「ジョゼと虎と魚たち」





ある日、大学生の恒夫(妻夫木聡)は、ジョゼ(F・サガンの小説上の人物。池脇千鶴)と名乗る足の不自由な少女と出会う。
料理上手で負けん気が強くて不思議な存在感を持つ彼女に、恒夫は恋人がいながら、どんどん惹かれていく。
ジョゼと同居していた老婆の死をきっかけにして彼女と暮らし始める恒夫。
恒夫との暮らしの中で今まで夢見ていた外の世界を知るジョゼ。
このまま幸せに寄り添っていけるかに見えた2人だったが・・・・。

 彼は実際一緒にジョゼと暮らすことによって、自分の責任の大きさに気づき、そしていつの間にかその責任を背負えないと認識して、結局彼女から逃げてモトカノとよりを戻してしまうのだけれど、でも彼女を嫌いになったわけじゃなく、でもその思いに応えられない自分の情けなさとか、彼女への愛情とか、そんな思いがまじって彼は最後に泣き崩れてしまう。すごく哀しいことは、彼の彼女に対する愛情が中途半端だったことだ。でもそれがすごくリアルに描かれていて、これが現実なんだよねと思い知らされる。彼女は彼が去った後、一人で強く生きていこうとする様子が描かれているのだけど、逆にそれがまた哀しい。だってこれからもずっと彼女はこうして一人で生きていくんだなと彼女の未来を思うと、決して前向きなだけな意味ではないのだと思う。単純に男は引きずって、女はさっぱりしてると評する人がいるかもしれないけど、彼女の心の痛みが強く生きようとすればするほど伝わってきて辛い。いくら彼女が別れを予感していたとしても、本当は泣いてすがりたいはずだ。行かないでくれと。