この小さな場所で

地震が起こってから、2週間あまりが経った。東京の親戚に身を寄せている被災にあった知人が話してくれた。「現場はすさまじい、テレビ映像はバーチャルでしかない」と。その言葉の重さに、言葉を失う。
今、なにが出来るのだろう?被災地の様子に思いを馳せながら、足元にいる子ども達はいつもと変わらない姿をみせながら、やはりいつもと違う。まずは子ども達の言葉をすくいあげたい。
いろんなことを想定して、カリキュラムに思案する。


新聞紙を小さな子にも、大きな子にも10枚ずつ渡して、一枚一枚くるんでいく。「なにするの?なに作るの?」
「ボール、ボールだね」

]

和紙を水のりで貼っていく。「べとべとして気持が悪いよ」「つるつるして気持ちがいいじゃん」
「節電、節電」と、教室の電気を消しまくっていくこども達。
「先生、全部電気消そうよ」「そうそう、これだったら暗くても出来るよ」
ついに一クラスでは水洗い場の蛍光灯を残し、暗闇の中でおけいこを行なう。こんな時、子ども達の心を覗き見ることができる。
「あぁ、なんだか落ち着くなぁ」「電気、つけるよ」「やめろ、節電節電」
そして、こんなボールが出来上がった。大きいボールは小さな子、大きな子達はどれだけ小さくなるかに挑戦。クラスを追う毎に見本がみえて、ますます再挑戦!しっかり乾かしたら、ボールを空高く投げたり、友達と投げっこしたりして遊んでね!
そんな中で、高学年の一クラスに静かに話しかけてみた。
「あのね、被災地の子ども達に少しでも元気になってほしいって、絵本を送ろうって人達がいるんだって。いい本あったら教室に持ってきてくれないかなぁ」
早速自転車で運んで来た中学生のHちゃん。
お母さんに話をして楽しそうな本を選んだと、お母さんと一緒に届けてくれた五年生のK君。この小さな場所から、子ども達と共に、少しずつ、少しずつ。