アラサーのおすすめする最近のライトノベルたち

アラサーと言うかジャスト30歳なんすけどね。
好きラノ2015年上期(http://lightnovel.jp/best/2015_01-06/)への投票用エントリなんですが、世代を把握した上で以下ずらずら並べる作品群を眺めていただくと、見えてくるものもなんか違うかなと思います。特に、ここ最近はラノベとはすっかりご無沙汰になってしまって、再入門しようと思ってラノベ売り場をのぞいても目が滑るばかり、みたいな人に参考にしてもらえたら嬉しいです。
なお自分がラノベに入門したのは富士見と電撃の王朝交代期あたり、富士見ファンタジアの黄金期を支えたヒット作たちの活躍とファンタジー作品群の豊穣の一方で、伸び盛りの電撃文庫や徳間デュアルから次々に斬新でカッコイイ作品が登場してきていた時期。
殿堂入り級に好きなラノベ十二国記デルフィニア戦記・グラスハート・魔術士オーフェン・ケイオスヘキサ・暗闇にヤギを探して耳刈ネルリ・ニンジャスレイヤーあたりです。


今回の「好きラノ」はアルデラミンが奪るんじゃないかな!
昼行灯な名将が大活躍する銀英伝みたいなジャンルの作品。主人公は怠惰さの中に暗い激情を秘めていてもうちょっと若さがありますが。
海戦・撤退戦・山岳戦・脱出行と手を変え品を変えいろんな戦争を描いてきた本作ですが、最新7巻は6巻から引き続きグダグダの内乱が舞台、終盤の展開が心をえぐり、心情描写が胸をつきます。ヒロインのヤトリシノ嬢はこのラノのキャラクター人気投票でもいいとこまでいくのではないでしょうか。
【15上期ラノベ投票/9784048693363】



のうりん 10 (GA文庫)

のうりん 10 (GA文庫)

もやしもんみたいなお勉強系の作品です。舞台も農業高校ですしね。ラノベでお勉強系の作品ってほとんど見かけないんですが、にも関わらずこの作品は他ジャンルにおける古今の名作と比べてもまったく見劣りしない高みにあります。
ギャグばっかりで出来てる作品なんですが、ちょっと専門的な話をするときは四天農と呼ばれる優秀な生徒がガイド役として登場して急に少年マンガのノリになったり、農業の未来を憂うときは富野アニメネタが中心になったりと、農業ネタとマンガやアニメのパロディの絡ませ方に計算された上手さがあります。
【15上期ラノベ投票/9784797382921】



スレイヤーズの昔からソードアートオンラインの現代まで、RPG異世界ラノベの王道ですよね。ログ・ホライズンはある日突然ゲームの世界に入っちゃった系の話なんですが、そうしたジャンルの中でも“ゲーム世界に閉じ込められたプレーヤーは数十万人にも及んだ…”というところに特徴のある、かしこ系な作品です。設定とドラマの盛り上がりの絡ませ方がうまいのも美点ですね。
最新9巻はニンジャタートルズに憧れる米国籍の青年が主人公のわりと外伝的な話、ソードアートオンラインやニンジャスレイヤーみたいなアクション重点回で、他の巻とは結構毛色が違うんですがこれがメチャクチャおもしろかったです。
【15上期ラノベ投票/9784047301900】



ニンジャスレイヤー 秘密結社アマクダリ・セクト (不滅のニンジャソウル # 1)

ニンジャスレイヤー 秘密結社アマクダリ・セクト (不滅のニンジャソウル # 1)

B.ボンドとP.N.モーゼズのふたりの才人がおくる話題のサイバーパンクニンジャ活劇、twitterにて連載中。古橋秀之秋山瑞人が龍盤七朝の続きを書かなくても俺には忍殺があるからいいんだ…。
作品の内容は攻殻機動隊北斗の拳と今川版Gロボと封神演義をぶっこんでニンジャでまとめた感じです。平成ライダーシリーズやTIGER&BUNNYみたいな装甲ヒーローものとしての味わいもあり男性・女性両方にお勧めです。
いや実際、ジョジョガラスの仮面並みのウルトラ大傑作大長編なのでとりあえず公式アカウント(https://twitter.com/NJSLYR)をフォローしてみるといいのでは?
【15上期ラノベ投票/9784047304185】



巡ル結魂者5 (講談社ラノベ文庫)

巡ル結魂者5 (講談社ラノベ文庫)

魔術士オーフェン血界戦線のノベライズなんかで知られる秋田禎信異世界召喚女の子いっぱいファンタジー
秋田禎信の手による女の子いっぱいFTとしてファンにとっても理想的な作品として仕上がっており、頭の回転が早くて自立心のある女子どもがわんさか出てきます。
なんというか、最初はニセコイなのかなと思ってたらアッこれワールドトリガーや!ってなる感じ。召喚されたらまわりが那須隊とかチカちゃんとか小南先輩とかオペレーター勢とかそんなんばっかなわけです。
主人公がハイスペックなあたり極黒のブリュンヒルデっぽくもありますねー。多彩な魔法描写も魅力です。
【15上期ラノベ投票/9784063814583】



明日の狩りの詞の (星海社FICTIONS)

明日の狩りの詞の (星海社FICTIONS)

地球に住み着いた宇宙生物をハントして食う、青春狩猟SF。
発表時期的にダンジョン飯にたとえて紹介されてることが多かった印象ですけど、どっちかっていうと山賊ダイアリーが途中からコッペリオンになるって感じ。もしくは椎名誠っぽい。
石川博品ラノベ作家としては珍しく、コンセプトの違う単巻作品を次々発表している作家で、そのへん古橋秀之に近いですかね。次回作の情報が出るたびに、発売前からその世界観や作家のフィルモグラフィーのなかでの位置づけを検討するファンの姿が見られ、発表後は感想まとめや元ネタ考察記事なんかがはてブに上がってくるので愛されてるなーと思います。
本作は石川博品作品の作品群の中でも入門編としてとくにおすすめできるものだと思いますね。
【15上期ラノベ投票/9784061399174】



辺境警備デルフィニア戦記を足して2で割ったような作品で、面白さ的にもそんな感じです。この説明は猛烈に褒めてますよ。
引退して旅に出た老騎士が訪れる先々で出会う大国を揺るがす陰謀や誇り高き蛮族との揉め事や武技の競技会といったわりとベタベタな出来事を力強く描き、それをその地方ごとの名物料理たちが彩ります。
ジジイ無双とメシのうまそさはファンタジー剣客商売とも言えますでしょうか。
華やかな活劇もとても面白いですが、それと同時に食事に集約されている今この瞬間の生きる喜びや、あるいは物語の伝承や歌といった時を越える文化の輝きが、それぞれに違った時間の流れの中にある価値として作品を構成しているところに良さがありますね。
あと3巻のイラストが絶品でした。これは見もの!
【15上期ラノベ投票/9784047304710】



コップクラフト (5) (ガガガ文庫)

コップクラフト (5) (ガガガ文庫)

異世界と地球の接点となった都市を舞台とした、敏腕刑事と女騎士のバディによる刑事ドラマ。マイアミ・バイスみたいな海外ドラマを明確に意識した作風で、アワーズとかサンデーGXとかウルジャンに載ってそう。
もともと竹書房ゼータ文庫から刊行されててその時のイラストは篠房六郎だったんですが、レーベル消失にともないガガガ文庫から再刊されイラストは村田蓮爾に交代になりました。旧2巻のイラストとかすごい良かったんですけどね。
でまあ、旧版が好きだったので長らく釈然としない思いを抱えていたのですが最新5巻がかなり良かったので、ようやく死んだ子の歳を数えるのをやめて現シリーズにきちんと向き合う気がでてきました。次巻も楽しみです。
【15上期ラノベ投票/9784094515442】



石川博品2作品目。イスラム異世界後宮で宮女たちがみんなして野球をしてるという謎めいたコンセプトの作品。ハルタとかに載ってそう。
一度打ち切りを食らったそうなんですが、このラノの新作部門で1位、全体でも5位となったために続刊が刊行されることになりました。よかったよかった。
野球小ネタをこれでもかとぶち込んだ素軽い文章の中に、ときおり野球場の空気や距離をもありありと感じさせる試合の光景の描写や、記憶に滑り込む後宮での日々におけるちょっとしたエピソードが挿入されて、作品世界の存在感を確固たるものにしています。これぞ石川博品って感じですね。
【15上期ラノベ投票/9784086310543】



ゲームの世界に召喚される手の作品って、召喚された上で何をするかってのでいくつかスタイルが分かれていきますが、この作品は典型的な魔王プレー。配下のゆかいな魔人たちとともに、異世界に生きる住人たちのキラキラした生命の輝きを蹂躙する暗い爽快感が売りです。
ゲーム世界に召喚される系の作品は徐々にプレーヤーとNPCの垣根が消えていくものですが、この作品ほどハナっからNPCこそが人間であり主人公は既に死者であることが明白な作品も珍しい気がします。
【15上期ラノベ投票/9784047304734】



翼の帰る処 5 ―蒼穹の果てへ― 上

翼の帰る処 5 ―蒼穹の果てへ― 上

10枠に入りきらず惜しくも次点。
辺境に飛ばされてきた隠居希望で苦労性の超有能虚弱青年官僚が、帝国の若い皇女に仕えて地元の揉め事やら帝国の内紛やら神話の時代の魔物への対策やらに奔走してはぶっ倒れてもふもふの鳥たちに癒されるファンタジー小説です。
文系ハイスペックが田舎にやって来るって構図は、ばらかもんとかそのへんの作品とも面白さの構造が共通してると言えますね。
最近は皇女が主人公に対して本気になってきておりヒヤヒヤもの…というかそういうの踏み越えてるな。ヤエトお前そんな草食系ですよって顔してそんな一面をどこに隠してたんだ。


そのほか

あたりも面白く読んでます。


それから投票期間内に新刊が出なかったけどおすすめなのがこれ。

この世界がゲームだと俺だけが知っている 6

この世界がゲームだと俺だけが知っている 6

ゲームの世界に入り込んでしまった主人公だったが、そのゲームはよりによって伝説的クソゲーとして知られるニュー・コミュニケート・オンライン、通称猫耳猫だったのだ!という話。
ゲーム的ファンタジーのあるあるをギャグにしながら続く破天荒な冒険は、かつてのフォーチュン・クエスト極道くん漫遊記スレイヤーズ(の特に短編集)と同じノリであります。
また、猫耳猫の世界は悪意しか感じられないようなイベントや度肝を抜かれるバグに彩られていますが、ひとたび現実として存在してしまえばそれもまた異世界における自然の神秘であり、異邦人とマタギの特性を兼ね備える主人公ソーマを案内人とした猫耳猫世界をめぐる旅には、地球イチバンとかワンダー×ワンダーのようなNHKのドキュメンタリーのような面白さを覚えますね。