ディドルディドル、猫とバイオリン

2013-08-07

[]『この世界がゲームだと俺だけが知っている』感想

バグだらけのゲーム世界という設定を生かしきっていて大変面白いです。これはよいですよ。

あらすじを1巻帯から引用しますが、「“ぼっち”ゲーマー相良操麻は、ある日悪名だかいバグ多発ゲームの世界に入り込んでしまう。「理不尽」と「運営の悪意」を具現化したようなゲーム〈猫耳猫〉の世界でバグ仕様を逆手にとったソーマの冒険がはじまる!」という話。


主人公ソーマを案内人としてバグだらけの不思議な異世界を旅して回るんですが、バグだらけであることが異世界の魅力を損ねてないんですよね。

自立的な異世界の魅力をゲームっぽさ剥き出しであることでスポイルしたりしてないんです。むしろ逆。

異世界として立ち上がった瞬間からバグはこの世界にとって所与のものとなっていて、バグこそがこの世界における自然なんです。ゲームが現実になったものという設定だからこその、それ故の歪みを生かした、そうだからこその面白さをもったそういう世界なんです。

現実と化したゲーム世界におけるバグは、ゲームの製作者やプレイヤーからみても、また異世界に住む人々からみても、どちらに立つ人間から見ても異常で不思議で理不尽なものとして、かえってこの「猫耳猫」世界の存在の確かさに貢献し、リスぺクタビリティを生みだしています。異世界ファンタジーとしての魅力とゲームというジャンルへの愛情が高いレベルで結びついていると言えるでしょう。そしてこのびっくり箱のような不思議さに満ちた世界を、案内人たるソーマとともに探検して回るのが、これがたいへん楽しい!


なおゲームの設定と異世界FTの歪みによる面白さは、キャラクターメイクにも生かされてますね。登場イベントの都合のために大量のモンスターに追い回されたり友達が一人もいなかったりする、大変かわいそうな設定のもとに生まれている駆け出し冒険者の女の子トレインちゃんなどは、キャラクターを設定ががっちり支え、そのうえでさらに設定からはみだしてキャラクターが成長しはじめており極めて魅力的です。


あとゲームを題材にした作品は自然とゼロ年代ノリな、「この社会はある種のゲームであり、ヒーロー性は非情な現実に対して主体となって取組む者、即ちプレイヤーに宿る」というテーゼを抱えるもんでして、主人公ソーマもそれは同様なんですが、ソーマは問題にたいして提示する解決策が常に斜め上なので精神的マッチョ感が脱臭されているといいますか、凄いは凄いけど偉い感じは一ミリもしないのでかえって素直に応援できるよなとこがあります。このへんも好感度の高さのポイントだと思います。


全体としては笑いどころあふれるライトFTでして、もはや若い世代には通じないかも知らんですけど『フォーチュン・クエスト』とか『極道くん漫遊記』とかあるいはハヤカワの「マジカルランド」シリーズとかあんな感じの感触ですね。

軽快・軽薄でヒネくれており、しかしジャンルに対する愛があり、その冒険はすごく楽しいのです。ライトFTが好きな人にはオススメの作品。

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