「 記憶にごじゃりません。 」
その都度 彼は、嘲笑に晒される。
生きたまま 晒し首 にされているようなものだ・・・。
なんだか僕は、胸が痛くなる・・・。


「 記憶にごじゃりません。 」
再びドッと、嘲笑が沸き起こる・・・。


このFという参考人招致された官僚のオジサンは、だな、
あのね、
51歳オヤジの仲間のみなさんよ、
僕らと同じ51歳なのだそうだよ・・・。
僕は、殊更 胸が痛くなる・・・。


記憶は間違いなくあるはずだ。
でも、本当の事を言っちゃったとしたら全部バレちゃうでしょうが・・・。
だからこんなに目が泳いじゃってもそれを繰り返すしかないんだ。
記憶にございません は、魔法の言葉・・・。


立場を変えて考えてあげてほしいよ、
なにしろコイツは同い年なのだ。
彼がもしもトモダチだとしたら、どうよ?
僕らの親世代の爺さんよ、婆さんよ、
彼がもしもアナタの息子だとしたら、どうよ?
同世代のオバサンたちよ、
彼がもしもアナタの夫だとしたら、どうよ?
僕らの子供世代の若者たちよ、
彼がもしも君の父だとしたら、どうよ?
涙が出ちゃうよ、僕は・・・。


Fくんは歩いて自分の席に座る。
座った瞬間に再び挙手をして立ち、マイクのある場所へ戻る。
おい、大丈夫か?
膝は痛くないか?


「 記憶にごじゃりません。 」
そして同じ言葉を繰り返す・・・。


本当は、記憶に御座いませんと言っているつもりなのだけれど、
緊張のあまり、ごじゃりません になっちゃっているのだね・・・。
でもね、スゴイぞFくん、オマエは強い男だな・・・。
僕だったら間違いなく白目を剥いて気絶しちまっているだろうよ。
もしくは、もう帰る!って言って、シクシク泣きながら帰宅して、
カミさんに頭を撫でてもらった時点で号泣しちゃうレベルの修羅場だぞ、コレ。


「 記憶にごじゃりません。 」
まただよ・・・、マジでスゴイぞFくん・・・。
どんどん落ち着いてきているぞ、ガンバレFくん・・・。
下っ腹に力を入れてガンバレ・・・。
下っ腹に力を入れると51歳なので僕らはオナラや、
場合によっては ミ まで出ちゃうかもしれないけれど、
同い年の僕らは誰もそれを笑わないぞ、Fくん・・・。


・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・


国会中継の視聴率が、なあ、
紅白歌合戦の視聴率を超えたそうだ・・・。


事の良し悪しは別として、
同い年51歳オジサンの仲間のFくんの頑張り(?)に感銘を受けた・・・。


Fくんに がんばったで賞 をあげたい・・・。


Fくんのような官僚がいる限り、
ある意味では我が国はまだまだノープロブレム、
かもよ。


僕なんかあれだけ立ったり座ったりを繰り返したら絶対に膝が痛くなるもんね。
それだけでもFくんはスゴイ奴だと思う。