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千倉日記

2017-01-28

耕さない田んぼ 第1回

| 21:30

 今日は、五十嵐武志さん主宰の「耕さない田んぼ 第1回」目に参加するために「道の駅 富楽里とみうら」に向かう。その前に千倉の畑と田んぼが気になる(11日ぶりだ)ので、寄ってみる。
 私の田んぼは、小麦が芽を出したらしいのだが、まだこれが麦だという実感がわくほど大きくなってはいない。それに田んぼの中を歩いてみてもばらつきが多くて、小麦の芽がかたまって出ているところもあれば、まったく芽を出していないところもあって、これで本当に小麦は大きくなるのだろうかと不安になる。


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小麦の芽らしきものがかたまって生えている。こんな感じで田んぼいっぱいに小麦が生えてくれるといいのだが。

 そして、次は畑だ。畑を見ると、海側から2本目の畝の海側の斜面の小麦はずいぶん芽の数が増えたような気がするが、それ以外の小麦はまだかなりバラバラにしか芽を出していない。これから暖かくなったらもっとたくさん芽が出てくるのだろうか、気になる。

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海側から2本目の畝の小麦。こんな感じで大きくなって欲しい。

 小麦の隣の、1/6にモリ子さんが土をかけてあげた(2回目に植えた)ソラマメは芽の数も増えているし、大きくなっているようだ。その隣のホウレンソウもちょっとだけ大きくなっているような気がする。その隣のグリーンピースは山側に植えたせいか、みな山側の溝に身を投げ出したような格好をしている。見るたびにこれで大きくなれるのか心配になる。一番山側の畝に植えたソラマメは、南側の端の4本だけが葉に斑点がついている。枯れそうなものもあるが、元気そうなものもあるので、これはどうなるのか様子をみることにした。

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左:2回目に植えたソラマメも大きくなりはじめている。 右:結構虫に食われているが、少しずつ大きくなっているホウレンソウ

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左:山側の溝に身投げしたような状態になってしまったグリーンピース 右:葉に斑点はついているが、元気そうなものもあるソラマメ

 ニンニク柵は切られていないし、柵の内側に植えたニンニクも元気そうだ。ニンニク柵の横の、昨年の7/26に剪定したウメは小さな1cmほどの花が2,3個ついている程度だ。千倉より寒い東京ではウメがたくさんの花をつけているのに。かなり強剪定したので無事に育ってくれるか心配だ。いろいろ気になるところはあるのだが、私の畑の作物たちは冬の寒さに身をすくめながらも少しずつ春に向かっているような気がする。
 田んぼと畑の確認が終わった私は急いで待ち合わせの道の駅に向かった。約束の時間になると、どこからわいてきた(失礼!)のか、年齢も国籍も家族構成も農業経験も違うような人たちが集まってきた。そのなかには、ひときわ背の高い五十嵐武志さんや奥さんのひろこさんもいる。あとから遅れてくる人もいるようだが、全員揃ったところでまずは五十嵐さんがやっている田んぼに5台の車を連ねて向かう。
 着いたところは山の斜面の棚田だった。私は、てっきり五十嵐さんは普通の立地の田んぼでやっているのではないかと思っていたが、そうではないようだ。棚田自体は写真で見たことはあるが、自分がその上に立ってみたのは初めてなので、おもしろい。上から見ると、楕円形の田んぼが段々になっている。遠くには房総のマッターホルンと言われる伊予ヶ岳も見える。この景色だけで私はここが気に入ってしまった。

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左端に伊予ヶ岳を望む五十嵐さんの棚田。見ているだけで気分がよくなってくる

 五十嵐さんは、棚田の場合の水供給のやり方や畔塗りの重要性などを説明してくれる。棚田の場合、畔幅が狭いので、畔塗りをいいかげんに行うと、何トンもの水の圧力で畔が崩れてしまうそうだ。その修復はとても大変だと言う。だから、畔塗りだけでも4,5回やるらしい。私は、モリ子さんたちから畔塗りは1回やるだけでも大変だと聞いていたので、千倉の田んぼでもそうしないといけないのかとびっくりしてしまったのだが、五十嵐さんは12月に見た私の田んぼの場合はそこまでする必要がないと言ってくれたので、ほっとした。
 五十嵐さんは、田んぼの立地条件によって田んぼの管理のしかたはまったく変わると言うのだ。私は、五十嵐さんの師匠の岩澤信夫さんの本で畔塗りと並ぶ方法で畔マルチのことが書いてあったので、畔塗りと畔マルチの長所短所を聞いてみた。すると、畔マルチ(畔シートとも言うらしい)の場合はシートと畔の間にザリガニなどが入ってしまうことがあるので、その対処方法も考えないといけない、田んぼの立地条件によっては畔塗りのほうがいい場合もあるが、田んぼに毎日来られるわけではない私の場合や高齢者の場合は畔マルチも選択肢としてはあると言う。本当に田んぼ仕事というのは、田んぼの立地条件や田んぼ仕事をやる人の条件によって変わってくるので、正解はないそうだ。私が五十嵐さんを評価するのも決してこうしなければならないと、自分の理論を押しつけないところがいいと思うのだ。
 ほかの人たちも田んぼの土の感触を足で確かめながら五十嵐さんに質問している。五十嵐さんは、それらの質問にわかりやすく答えていく。時折、横から奥様のひろこさんが初心者が理解できそうにないと思うと、補足してくれたり、初心者の人がわかるような言葉で五十嵐さんに質問している。なかなかいいコンビだ。

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五十嵐さんの田んぼを見ながら思い思いの質問を投げかけている。

 田んぼの見学が終わったあとは、近くの公民館の会議室に移動して勉強会が始まった。今日は初回なので、おたがいの自己紹介から始まった。この自己紹介がめちゃめちゃおもしろかった。自分探しをしているらしい若者もいれば、旦那さんと3人の子供を連れてきた、ほとんど農業未経験のお母さん、ハーバード大学の大学院生でTPPが日本農業に及ぼす影響を研究テーマにしている若い外人さん、南房総からだけでなく、茨城佐倉から来ている人もいる。農業経験も、長い人で3年くらい。これから田んぼ仕事を始める人も1/3くらいはいるようだ。でも、みんな、ここに来れば何か新しい経験ができそうだと確信しているのは共通しているみたいだ。誰ひとりとして間違って来ちゃったかなと思っている人はいない。私は、みんなの自己紹介を聞きながら、こんなおもしろいメンバーと一緒に田んぼ仕事の基本を1年間身につけられるのかと思うとワクワクしてしまった。
 そのあとは、第1回のテーマである「日本人と農業の歴史」の話に入った。在来種といっても、日本古来からある品種はクリやフキ、わさびなど5品種くらいしかないこと、あとは中国との貿易などを通じて少しずつ入ってきたこと、田んぼへの肥料の投入や機械化の進展、育ちの良い品種を選ぶやり方から交雑させる方法に切り替えることで日本の農業は収量を上げていったこと、お米作りがコシヒカリの普及を中心にして進んだこと、主な農法として岡田茂吉や福岡正信の自然農法や木村秋則さんの自然栽培川口由一さんの自然農の考え方があることなど、入門的な説明がスライドを見ながら行われた。私はその大半は本などを読んで大まかに知っていることだったが、今日来た人のなかにはそういうことをまったく知らない人もいるようなので、こういう入り方でちょうどいいのではないかと思った。
 でも、私は、五十嵐さんに以前から聞いてみようと思っていた質問をひとつだけ先走ってぶつけてみた。岩澤信夫さんの冬季湛水不耕起移植栽培の理論は本を読むと素晴らしいことばかり書いてあるのだが、なぜ広がらなかったのか。五十嵐さんは、この質問に対して、岩澤さんの時代にはまわりのお百姓さんが岩澤さんの理論を理解できなかったし、お百姓さんにとっても新しい農法を試すのはリスクが大きすぎて踏み切れなかったと言う。それが、ここにきて放置田んぼが増えてくるにつれて少しずつやってもいいという環境が整ってきたというのだ。私は、その回答だけでは完全には納得がいかなかったけれど、今日ここに来た人のなかには同じようなことを感じている人もいたようなので、こういう質問をここでしておくのもいいかもしれないと思った。たぶん、五十嵐さんと一緒に田んぼ仕事の勉強会や実習をしていくうちに五十嵐さんが言った意味もわかってくるだろうし、別の答えを五十嵐さんから聞けるかもしれない。
 最後に私は、五十嵐さんにとって農業をやることはどういう意味があるのかと聞いてみたら、五十嵐さんは、農業理論とかにはあまり興味がない、むしろ田んぼのなかでいろいろな生き物に出会えるのがおもしろいのだと言っていた。たぶん、今日ここに来た人たちの顔ぶれを見ても、五十嵐さんのそういう考え方に惹かれてきたのではないかと私には思えた。たぶん、難しい農業理論の勉強会だったら決してこういうメンバーが集まることはなかったと思うのだ。だからこそ、これから1年おもしろい経験ができそうな予感がするのだ。
 私は、明日の第2回目の勉強会に参加するため、夕闇が深くなって行く中、車を走らせていた。