到着

包帯を巻いた足と、デルタ航空の制限ぎりぎりのサイズの荷物を引きずって出発。足は腫れて痛むが、こんな状態で渡航する機会もそうそうなかろうし、かの国の別の面が見えるかもしれない。これもまた一興。それに、なおるまで3週間かかるなら、家で3週間うだうだしてるより外に出たほうがいい。
さすがにタクシーを使おうと思ったのだが、駅までの道でなかなかつかまらず焦る。上りのエスカレーターでキャリーケースが転がり落ちる。はたしてこの荷物はチェックインを無事通るのだろうか。キャリーケースは昨日量ったときには制限いっぱいの23kg程度だったが、OSの再インストールができず結局置いてきたThinkPadX31のかわりにいろいろつめこんだので心配。サイズもぱんぱんで微妙。三脚バッグは23kgもないが、三辺合計が157cmを超えてるかも。機内持ち込みのFoxfireルーパスはフィルム満載で幅と厚さがきわどいところ。もし載せられないといわれたら……なんとかするしかない。さらに機内持ち込みに身の回りの品ということでEOS-1n、これも許容されるかどうか。
結局今回もパソコンはなし。前回あれほど必要を痛感したのに、間に合わせられなかった。いわくつきの機種で、サードパーティPCIカードが入っていると起動できなくなる。対処法は確立されており、教わっていろいろやってみたのだが、解決できなかった。ま、パソコンなんかなくてもどうにかなるだろう。
で、チェックイン。キャリーケースは2kg超過。ロールフィルムホルダとやけどの塗り薬を三脚のほうに移す。レンズを三脚と一緒にするのは気が引けて、機内持ち込みのバッグのほうにつっこみ、あふれた比較的低感度のインスタントフィルム、FP-500B45を三脚バッグにつっこむ。再計測で0.1kgオーバーだが無事通過。どれもサイズについてはまったく言われなかった。もっと大型のFoxfire30でもよかったようだ。ここで通ったのだから同じデルタの先の便もこれで通るはず。
成田の地上は曇。上空も巻雲と巻層雲。
去年の欧州行きでは天頂近辺が深い青だったが、今回の太平洋上空の高度4万フィート1万2千メートルでは浅いシアン。地上で見るのと大差ない。太平洋もおおむね曇天。
カーメル近くの上空から海沿いを見下ろす。あれがブレット・ウェストンが撮っていた海岸か。ちょっと遠いか。広がる山並み。岩山と植生のある山がはっきり分かれる。地質の違いだろう。そして、着いた。ロサンゼルス。あいにくの曇天。上空から見ると街の配色は意外に地味。平屋とか低層建築が多い。空港は日本のように整地されておらずむき出しの地面が多い。
着陸後、足を引きずって歩いていこうとしたら呼び止められ、車いすで送ってくれるという。浅黒い小柄な女性がふうふういいながら長い距離を押し歩いてくれる。日本とかでは考えられないサービスのよさ。申し訳ないくらい。デルタ航空は不愛想だと聞いていたがたいへん親切、ありがたい。と思ったのも束の間、預託荷物のひとつが出てこない。キャリーケースのほう。いったんは見つけたのだが足が不自由で間に合わず、またすぐに戻ってくると思ったがいくら待っても来ない。もうひとつの三脚のほうは出てきたのに。1時間くらい、10周以上しても出てこず、車いすで送ってくれた係員も困った様子。誰かが持っていってしまったのか。ここの空港に限らず、荷物の受けとりにはチェックがなく、他人の荷物を容易に持ち帰れてしまう。やられたか。あんな古ぼけた遺品のキャリーケース、金目のものが入っていそうには見えないのだが。こっちに写真器類とカメラの主要部分はすべて入れてあった。Sinarなんかはいざとなればこちらでいくらでも現地調達できるが、自作写真器はそうはいかない。旧型写真器なんてこちらで再製作はまず無理。どうするのだ。あれがなきゃ写真が撮れない。3カ月もの間いったい何をすればいいのだ。やはりフィルムなんぞでなくもっとも重要なものをこそ機内持ち込みにすべきだった。バゲッジクレーム係に申告すれば補償はしてくれるはず。でもこの渡航はどうなってしまうのか。と途方に暮れ果てたが、バゲッジクレーム係に確認してもらったら確保してあるとのこと。他の荷物集積所で半信半疑でずいぶん待ったが、元の係の場所に届いていて受け取れた。どうやら他の客が間違って持って空港を出てしまい、戻れないので別の場所で保管されていた様子。色もさえないし赤いバンドを巻いてあって、自分のものと勘違いされるとは思えないが、赤いバンドがかえってありふれていたのかも。しょっぱなからはらはらさせられたがひとまずほっとした。
昼前には晴れだし、午後にはすっかり無雲。空の青さについてはかなり意識的に見ているほうだと思うが、噂通り日本より青い。正確にはシアンが強い。これでもこちらではガスっぽいらしい。ハリウッドに投宿し、食品、包帯、消毒液等各種買いだし。プリペイド携帯を探してラケルズとかいうスーパーマーケットに行き、29.9ドルで400分の無料通話がつくのを買おうとしたら店員が何も知らず、さんざん待たされて在庫がないと言われる。AT&Tともうひとつの携帯キャリアのショップに行ったがプリペイドは高い。AT&Tの店員に上に行けばもっと安いと教えられそこのスーパーでやはり29.9ドルで10分無料通話つきのVerizonを買う。全米でいちばん回線品質がいい携帯キャリアだとか。通話料は国内一律だが時間帯によって変動する。日本よりはだいぶ安い印象。9ドルとかのもあったが売り切れ。買うときに身分証の提示も何も求められず、これじゃ悪用し放題。99セントショップも気になったがくたびれきって足もつらくて行けず。
滞在1日目は時差ぼけもあってへろへろ。まあいろいろあった。なお旅行中はタイムゾーンを滞在地の現地時間とする。