上下巻だけど、合わせて500頁強程度なんで、一気に読めました。映画も観ていたので、場面々々が浮かびやすかったし。
裏表紙にあるあらすじ。
「九州地方に珍しく雪の降った夜、土木作業員の祐一は携帯サイトで知り合った女性を殺してしまう。母親に捨てられ、幼なくして祖父母に引き取られた。(ファッション)ヘルス嬢を真剣に好きになり、祖父母の手伝いに明け暮れる日々。そんな彼を殺人に走らせたものとは何か―。」(上巻)
「馬込光代は双子の妹と佐賀市内のアパートに住んでいた。携帯サイトで知り合った祐一と男女の関係になり、殺人を告白される。彼女は自首しようとする祐一を止め、一緒にいたいと強く願う。光代を駆り立てるものは何か。毎日出版文化賞と大佛次郎賞を受賞した傑作長編」(下巻)
一応ミステリでもあるので、これ以上のあらすじはやめておきます。ただ読み始めたら止まらない。それだけは間違いないです。しかし…、切ない話です。殺人を犯した主人公は確かに悪い。悪いというか人間的に弱いなぁと思う。その弱さが愛おしくもあるのだけど。そして彼以上の悪い奴も出てきますが、でも、自分の中にそういう"悪人"はいないと、はっきりと言い切れるかと言うと、難しい。
守るべきものがない人間と、守るべきものがある人間、どちらが強いか、という問いかけが出てきます。私的には、守るべきものがない人間は、自暴自棄になって周りの迷惑を顧みず突き進む事ができるから、一見強いような気がするけど、守るべきものがある者の強さは、それ以上のものだと思う。何故なら、守るべきものがある人間の強さは、自己犠牲をも厭わない本当の強さだから。守るべきものがない人間は、それでも自分を守ろうとする。守るべきものがある人間は、自分の身を捨ててでも守ろうとする。この違いは大きい。
映画もよくできていましたが、原作は更に深いです。主人公・祐一の動きを中心に、祐一の周辺の人、被害者の周辺の人の証言で構成された巧みな文章は、2時間の映画で納め切れなかった様々な人の想いが表現されています。できれば、映画を先に観て、原作を読み、そして2度目の映画を観る。これが「悪人」を楽しむコツではないかと思います。
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