読書

エレGY (星海社文庫)

エレGY (星海社文庫)

「おちつけ、女子高生」
 そう言って僕は笑いながら、コンビニ袋からバンソウコウを取り出した。
 せわしない彼女の両手首を捕まえて、まだ癒えきっていない傷口にそっと貼った。
 彼女はさまざまな弁明のような事を呟いて、目をまん丸にして泣いた。


 とてもよかったです。
 私達の世代にはあきれるほどにありふれた、虚構になりたい男の子と、自分を傷つける女の子の、恋愛小説。
 その恋心はチープと思ってしまうし、青年はダメすぎ少女は軽すぎる。でも、それでもいいな、と思いました。
 かつて、私達は誰かの手首にバンソウコウを貼ってはあげられなかった。
 でも、貼ってあげたかったんだ。本当はね。


 筋は恋愛小説ですが、驚くほどに「魂・スピリッツ」の小説でした。
 フリーゲームをつくるってのはどういうことか。
 夢と理想じゃ腹はふくれない。
 それでもスピリッツは、多分何度でも蘇るのです。

 初めての作家さんだったのですが、この人はこれ以降一体なにを書くんだろう、と首を傾げました。
 他の作品も文庫になってくれるのでしたら、買って読みます。よかったです。