作者は鈴木みそさん。「ファミコン通信」で、ゲーム業界の裏側を描いた「あんたっちゃぶる」が面白くて、以降最近の「限界集落(ギリギリ)温泉」まで、殆どの単行本を揃えています。当初から一貫して、取材を中心とした漫画で、タブーを気にせずどんどん描いてしまうので、読んでてとても興味深い。世の中のお金にまつわる話をルポした「銭」(全7巻)とかは、単にルポ漫画としてだけでなく、ちゃんと主人公たちの成長もストーリに織り込んでいて、難しいお金の話を判り易く説明していて、なかなかの傑作です。
さて、今回の「僕と日本が震えた日」も、単に被災地ルポをする話ではありません。3・11について。書きませんか?と編集者から言われた鈴木さんは、最初、あの現実の前に悩みます。しかし、大きな被害ばかりを描く事だけでなく、等身大の被害を描くことも大切という編集者の説得で、まずは自身の3・11の体験から描き始めます。そして、この本の印税について編集者に提示を求め、全額を寄付することを決め、スタートしました。
内容は、まず都市被災編「僕と家族が震えた日」として、自分と家族の3・11の状況を描きます。娘さんがディズニーシーで一夜を明かし、嫁さんは六本木から和服で16キロ徒歩で帰宅。一夜あけて、家族が揃った1コマは、自分の体験も相まってちょっと感動でした。
以降、
書籍流通編「僕と出版がが震えた日」
先端科学編「僕と加速器が震えた日」
日本経済編「僕と経済が震えた日」
食品汚染編「僕と放射能が震えた日」
東北取材編「僕と日本が震えた日」
と合計5つの取材によって構成されています。
途中、「正しい放射能の測り方」として「ガイガーカウンター編」「食品線量計測編」とあります。
放射能については、マスコミから流れる情報を単に鵜呑みにせず、一人一人が自己管理をする事が大切だという事らしいです。
この本は、ただ単に取材したことを漫画にしているのではなくて、作者の視点が入っているので、とても判りやすくて面白い。鈴木みそさんの漫画は最後必ずオチがあるのですが、これもまたちょっとブラックでいい感じです。
昨日買った「美味しんぼ」108巻よりも、身近で現実的で等身大の震災ルポでした。
これはお勧め。
第1話だけ、web閲覧可能です。(http://www.comic-ryu.jp/comics/bokutonihon/index.html)
- 作者: 鈴木みそ
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2012/03/02
- メディア: コミック
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