ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

鎌田浩毅著『火山と地震の国に暮らす』を読んで学んだ事

 東日本大震災が起きてから、いろいろな分野の学者が主として原発反対の立場から本を書いて出版しています。
 この鎌田京大教授の本もそうで、岩波書店から7月に出版されました。
 興味ある分野なので早速図書館で借りて読みました。特に大震災でこの本から新たな知見が得られないかと期待しての事でした。
 結果的には鎌田教授はあまり地震原発の事に触れていませんでした。なぜか?教授が「…地震をはじめとする地球科学に関しても専門なので、かなり深いところまで理解することができる。しかし、原子力工学に関しては非専門家なので、ほとんど素人と同じ状態である…わたし自身が原子力工学に関して基礎的な知識がないことに愕然とした。自分の身を自分で守る際に、すべての人が原子力放射能に関する最も基礎的な知識をもっていなければならないことを痛感したのである」と言っている通りです。だから「科学の専門家は…専門家と非専門家との間のギャップを埋めるために努力をしなければならない」のです。
 鎌田教授は、科学のそれぞれの専門家たちがあまりに細分化された研究分野の事しか知らず、しかもその分野の研究内容でさえ難解な書き方をしているので(岩波の月刊誌『科学』に投稿している学者たちは特にそう)、これからは特に素人に対して良くわかる、良く伝わるというプレゼンテーション(約してプレゼン=人前で発表すること)の仕方に習熟しなければならない、という事を力説しています。そして鎌田教授自身がこれまで書かれた本でその模範を示している為、私がこれまでご専門の火山関係で読んだ本は、実にわかりやすかったです。
 従ってこの本でも火山の事に相当ページを割いているのは当然ですが、それ以外に上記の事柄に関するノウハウなどにも力を入れて書いています。
 確かにその道の専門家は研究内容に対して矜持を持っているので、言葉を分かりやすく言い換え、素人に噛み砕いて説明しようとすると、かえって同僚たちに馬鹿にされるという危惧を抱いています。でもそれではいけないと鎌田教授は諌めています。
 かと言って40歳位までの研究者は基礎的な研究では多忙なので、プレゼンの仕方の達人にはなかなかなれません。ですから知らない人に手を差し伸べて必要な情報を伝えるのは、それ以上の歳の「脂の乗りきった現役の研究者が、本腰を入れて取り組むべき課題となるわけです。それを実践したのが鎌田教授自身であり、科学雑誌ニュートン』で有名な竹内均氏等なのです。
 今回の大震災でも原発関係の事柄は非常に複雑で、素人には相当難しいのですが、それを分かりやすく伝えたのが、このブログでも触れた故高木仁三郎氏、京大助教小出裕章氏等々です。私など素人はそれでも繰り返し読まないと理解出来ませんが、初歩的な知識はある程度身についたと思っています。原発推進の専門家たちに対してただ黙しているだけでは大変な事になる、というのが今回の災害の大きな教訓ではなかったでしょうか。
 翻って聖書の救い主イエス・キリストも、全知全能でありながら、群衆に対して分かりやすく説教されたプレゼンの卓越者でした。
 「イエスは、そこを立って、ユダヤ地方とヨルダンの向こうに行かれた。すると、群衆がまたみもとに集まって来たので、またいつものように彼らを教えられた」(マルコ10:1)。
 逆にイエスをナザレの一介の大工の息子と軽蔑する律法の専門家たちは、「聞く耳」を持ちませんでしたし、自己の愚かさにも気付きませんでした。