ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

study2007氏、もう一人の高木仁三郎

 「そしてイエスは子どもたちを抱き、彼らの上に手を置いて祝福された」(マルコ10:16) 
 現在福島原発事故から4年と8ヶ月が経過し、放射性セシウムの事は首都圏の人々の頭に残っているかもしれませんが、半減期が8日と短く、初期甲状腺被ばくに関与するヨウ素131については、福島の児童で甲状腺癌にかかった人が100人を越えて深刻な状況なのに、首都圏ではあまり話題にのぼっていません。
 このヨウ素131と児童の被ばくを執拗に追及したのが、『見捨てられた初期被曝』の著者study2007氏です。大学で原子核物理学を専攻し、茨城のどこかの研究所?で研究を重ね、自身が現在肺癌で治療を受けています。病院内で見かける小児癌の子どもたちを見ながら、いたたまれない気持ちで、原発事故初期の政府・御用学者たちの理不尽な対応を鋭く告発しており、さながら故高木仁三郎氏を思わせる人です。氏の大学時代の教授や助手も50代の若さで、癌にて亡くなっています。
 氏はヨウ素131による甲状腺への影響という特定の部位を問題にしているので、甲状腺等価線量という言葉を使用しています。等価線量というのは私たちには聞きなれない言葉ですが、普通に使用しているのが実効線量という事で、換算するには組織加重係数というものを掛けます。甲状腺の場合それは0.04(氏は0.05を採択)で、例えば甲状腺等価線量が25mSvの場合、実効線量は25×0.04=1mSv。いわき市の子供は最大で35mSv(等価線量)なので35×0.04=1.4mSv(実効線量)となりそうです。でも本当はそう単純でないのが分かり、あまり突っ込んで考えません。要は実効線量より等価線量のほうがずっと高いということです。
 さらに氏が多用している図の中にcpmという単位が登場します。これは一分間あたりの放射線の数で、13,000cpm=甲状腺等価線量100mSvとなります。こうした単位の事は本当にこんがらかって来ます。氏の記述では下記10万cpmは日立製の計器では甲状腺等価線量890mSvです。
 13,000cpmは安定ヨウ素剤服用基準である1歳児甲状腺等価線量100mSvから算出した値だそうです。チェルノブイリでは10mSvだったのが、かの長崎大学山下俊一教授らにより、100mSvに据え置かれていました。チェルノブイリのような事故は、日本では起きないというのが理由?
 しかしstudy2007氏は、1章冒頭でチェルノブイリの1歳児甲状腺等価線量10mSv(追加実効線量0.5mSv)を採択します。それが「子どもを守るために『合理的に達成可能な』線量目標値」だからだそうです。
 それが何と3月14日の時点で100,000cpmに引き上げられてしまったのです。その値は一般的な大口径サーベイメーターの針が振り切れるほどの危険な水準だそうです。そして10万cpm以上では全身のスクリーニング(除染)が必須だけれど、100,000〜13,000cpmでは部分除染で済ませ、この範囲では「健康に影響のないレベル」とされてしまいました。そこでは安定ヨウ素材の配布ではなく、「心のケア」が重視されたのです。なんという犯罪的行為!子どもを守る為の線量目標値である甲状腺等価線量の少なくも89倍です!

 図は氏の本にあるものから拝借し、私が一部加工したものです。この図そのものが氏の作成によるものですが、氏の説明にあるように、元々高かった福島市郡山市より、南相馬市の下に出て来るいわき市に注目して下さい。福島県の一番南にある市で、比較的線量が低く、現在県内外の避難者にとって最も人気のある市だそうですが、2011年3月15日と21日に来襲した放射性雲(プルーム)の翌日、鋭いピークが見られるではありませんか。それが千葉県(特に柏、松戸など東葛地域)や東京都にも同じパターンで飛んで来たのです。勿論核種はセシウムなど多種ですが、氏の研究の場茨城県では、次ページの図表に、特にヨウ素131濃度時間積算値がベクレルの単位で掲げられています。やはりうなぎのぼりと言ってよいほど上昇しています。数分から長くても数時間と言われる放射性プルームを、東京圏の人々も絶対無視出来ません。この間呼吸で被ばくしたヨウ素131線量は、1歳児甲状腺等価線量で数mSv〜40mSvと氏は推測しています。ですから子どもや女性に関して言えば、この時点までに、少なくも100キロ圏外への避難が必要だったと強調しています。
 またこの初期のひどい対策の出遅れで、3月21日初めて出荷制限された原乳やほうれん草などは、3月11日からその日までに日本全国に流通し、誰でも1,000〜10,000ベクレルほどのヨウ素131を摂取した可能性はあるそうです(これを甲状腺等価線量で示すと、大人で0.4mSv、1歳児で3.6mSv)。ゆえに筆者は2011年3〜4月にどこの産地の食べ物を摂取したのか、思い出せるだけでもメモしておいたほうがよいと勧めています。
 このように規制緩和され、矮小化された被ばく被害でしたが、4年8ヶ月経過してヨウ素131による甲状腺癌ないしその疑いの児童がどんどん増えています。
 いわき市と南部で隣接する茨城県北茨城市では、既に昨年3人が甲状腺癌にかかりました。
 2015年10月30日、千葉県柏市の発表では、甲状腺超音波(エコー)検査判定で異常の出た173人中17人が小児甲状腺がんの疑いありとされました。南で隣接する松戸市は昨年度で1人その疑いがあると診断されました。
 既にその痕跡を残さないといわれるヨウ素131でしたが、安定ヨウ素剤を飲まず、衣服の除染もしなかった幼い子どもたちは、定期検査で甲状腺を調べてもらう事が必要だと私は思います。すべからく日本国中の子どもです!
 study2007氏は病棟で小児癌の子どもたちを見かけるにつれ、「避けることのできるがんリスクが非科学的で理不尽な理由により、多数の子どもたちに押しつけられるのを、私は許すことはできません」と述べ、その被害の救済の一助となる事を願ってこの本を閉じています。
 自らのがんの進捗状況も詳しく載せておられるstudy2007氏、是非生き延びて、もっと放射能の真実を私たちに教えて下さい。