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ハテヘイの日記

2013-02-26

『荒れ野の40年―ヴァイツゼッカー大統領演説』を読んで

18:52

 「私は、四十年の間、あなたがたに荒野を行かせたが、あなたがたが身に着けている着物はすり切れず、その足のくつもすり切れなかった」(申命29:5)。

 上記の本ですが、cangael さんが紹介して下さり(http://d.hatena.ne.jp/cangael/20130208/1360279318)、図書館で借りて読みました。その主要な箇所はブログに書き出しておられるので、私は別の観点から、この演説の意義を考えてみたいと思います。

f:id:hatehei666:20130213191259j:image:left写真はヴァイツゼッカー氏。

 ヴァイツゼッカー氏はネットの情報によりますと、1920年ドイツシュトゥットガルトで生まれました。父親の転勤でスイスデンマーク、ノルウエーにて過ごし、1936年ドイツに戻りました。既にヒットラーの率いるナチス・ドイツが1933年に政権を握っていましたが、この本の最後に村上伸東京女子大教授(当時)が書いているように、氏はこの33年のナチス政権に関して、ヒトラーを「過小評価し、軽蔑して」いました。これはは長続きしないと甘く見ていました。しかし考え直して38年ドイツ国防軍に入隊し、各地で作戦に従事し、幾度か負傷しました。1945年ナチス政権が倒れた時も負傷しており、かろうじて生還しました。1954年にキリスト教民主同盟に加入していますから、遅くともこの時までに信仰を持っていたと思われます。

 そして教会業務に長らく携わった後、1981年西ベルリン市長に就任、その後1984年から1994年までドイツ連邦共和国第6代大統領として活動しました。敗戦後40年経た1985年に連邦議会で演説を行いましたが、これが上記の本の内容となっています。

 1990年ドイツ再統一で、旧東ドイツ国民を歓迎しました。大統領退任後も活動を続けています。

 聖書で40という数は良く登場しますが、ヴァイツゼッカー氏が頭に描いていた「荒れ野の40年」は、聖書の2つの事例に基づいています。1つはイスラエル出エジプトを果たした後、荒野で神の約束に背いて重大な罪を犯した為、40年荒野でさまよっていた事です。その第一世代が死に絶えた後、若い指導者ヨシュアにより、イスラエルは約束地に入る事が出来ました。罪を犯した世代の完全な交代まで40年を要したという事です。「【主】の怒りはイスラエルに向かって燃え上がったのだ。それで【主】の目の前に悪を行ったその世代の者がみな死に絶えてしまうまで彼らを四十年の間、荒野にさまよわされた」(民数32:13)。

 2つ目は同じ旧約の士師記に出て来る40年という年月です。「こうして、この国は四十年の間、穏やかであった。その後、ケナズの子オテニエルは死んだ。 そうすると、イスラエル人はまた、【主】の目の前に悪を行った」(士師3:11−12)。つまりここでは主の目の前に悪を行い、厳しい試練に会ったイスラエルは、士師(さばきつかさ)オテニエルの手で救われ、40年間安泰だったのに、彼が死ぬと再び主の前に罪を犯したのです。イスラエルは40年しかその救いを「心に刻んでおく」(かぎの言葉ドイツ語エアインネルンerinnerun)事が出来なかったわけです。

 そこでヴァイツゼッカー氏は「四十年というのは常に大きな区切り目を意味しております。暗い時代が終り、新しく明るい未来への見通しが開けるのか、あるいは忘れることの危険、その結果に対する警告であるのか」と問うています。

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 ですからナチス・ドイツの行った忌まわしいホロコースト(大虐殺)の全貌が明らかになった時、何も知らなかったでは済まされませんでした。その人たちは、罪の有無を問わず、個人として「どう関り合っていたかを静かに自問」して欲しいと氏は言われます。そして有名な「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となります。非人間的な行為を心に刻もうとしない者は、またそうした危険に陥りやすいのです」という演説に繋がりました。

 この演説はキリスト者としてのヴァイツゼッカー氏の真骨頂を見せたものとなりました。つまり率直に自らの罪を認め、それを大胆に告白して神の赦しを乞い求めた事です。神は愛ですから、そのような悔い改めた罪人の罪を豊かに赦して下さいます。

 しかしこうしたキリスト教的背景のない日本では、この恐ろしい「罪」が自覚されません。為政者も庶民も過去の日本軍の行った残虐な行為を、関与の如何を問わず自分の問題として考え、心に刻む事をしません。原発も同じです。私たちは福島県民の犠牲の上に安楽な生活が出来ました。その事実を深く心に刻み、今後どう個人として贖いに関わって行くかが問われていると思います。

iireiiirei 2013/02/26 19:36 それにしても、イスラエルの民は、主たる神の前で罪を犯し続けてきたのですね。
神がそれでもイスラエルを切って捨てないのは、よほどイスラエルの民が可愛いか
らでしょうか?

matsukentomatsukento 2013/02/26 19:44 hetehei666様、こんばんは。
うわぁ〜!、ヴァイツゼッカー元大統領の名言を紹介して下さって、ほんに嬉しいです!
ヴァイツゼッカー元大統領はキリスト教民主同盟の所属だったと思いますが、保守的なのにナチスを許さないのは、まさにドイツの戦後の歩み方の真骨頂です(o^_^o)v!!!
「過去に目を閉ざす者は、現在も未来も盲目」、これはマジ大好きな言葉なんですよ〜♪
さすがは「神の子」であるhatehei様のことだけあるっちゃぁ〜(^o^)ノ!!!
ヴァイツゼッカー元大統領が、シュトゥットガルトの出身とは、知りませんでした。
ここには何回も行っているのですが。
同じ保守でも日本の場合(自民党や日本維新の会、民主党の一部など)は、健全な保守層ではなく「反動勢力」になっていますので、私たち国民もしっかり気を付けとかんとイケマセン(>_<)。

EPOMEPOM 2013/02/26 19:56 iireiさんのシニカルさ・・・ほんとです
Love that asks nothing in retum.
何処までも赦される
福島が犠牲になったと思いこまされているのです
放射能がどのように広がったか どこまで逃げても・・・
中国大陸からどんな猛毒が風にのってやってこようと抗議はできない訳があるのでしょう。
hateheiさん もう書けません。

cangaelcangael 2013/02/26 21:07 ナルホド〜、「40年」には、こんなに深い意味があったのですね〜。
キリスト者としての読み解き方、さすがです。日本人には深い反省は無理なんでしょうか・・・
今読んでいる本「日本の宿命」(佐伯啓思著)には戦争と戦後について書かれていますので又ブログで触れたいと思っています。
宗教心ではなくて、敗戦の仕方? アメリカとの関係にその原因を求めているように思います…まだ途中ですが。

SPYBOYSPYBOY 2013/02/26 21:39 私は宗教的なことは判りませんが、日本の政治家とは言葉に対する真摯さが違うと思います。
『他人とは意志が通じない、それでもコミュニケーションしよう』という意志が欠けている様に見えるのは、ムラ社会の日本だからでしょうか。そういうところは左右を問わず一緒のようにみえます。
外人や女性など、従来の日本のムラ住人とは異なる人たちを取り込んでいくことにしか希望はないように思えるんです。

hatehei666hatehei666 2013/02/26 21:54  iirei さんへ
 「あなたは、あなたの神、【主】の聖なる民だからである。あなたの神、【主】は、地の面のすべての国々の民のうちから、あなたを選んでご自分の宝の民とされた」(申命7:6)とあります。この民の選びは永遠ですが、罪を犯したイスラエルは、現在でもその罪を悔い改め、メシヤであるキリストを信じない限り、皆ハデスという所に落ちて最終的裁きを待っています。
国全体が悔い改めて自分たちが十字架につけたメシヤを仰ぎ見るのは、終末に至ってからです。その時まで裏切られても愛し続ける、これがアガペーの神です。

hatehei666hatehei666 2013/02/26 22:12  matsukento さんへ
 もうほんとびっくりです。シュトゥットガルト出身のヴァイツゼッカー元大統領を心から尊敬しておられるわけですね。キリスト教の素養のある方はまさにstatesmanです。過去に犯し、これからも犯すかもしれない罪をしっかり見据えています。私がこの人の素敵な本に出会えたのは、cangaelさんのおかげです。私はちょっと違う角度から考えただけで(汗)
 matsukento さんの事だから、この名演説ドイツ語で読まれたでしょうね。
私はこの頃第二外国語としてのドイツ語選ばなかった事を悔やんでいます(泣)
 翻ってpoliticianばかりの日本、罪が全然分からないから、過去を厳粛に反省する事なく、反動勢力としてこれから本格的に始動するでしょう。被害を受けた国々から総スカンを食らうに決まっています。

hatehei666hatehei666 2013/02/26 22:25  EPOM さんへ
 「私たちは、私たちに対する神の愛を知り、また信じています。神は愛です。愛のうちにいる者は神のうちにおり、神もその人のうちにおられます」(ヨハネ第一4:16)とあります。この愛である神が悔い改める者を豊かに赦して下さる、もしそれがなかったら、ヴァイツゼッカー元大統領も自分を責め続けるだけで終わってしまったかも。

hatehei666hatehei666 2013/02/26 22:43  cangael さんへ
 そうですね、40年という一区切りは40日と共によく聖書に登場します。特別な意味があるのでしょうね。
 私は原発事故を起こした人たちに全く悔いる態度がないのは、背景に「罪」という意識が全然ないからだと確信しています。厳しいですが、罪が分からなければ反省又は悔い改めもありません。ですから平気で原発輸出も企てるわけです。私たちはひたすら異議を唱え、叫び続けなければ。ご本の紹介心から感謝致します。
 佐伯さんの近著面白そうです。図書館での予約が多過ぎました。この先生TPPにも反対しており、注目していました。そのうち是非借りて読みます。

hatehei666hatehei666 2013/02/26 23:05  SPYBOY さんへ
 天では神が地上の人間の全ての行動、発した言葉を記しておられ、いつか私たちはそれに対する申開きをしなければなりません。ですから聖書の素養のある本当の政治家なら、神を畏敬しその言動は真摯にならざるを得ないでしょう。
 私がSpyboyさんの金曜ルポを読んで感心するのは、被災地の方々に対する深い共感です。私たち関東人は原発では明確な加害者ですから、あくまで身を低くし、現地の方々のご意見に真剣に耳を傾ける事、それからしかコミュニケーションの糸口が見えてこないような気がします。それを踏まえて出来るだけ多くの方々と連帯を求め、抗議の叫びを増幅させてゆくほかないと思います。私はその上で裁きを神に委ねています。神が復讐される、それに希望を置いています。

miyotyamiyotya 2013/02/27 10:41 おはようございます。
キリスト教とその世代の国の歴史、興味深く読ませていただきました。
宗教の事は良く分かりませんが、歴史を知ることは楽しみです。

hatehei666hatehei666 2013/02/27 23:47  miyotya さんへ
 そうですね、歴史を知る事、学ぶ事は、楽しみであると同時に、それに真摯に向かい合うという事ですね。
 日本人が40年、60年と年月が経た後、すぐに過去の歴史を忘れてしまうのは、一つには「みそぎ」という事があるからでしょう。みそぎを済ませた=自ら洗い清めたと言って、歴史を無視した行動に走ります。
 ところがヨーロッパの人々は概して聖書には触れているので、そこに出て来る「罪」の概念だけは身に染みていると思います。だから自分たちの世代では関係のなかった過去の大きな罪の行為も、自らの事として素直に謝罪出来ると思います。そこが日本人との大きな違いだと考えます。

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