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匪図書館員hatekupoの「貸出しバカ一代」 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2010-09-04

官民大組織のメンツを保つためには“個人の尊厳”なぞあったもんじゃない。Librahack事件について雑感

前回エントリ

先日(8月30日)、

「なんでも入札=価格競争の愚が技術立国ニッポンを揺るがす〜図書館コンピュータシステムの現状から」

というエントリをあげたら、ずいぶん多くのブクマがついていました。改めて岡崎市中央図書館問題への関心の高さを感じさせられました。

あのエントリでは、

「文系だから」

「苦手だから」

「ITは専門家にやらせておけばいい」

そう、お考えの司書は、まずは反省すべき。

そのように書きましたが、今頃になって

「反省すべきは自分もそうだな」

と反省しております。これでは、またいつぞやのように「酷評」と罵られてもしかたないことです。

が、

「文系だから」

とおっしゃるなら、もう少し人文系にとらわれず、特に自治体直営の司書(=地方公務員)であるならば、もう少し地方公務員としてしっておくべき、自治体法務(地方自治三法など)を知っておくことも必要であるし、契約事務そのものについて詳しく知る必要はなくとも(詳細は各自治体のエキスパートに任せればよいので)、該博な知識であるとか、契約の流れを押さえておくべきです。これらは「図書館経営」として大切なことですから…

岡崎市立中央図書館の見解は市の見解

前置きが長くなりましたが、当事者である岡崎市立中央図書館が見解を出しています。

岡崎市立中央図書館ホームページへの大量アクセスによる障害について

 http://www.library.okazaki.aichi.jp/tosho/about/files/20100901.html

同じ見解は岡崎市(役所)のホームページのトップにも出ています。これは、この問題がもはや岡崎市立中央図書館だけの問題でなくなっている、市としても別に「見解」を出す(出さざるをえない)状態を看取ってのことでしょうか。いずれにしても、同見解は図書館だけでなく、岡崎市(役所)としての公式見解であることを見逃してはなりません。

「被害者意識」と「利用者不在」

見解では、次のような書き出しで始まっています。

平成22年3月から4月にかけて、新着図書データベースへの大量アクセスがあり、中央図書館ホームページ(蔵書の詳細情報)につながらない、又はつながりにくい事態が、何度も発生していました。市民の方からその旨のお問い合わせをいただくことも何度かありました。

つまり、一般の利用者に「ご迷惑をおかけする」という事態が発生していたことを自ら認めています。Web−OPACを用いたサービスは今や図書館奉仕の重要な柱であり、複雑な事情はあったにせよ“本当の被害者=利用者”でもあり、“スポンサー=納税者”に対し、まずは謝罪を行うべきであると思います。そこに私は岡崎市立中央図書館の「見解」に「利用者不在」をみます。

その一方で

図書館が導入しているコンピュータシステムのソフトウエアを開発した会社に連絡し、調査したところ、本を検索したり予約したりする一般利用とは異なり、短時間に大量のアクセスが行われていることがわかりました。これによって、それまでは問題なく閲覧できていた図書館ホームページが閲覧できない現象がたびたび発生していたということですが、誰が何のために行っているのか不明なため、図書館も対応に苦慮していました。

言い訳めいた説明はともかく、

図書館も対応に苦慮していました”

とは、元図書館員とすれば、同情もしたくなりますが、一方で「被害者意識」をあからさまにしてきた記述といえます。

問答無用にブタ箱へ、そして知らん顔

さらに見解では

誰が何のために行っているのか不明なため、図書館も対応に苦慮していました。

しかし、このような状態を放置しておくことは、より多くの方にご迷惑をかけることになるので、警察に、このような事例が他にも存在するのか、犯罪性はあるのか、また相談窓口はないか、といったことについて相談し、最終的には被害届を提出しました。

その後の捜査により、大量アクセスを行った人物が逮捕され、報道によりますと、起訴猶予処分となっているとのことです。

と続きます。この見解が発表されたのが「平成22年9月1日」となっておりますが、起訴猶予処分が決まったのは6月14日でありますから、少し遅い感を免れません。

次に、

「誰が何のために行っているのか不明」

ではあったかもしれませんが、警察での取り調べでも明らかになり、被害届を出した図書館としても、「起訴猶予処分」となったいきさつとして、一定の説明を受けているはずです。

もっとも、この「目的」については当事者であるLibrahack氏がご自身で

・Librehack 岡崎市立中央図書館大量アクセス事件まとめ

 http://librahack.jp/

説明されておりますが、

プログラムを作ろうと思った動機はこんな感じです。

1.岡崎市立中央図書館(通称Libra)のヘビーユーザーだった

2.Libraの新着図書ページが使いにくかった(特に、最近入った本を探すことができなかった)

3.そこで、自分専用サイトを作ることにした

いわゆるヘビーユーザー=図書館としての顧客をブタ箱にぶち込んだ、ということは事件発生中では仕方のない部分はあるにせよ、最終的に悪意のないものであったからには、

  • 個人の自由を奪い(抑留)
  • 個人の名誉を損ね(新聞で実名報道)
  • 精神的苦痛を与えた

ということ(もちろん金銭的損失=Librahack氏が抑留の期間において失った労働とその対価)は、反省すべきことであり、せめて岡崎市図書館は「遺憾の意」「名誉回復の努力」の表明があってもいいかと思います。

同時に、同氏が指摘した

最近入った本を探すことができなかった理由はこんな感じ。

・新着図書が多すぎる(各カテゴリに200冊ぐらい)

・新着図書の対象期間が長すぎる(3ヶ月とか)

・あいうえお順に並んでいる(新着順にソートとかがない)

・そもそも新着(入荷)した日付がないので、いつ入ったか不明

という不満は、私自身ももっており、MDISのみならず、各ベンダーは努力をすべきと思います。

システムには瑕疵があったか?

再び、同市立図書館の声明に戻ります。

このコンピュータシステムは平成17年に導入しましたが、その時点で自動プログラムを用いて短時間に大量の図書データ情報を入手できるような事態は、想定していませんでした。今回の事例により、そのような情報入手の方法があることを認識し、本年7月、大量アクセスに対応できるよう、コンピュータシステムの改善を行ったところです。

同館は認めておりませんが、私はやはり「瑕疵」はあったと思えます。

それゆえ、声明では

平成23年1月初旬には、サーバーの入替を主とするシステムの更新を行います。これにより、図書館業務の機能強化を行うとともに、今回のような、大量アクセスへの対応はもちろんのこと、市民の皆さんの使い易さの向上を図ってまいります。

“市民の皆さんの使い易さの向上”とは、うれしいお言葉ですが、前述のようにことOPACに関するかぎり「利用者不在」の同館が、そのような殊勝なマネをするとは考え難いと思います。憶測ですが、7月に行ったとされる“コンピュータシステムの改善”では改善しきれなかった部分も多いかと。システムの更新は多額の費用が伴います。

もうひとつ、不気味なのはMDIS(=三菱電機インフォメーションサービス)が同市立図書館と歩調を合わせるかのように、9月3日になって意見表明をしました。

・弊社「図書館システム」について

 http://www.mdis.co.jp/news/topics/2010/0903.html

かつて、この企業については早い段階で

・あまりにも“日本的な”図書館HP事件(2010-6-4)

 http://d.hatena.ne.jp/hatekupo/20100604/1275652024

不信感はオオアリだったのですが…*1

実際に出た「表明」によりますと、

弊社が納入しております図書館システムの一部で、大量アクセスによりつながらない、またはつながりにくい状態が発生し、ご導入いただいた各図書館様ならびに一般利用者の方にご心配をおかけいたしました。

弊社システムご利用の図書館様に現在、弊社営業窓口より個別にご説明、ご相談させていただいております。

弊社は、操作性や利便性の向上とともに、インターネットを含めた利用環境の変化への対応など、より信頼性の高い製品作りに今後とも努めて参りますので、何卒宜しくお願い申し上げます。

まるで、一介の営業マントークですが、ここでも“ご導入いただいた各図書館様ならびに一般利用者の方にご心配をおかけいたしました。”というにとどまり、実質的な謝罪の言葉も誠意も感じられないのです。

この二つの「見解」をみるかぎり、岡崎市立中央図書館と三菱電機インフォメーションサービスがグルになって(あるいは、三菱電機インフォメーションサービスが岡崎市立中央図書館に入れ智恵して)、

「絶対に謝罪しない」

ことでお互いのメンツを守ったというのが私の推理です。

これで済んだとおもうなよ!

もちろん、岡崎市立中央図書館と三菱電機インフォメーションサービスがこれでめでたし、というわけにはまいりません。MDISは多くの図書館員の中のごく一部の心あり知見ある司書に強烈な印象をもたらしました。これはMDISのビジネスにとってマイナスです。群雄割拠というよりも、明らかに供給過剰なのがベンダーですから、いかに三菱傘下とはいえ、MDISの経営困難は三菱グループとしても許容されるものではありませんから、少なくとも図書館サービス部門の縮小・撤退には早晩進むと思います。合掌。

もう一方の岡崎市、こちらは内部的に諸問題があります。まずは9月議会で話題にもなるでしょう。岡崎市が小生の家から近ければ、ぜひ、環境教育委員会の傍聴もしてみたいと思いますが…

もうひとつは、岡崎市立中央図書館の内部事務の適正化と検証が進めば、

で、館長の処分(懲戒等)がされる場合もあります。

個人情報については、次に述べますが、ぜひ市議会議員のみなさまにおかれましては、百条委員会を提案されるよう、要望します。

個人情報の取り扱いは適切だったか

図書館利用と個人のプライバシーについては、日本図書館協会の「図書館の自由」をベースに議論を行うのが慣例となっておりますが、ここではスルーします。なぜなら小生は“一部の職能団体が決めたお約束事”ではなく、じっさいの法律条例にそってジャッジするのことが正しいと思うからです。

さて、

岡崎市立中央図書館事件 議論と検証のまとめ

 http://www26.atwiki.jp/librahack/

によりますと

•四月二日ごろ,以前図書館側から電話で相談した人とは別の警察官が「 これは捜査できるかもしれない 」と図書館に連絡,ヒアリング。

•四月五日,および四月八日,三菱電機インフォメーションシステムズは岡崎市立中央図書館の求めに応じてアクセスログCD-Rに焼き,渡す。このとき, 欠陥について三菱電機インフォメーションシステムズから岡崎市立中央図書館への説明は行われていない。

•その後,岡崎市立中央図書館は県警の捜査照会に応じて アクセスログと,さくらインターネットメールアドレスを持つ一部の利用者について個人情報を提出。

という流れですが、ここではやはり小生も“警察への情報提供の方法に関心をもちます。

ひとつは、捜査照会について。

岡崎市の個人情報保護条例を抜粋してみました

(利用及び提供の制限)

第8条 実施機関は、個人情報を取り扱う事務の目的を超えて個人情報を当該実施機関の内部において利用し、又は当該実施機関以外の者に提供してはならない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。

(1) 法令等に定めがあるとき又は法律若しくはこれに基づく政令の規定により従う義務のある主務大臣、知事等の指示があるとき。

(2) 本人の同意があるとき、又は本人に提供するとき。

(3) 出版、報道等により公にされているとき。

(4) 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、緊急かつやむを得ないと認められるとき。

(5) 個人情報を利用し、又は提供することに相当の理由があり、かつ、個人の権利利益を不当に害するおそれがないと認められるとき。

2 実施機関は、前項第5号の規定に該当することにより個人情報の提供を行ったときは、遅滞なく、提供した個人情報の内容及びその理由を岡崎市情報公開・個人情報保護審査会条例(平成11年岡崎市条例第33号)第1条第1項に規定する岡崎市情報公開・個人情報保護審査会(以下「審査会」という。)に報告しなければならない。この場合において、審査会は、個人情報の提供について意見を述べることができる。

もちろん、刑事訴訟法197条に基づく捜査照会であれば、文句なくOKです。ただし、「捜査関係事項照会書」の書面が提出されに基づく捜査照会であることを確認する手続きを、岡崎市図書館はおこなったか、ということです(もちろんこの時点で、“容疑者(=Librehack)”氏の名は浮かびあがってきませんから、どのような「捜査関係事項照会書」が提出されましたことやら…)。もちろん、同市の個人情報保護条例第8条2項にの規定に基づき、実施機関(=図書館)は、提供した個人情報の内容及びその理由を岡崎市情報公開・個人情報保護審査会に報告しなければなりませんので、その審査で明らかになることを望みます。

雑感

自分としては、「まとめ」をする気にもなれませんが、あまりにも問題があり過ぎて、またあまりにも情けない(=筆舌に尽くしがたいひどい内容)テーマでもありますし、元図書館職員@地方公務員としてはやりきれない思いがします。

「だったら書かなければ?」

「そんな“酷評”やめちまえ!」

の声も聴こえてくるようでなりませんが、語らずにはおれませんでした。

最後に勇気をもって事件の内幕を語ってくださいましたLibrahack氏、ほかWeb上で御教示いただいた方々に感謝します。

*1:まぁ、あのときはスリーダイヤモンド傘下企業が、製品の瑕疵等に自らの責任を認めず、ユーザーの責任に帰しがちな体質がある、という単純な理由でしたが…

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