2007-09-21
はやぶさ2が危ない (1) 米国有人月探査への参加計画で割を食うはやぶさ2
すいません,バタバタしてまして,だいぶ前のニュースなんですけど,看過できない話があったので紹介します.野尻ボードに松浦晋也氏が投稿された記事.
これはどこかできちんと書かねばならないのですが、基本的には、1)JAXA内で日本の次の大プロジェクトがアメリカの有人月探査への参加ということで動きつつある、2)借金漬け国家財政のもとで予算が増える見込みはない、3)有人月探査へ投資が流れる結果、一番割を食うのが宇宙科学、4)中でも研究者の層が薄い惑星科学は圧迫されっぱなしになる――という流れがあります。
ここで皆さんに聞いてみたいのですが、「日本人宇宙飛行士が、アメリカ主導の有人月探査に参加して、月面を歩く」のと、「はやぶさ級探査機が太陽系の各所に散って、初代はやぶさのような映像を送信し、サンプル採取のようなチャレンジを行う」のと、どっちが支持できますか。
どっちに、「こいつはすごいぞ!」と興奮できますか?
JAXA、特に経営企画セクションは、日本国民が前者を支持すると考えています。「国際協力で各国宇宙飛行士が月面を歩く時、そこに日本人がいないことを日本国民は認めないだろう」という言葉を何度も聞きました。
本当にそう思いますか?
どうも最近 JAXA の月探査関連の発言に,利用調査という語が急に増えてきたなあと感じていました.先日紹介したExcite エキサイト: ページが見つかりませんでも
月探査の将来を考える上での大きな不安要素は、2020年から月面基地を作るというアメリカ主導の構想に、日本が参加することがほぼ間違いないということ。
通常の探査衛星では考えられない千億円単位の莫大な供出が必要な一方、アメリカに強く依存した計画であり、日本の権限は弱く、アメリカの計画変更にも振り回され、コストに見合った科学的な成果や技術の習得は困難になると予想がつきます。
このような事態はすでに国際宇宙ステーション(ISS)の先例があります。
という話があったように,米国月有人探査への参画はかなり現実的なものとなっているようです.
はやぶさ2と米国有人月探査への参加,あなたはどちらを選びますか? 松浦氏のこの問いかけに,野尻ボードでもはやぶさスレでもさまざまな意見が集まりました.松浦氏の主張としては当然はやぶさ2ということだと思いますが,野尻ボードやはやぶさスレの主流意見は
- そりゃもちろんこの掲示板にいるような俺らは,はやぶさ2をぜひとも実現してほしい
- でもそういうマニアは一部.国民は有人月探査を支持するだろう
というもの.そこから先の結論はさまざまです.
以下,管理人が理解した範囲で,主なご意見を要約してみます(解釈が間違っていたらご一報を).
- 寧為鶏口、無為牛後(bewind さん)
- 重要性では探査が上だが宣伝効果では有人月探査が上で,所詮宣伝効果にはかなわない(たかつかささん)
- これは政治の問題.アメリカは JAXA の夢に付き合う義理も動機もないから,中国人やインド人を先に歩かせるかも知れない.無人探査はその担保になる.(林 譲治さん)
- 無人探査だけではじり貧になる.独自の有人計画があってこそ国民は盛り上がる.対米追従路線は論外.宇宙作家クラブ有志で声明を出したらどうか.(野尻抱介さん)
- 次の目標は独自の宇宙船による小惑星有人探査.(野田篤司さん)
- 金出して連れてけってのなら単なるお客さん.
- ミニミニ宇宙学校でも宇宙飛行士がいると部屋の人口密度が違った.世間はそれしか知らないのでは.
- ISAS として広くアピールできる広報をもっと考えるべき.
- 自分の周りにははやぶさに興味を持つ人は皆無.研究や論文化にセンスを持たない人々に,正直押せる自信がない.
- 月計画参加反対メールも送らないと.
- ISS の二の舞.
- 独自の有人技術で日本人を月に送るなら大賛成.
- ただでさえ少ない予算から乗せ賃をがっぽり NASA に取られるのは御免.NASA の話にのるとロクなことがない.
- 有人を推進することに意義はあると思うが,無人探査にも最低限の予算は保証してほしい.
- 日本国内でやったほうが資金が国内にとどまる.
- 米国月有人探査は失敗しても JAXA の責任は薄いが,はやぶさ2は失敗したらモロかぶり.
- 一般の人は有人月探査を支持する.支持がなくて予算が減ることを考えると,NASA の計画を利用し,SELENE やペネトレータ開発に動いたほうがよい.
- 少しでも支持を集められる有人月探査を選ぶほうが賢い.
- 月探査 10%,はやぶさ2 1%,年金どうにか汁 89%.
- たとえ一部でもはやぶさ2に想いを寄せる人達がしっかりと支持していくしか方法はない.
- 有人はインパクト強い.ニューホライズンも「人が乗っているの?」と訊かれた.メディアとしても記事にしやすいのは有人月探査.
- 月有人自体ははやぶさと並んで賛成だが,アメリカ産業だけを潤すのが納得いかない.
- 何も決まっていないのに圧迫される云々はまだ早い.
- アメリカが作る輸送が遅れるとすべてが遅れる.結局はアメリカがコントロール.
- 日本の地質学者をサイエンスのスペシャリストとして月に送り込むならありかも.
- マスコミが国民に説明するのをさぼっている.ウケる情報しか報じない.
- 日本はアメリカに貢ぐことこそが本道っていう偉いさんが相当いる.
最後に管理人の愚見を.単純に「どっちが見たいですか」と言われれば,そりゃ当然はやぶさ2です.そもそも管理人は無人探査に萌える人間なので,有人にはあまり興味ありません.というより月自体,人類の手垢がついているところなので,正直 SELENE による無人探査もそれほど萌えません.小天体とか,木星圏とか,そういった誰も見たことのない所に降りるのが理想です.
とまあこんなマニアックな意見は極めて少数派で,大多数の国民は有人月探査を支持するでしょう.しかも皮肉にも,「宇宙にけっこう興味がある」という「普通の」宇宙ファンほど,そうなのではないでしょうか(興味がない人たちはそもそもどうでもいいと思っている).これはもういくら JAXA が頑張って広報したところで,また我々が宣伝したところで,くつがえせるものではありませんし,そもそもくつがえそうというのは間違っています.管理人は彼らの支持を尊重します.
では「どっちを推進すべきですか」と問われると…これは難しいですよね.もちろん,少ない予算から NASA に乗せ賃を取られてお客さんになるのはまったく解せません.金と人だけ出して,独自の技術は出さない.これでは JAXA は単なる NASA の人材供出機関であって,研究開発機構でもなんでもありません.仮に参加するにしてもこんな安易な方法でなく,もう少し戦略的なカードの切り方ができないものかと思います.そういうわけで,基本的には反対です.しかし計画に参加することで,多少なりとも月探査に使える予算がつくというのであれば,この逆境を利用して探査技術を磨くのは一つの手だと思うのです.実際はどうなんでしょうね? 予算は多少探査にもまわしてもらえるのでしょうか.
いずれにしろ,このままいくと有人計画への参加は決定的になるでしょう.ほっといても国民は支持してくれるでしょう.しかし,はやぶさ2は支持する人間がちゃんと声を上げていかないとどうしようもないということです.国民の大半が有人月探査を支持するという JAXA 上層部の判断は確かに当たっていますが,はやぶさ2支持者も JAXA が思っているよりはけっこうたくさんいるんだよということをもっとアピールするしかないんじゃないかと.はやぶさ2支持者がほとんどいないと JAXA が本当に思い込んでいるのなら,それは正したほうがよいと思います.あるいは何らかの政治的判断でそうなっているにしても,こちらの声を届けることは意義があるはずです.国民の税金が投入されているんですから.JAXA は少数派の意見を揉み消すような組織ではない,と管理人は信じたいです.
最後に言い訳がましくてアレですが,
で書いた悶々とした感情はやっぱり消えていません.事態は決して「有人月探査 vs. はやぶさ2」という二項対立ではなくて,VSOP-2 や次期固体や,SELENE-2 やソーラセイルや,準天頂や HTV や H-IIB や,国産旅客機や SST や,提案されている多くの小型衛星といったものが同様に予算を切望しています.管理人はこれらのプロジェクトも本当に興味を持っているし,それだけにパイの奪い合いになっているのが本当に悲しいのですが,正直どういうスタンスで行くべきなのかまだgdgdと悩んでいます.が,まあとりあえずははやぶさ2応援ということでやっていきたいと思います.
追記(2007-09-23):ASTRO-G も現時点での打上げ予算が 30 億円しかなく,ロシアでの打上げの可能性もあります.
これでは JAXA は宇宙科学全般についてやる気がないように受け取られても仕方がありません.
はやぶさ2が危ない (2) 「外国のロケットを使うよう指示されている」
えーと,なんかさらに不穏なニュースが飛び込んできたんですけど(大塚実さんいつもこういう情報どんどん出してくれてありがたいです).
今回明らかになったのは「はやぶさ2」に関してで、同WGにて松尾委員長が現状について質問したところ、川口教授は「国際協力により外国のロケットで打上げることを前提として検討するよう指示されている」という旨の返答をしたという。海外との共同プロジェクトならともかく、自国単独実施を前提にすでにかなり検討が進んでいる探査機において、改めて他国のロケットを使おうとするのは世界的にも異例だ。
海外に比べて割高とは言え、他の衛星との「相乗り」という手もあり、この段階からH-IIAの選択肢が外されているのは少し不可解だ。
一方「はやぶさ2」は国際協力ということなので、探査の成果を共有する代償として、外国に無料で打上げロケットを提供してもらう道を探っていることになる。つまり川口発言からは、JAXAが自前の資金で「はやぶさ2」を打上げる気がないことが読み取れる。
宇宙開発に詳しいジャーナリストの松浦晋也氏は、「『指示されている』という言い回しが気になる。言葉通りに受け取ると、海外ロケットの使用は強制されたもので、『はやぶさ2』検討チームは、ロケットを提供してくれるパートナーを見つけなければ、計画中止になる状況に追い込まれていることになる。ただでさえH-IIAロケットは、今後しばらくは打上げ機数が足りず、製造と打上げを担当する三菱重工業が、打上げ事業の継続に苦心しているところ。打上げ機数が 1機でも増えれば、それだけH-IIAは安定して運用できることになる。貴重な打上げペイロードを海外で打上げようとするJAXAの態度は不可解だ」と指摘している。
いやもうまったくもって不可解としか言いようがありません.
JAXA は何のためにわざわざ JSPEC という組織を立ち上げたのでしょうか? もともと深宇宙探査なんてやる気なくて,米国有人月探査に向けた利用調査を行うための組織に過ぎなかったのでしょうか? H-IIA という素晴らしいロケットがあるのにそれを使うなとは,強力なパートナーである三菱重工に対しても大変失礼な話です.もちろん限りある予算の中でやり繰りする苦労は察しますが,優先順位のつけ方が非常に不可解です.「はやぶさ」で JAXA に対する国民の株が大きく上がったことは,JAXA 自身もよくわかっているはずです(少なくとも広報レベルではかなり意識されているように思います).今ここではやぶさ2を見放すということは,これまで支持してきた国民を裏切り,今後潜在的に JAXA の支持者となるであろう人々をみすみす逃し,さらには世界の笑い者になることを意味します.
そもそも,いくらなんでも本当に無料で打ち上げてくれるような気前のいい国があるはずがありませんから,探査の成果などを相当量,相手国に引き渡すことは必至でしょう.世界最先端を誇る小惑星探査の成果を売って二番手に成り下がれというのでしょうか.日本の太陽系科学が衰退してもかまわないというのか.これで長期計画を策定しているといえるのか.
…落ち着け>俺
…まあともかく,こんな理由で中止になったら泣くに泣けません.
追記(2007-09-23):2ch スレ.キャプφさん捕捉どうもです.
文部科学省平成 20 年度概算要求
まだ内訳詳細が出ていないのですが,
によると,とりあえず新規施策として
・衛星等による自然災害観測・監視技術の開発利用の推進 135億円(+63億円、+89%、文科省)
・宇宙輸送システム558億円(+ 179億円、+47%、文科省)
が挙がっているそうです.
NASA の Mars Science Laboratory の予算大幅カット,米国惑星協会が抗議
まあこっちはミッション中止にならなかっただけマシかな….
しかし降下用イメージャとズーム機能だけならともかく,売りの一つだった ChemCam(岩を蒸発させて成分分析する装置)がないとなると,相当痛手だと思われます.こっちも何やら予算カットに不可解な点があるようで.
それにしても,米国惑星協会はちゃんと抗議していてえらいです.
札幌で「宇宙を楽しむ 市民シンポジウム」開催(10/28)
暗い話題が続いたので少し明るい話題を.10/28 に札幌にて「宇宙を楽しむ 市民シンポジウム」が開催されます.
−日時−
平成19年10月28日(日)
開場 12:30
シンポジウム 13:00〜16:00
ビデオ上映 16:10〜16:40
−場所−
北海道新聞社 2F 大会議室
(札幌市中央区大通り西3丁目6 北海道新聞社本社 2階)
この豪華講師陣を見てください.「祈り」の上映もあります.
−プログラム−
開場 (12:30)
開会の挨拶 (13:00)
第1部:日本の月惑星探査の最前線 (13:00〜14:10)
・再び月へ、「かぐや」の使命 (40分)
JAXA 宇宙科学研究本部・教授:阪本 成一
・「はやぶさ」の成し遂げたこと(30分)
JAXA 「はやぶさ」プロジェクトマネージャー:川口淳一郎
休憩 (14:10〜14:30)
・地球の砂VS月の砂
・「はやぶさ」になったつもりで“イトカワ模型”の撮影会
第2部:誰も見たことのなかった画像への挑戦(14:30〜15:30)
・「だいち」がとらえた地球の真実(30分)
JAXA 宇宙利用推進本部 衛星利用推進センター 主任:鈴木 明子
・天文観測衛星のとっておきの画像(30分)
X線天文衛星「すざく」、赤外線天文衛星「あかり」、太陽観測衛星「ひので」
「すざく」プロジェクトサイエンティスト/名古屋大学・教授 :國枝 秀世
「あかり」プロジェクトチーム/JAXA宇宙科学研究本部・准教授:山村 一誠
「ひので」プロジェクトチーム/JAXA宇宙科学研究本部・准教授:清水 敏文
第3部:ゲストトークショー (15:30〜16:00)
JAXA 宇宙教育センター長/教授 :的川 泰宣
「カムイ」ロケット開発者/北海道大学大学院・教授:永田 晴紀
サイエンス・ライター/北海道大学・特任准教授 :難波 美帆
閉会の挨拶 (16:00)
ビデオ上映 (16:10〜16:40)
・「はやぶさ」新作ビデオ「祈り」の上映
※進行 JAXA 「はやぶさ」プロジェクトサイエンティスト:吉川 真
−特典−
カメラをご持参いただいた方は、小惑星“イトカワ”モデルの撮影が可能です。
追記(2007-10-10):事前に整理券を入手することが必要のようです.コメント欄参照.
JAXAi マンスリートーク 10 月は阪本先生
こちらも要チェックです(あの超絶技巧かぐやペーパークラフトを作られた阪本先生です).
◆次回のマンスリートークは、10月4日開催
『日本の宇宙科学研究の最前線(仮)』
9月14日(金)に打ち上げが成功した月周回衛星「かぐや」を筆頭に、宇
宙の真のすがたを知るための観測と研究に取り組む宇宙科学研究本部。
小惑星探査機「はやぶさ」など、私たちに勇気と感動を与えてくれるミッ
ションが目白押しのJAXAの宇宙科学研究の全貌を詳しくご紹介します。
・開催日時:10月4日(木)18:30〜19:30
・解 説 者:宇宙科学研究本部 対外協力室
教授 阪本 成一
・聞 き 手:科学ジャーナリスト 寺門 和夫 氏
・開催場所:JAXA i ミニシアター
「月世界探険 (タンタンの冒険旅行)」
遅くなってすいません.今回も月探査の話を取り上げます.タンタンというと絵本のキャラクターとして有名ですが,そのタンタンは実は月旅行に行っているのです.しかも絵本が描かれたのは 1954 年.アポロどころか,人類が未だ人工衛星すら打ち上げていない時代.なのにこのリアルな描写,すごいです.
- 作者: エルジェ,川口恵子
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 1991/07/05
- メディア: 大型本
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Explorers on the Moon (The Adventures of Tintin: Original Classic)
- 作者: Hergé
- 出版社/メーカー: Little, Brown Books for Young Readers
- 発売日: 1976/09/30
- メディア: ペーパーバック
- クリック: 1回
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以下,ネタバレ含みます.
遅くなってすいません.今回も月探査の話を取り上げます.タンタンというと絵本のキャラクターとして有名ですが,そのタンタンは実は月旅行に行っているのです.しかも絵本が描かれたのは 1954 年.アポロどころか,人類が未だ人工衛星すら打ち上げていない時代.なのにこのリアルな描写,すごいです.
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そもそも当時,人間が宇宙に行ったらどうなるのか,月への飛行はどのようなものになるのか,月世界はどんな所なのか,普通の人間はおよそ想像すらつかなかったことでしょう.スプートニク以後,ガガーリンの初飛行の時ですら,人間は宇宙に行ったら発狂するのではとか,物が食べられなくなるのではとか,まことしやかに言われていたくらいです.一部の科学者達をのぞいて,大方の人間の月旅行に関する認識は,ジュール・ヴェルヌの頃とたいして変わらなかったのではないでしょうか.
しかし本書は,現代の一般人が読んでもあまり違和感がないほどのリアリティで進行していきます.
によると,作者の Herge は当時の知識に基づいて可能な限り「科学的な正確性」を追求したようです.
月ロケットは表紙にも出ていますが,どうみても V-2 です本当にありがとうございました状態です.打上げ時,搭乗員は加速度負荷を軽減するためか特殊なベッドにうつぶせになりますが,このあたりもよく考えられてますね.しかし結局 G でタンタン達は気絶してしまうのですが.
打ち上げられたロケットはそのままダイレクトに月遷移軌道に乗ります.実はこのあたりは割りと荒唐無稽なことになっています.多段式ではなく完全に往還型のロケットで,しかも旅程の半分まで等加速度運動して船内重力を 1G に保ち,ついでスラスタを噴かして船体をひっくり返し,また 1G を保ちつつ減速して月に軟着陸するというとんでもないミッションです(ちなみに原子力エンジンですがいくらなんでも 1G は無理).ただ途中で登場人物がうっかりエンジンを切って急に無重量状態になってしまうくだりがあるのですが,液体が玉状になるなど,今の人間には当たり前ですが当時としてはかなりのリアリティです.
飛行中に小惑星 Adonis とニアミスしそうになります(この小惑星は実在しますが,こんな所は飛んでいません).小惑星はイトカワ程度の大きさですが,誰も見たことがない当時としてはうまく描いています.さらに主人公達がハードシェルスーツで EVA を行ううちに一人が Adonis の重力に引き寄せられていったりするのですが,これはちょっと重力を大きく見積もりすぎですね.でも宇宙服のデザインなんてかなりイイ線いってますね.
ロケットは逆噴射しつつ,ついに月面に到達し,タンタンは最初の一歩を記します.影が長く,地球も低いので,高緯度に降りたようです.月面の景色(空がちゃんと暗い,影の部分がまっくらになる,地表はレゴリスが積もっている等)や 1/6 の低重力下でのムーンウォークなど,見てきたかのようです.彼らは月面車も持ってきました.まるっきり戦車なのですが,まあ不整地走破性能はよさそうです.
物語の後半はなにやらきな臭い事件がおきたり,「冷たい方程式」モノになったりして,わりと衝撃的なラストが待っているのですが,ストーリーも最後までハラハラドキドキの連続で,飽きさせません.ともかく決して子供だましではなく当時の知識を総動員したつくりになっているのは素直に感動しますね.
英語版のほうは Amazon で試し読みできます.ちなみに,ロケットの打上げまでを描いた前編「めざすは月」もありますが,こちらは読んだことがないので割愛します.
- 作者: エルジェ,川口恵子
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 1991/04/25
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Destination Moon (The Adventures of Tintin: Original Classic)
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