使いました。患者との接触前とかその後の結果をまとめ、上記カイ二乗検定などにかけて計算してみました。するとテスト前と後では有意な差が出たというわけです。そこには二項ロジスティック回帰分析といった、これまた難しいものも載っています。
 手洗い固守という観察の全期間はせいぜい2週間ほどでしたが、それが1年以上も続けば100以上の感染を防ぎ、30万ドル以上の節約にもなるという利点が見込まれます。医療従事者たちは手洗いがまずは患者の為という事を強調しておけば、毎日の健康を守る行動をもっととるようになるだろうと二人は見ています。安全の為の彼らの行動は、必ずしも「自分だけの為ではない」わけです。
 聖書では逆に自分たちの事を差し置いて、民衆に手洗いを強制するパリサイ人や律法学者たちが登場します。彼らは救い主イエス・キリストの弟子たちの行動を見てこう非難しています。
 「あなたの弟子たちは、なぜ昔の先祖たちの言い伝えを犯すのですか。パンを食べるときに手を洗っていないではありませんか」(マタイ15:2)。
 しかしイエスは彼らが手洗いを厳格に実行していると誇りながら、其の実悪い考えで心の中が汚れている事を指摘されました。そしてこう言われました。
 「これらは、人を汚すものです。しかし、洗わない手で食べることは人を汚しません」(同15:20)。
 実際手の衛生は聖書時代には問題にもならなかったでしょう。しかしそれが現在必須になったのは、技術者たち等が医療や経済的活動で勝手に神の領域を犯し、手につくと危ない耐性菌(MRSA等々)などをはびこらせた結果と言えます。