Hatena::ブログ(Diary)

平民新聞

 | 

2010-01-13(水)

[][]声

これは、GRデジタル2というカメラを手に入れた直後に撮ったものだから、かれこれ二年以上前の写真になる。その頃は縦横比1:1のモードが珍しくて、モノクロで、正方形の写真ばかり撮っていた。写真は二枚とも東京の飛鳥山公園という所の近く、歩道橋の上から都電荒川線の線路を見下ろして撮ったものだ。


ぼくは都電荒川線沿線の、線路のすぐ裏にアパートを借りて住んでいる。東京に来た時に何の前知識もなく不動産屋で一番安いアパートを紹介してもらって今の部屋に来たから、最初「天下の大東京になんでこんな一両編成の貧乏くさいチンチン電車が走ってるんや!」と真面目に驚いた。東京に住んでいる人でも、乗った事ない人わりといるんじゃないだろうか。せっかくだから、と引っ越した翌日さっそく荒川線に乗った。大人160円。新宿区の早稲田から、台東区の三ノ輪まで行ける。それからは何の縁があったのか、東京に来て最初に働いたのがあしたのジョーで有名な(?)山谷地域だったので、毎日荒川線に乗る事になった。三ノ輪で降りて、ソープランド街を眺めながら、酒くさいおっさんたちの暮らす町にいく。帰りはまた荒川線。疲れた体で銭湯に行き、部屋に帰ってぼんやりと、壁にもたれながら煙草をすって、酒を飲む。日本酒を二合、三合、四合、五合。アパートの、ちゃんと閉まらない窓の向こうからは、荒川線の踏み切りの音。踏み切りの音が始まってしばらくすると、線路を走る荒川線の、声がきこえる。ゴトンゴトン、ゴトンゴトン。まさに「声」という感じだった。今でもそうだ。街を歩いている時にきこえるのは荒川線の「音」という感じなんだけど、部屋に帰るとそれは荒川線の「声」になる。その声は、別にやさしくも厳しくもないんだけど、ただそこにある。ゴトンゴトン、ゴトンゴトン。閉まらない窓から入ってきてひび割れた壁に振動し、荒川線の声はいつもぼくの部屋にあった。月あかり。煙草のけむり。笑ってしまうくらいに悲しい時もほんの少しうれしい時も、荒川線の声は毎日ボロボロの窓をすり抜けてぼくの部屋にやって来る、ぼくが部屋にいる時も、いない時も。そして今日もまた、あともう少しで「やあ、おはよう」とでも言うように荒川線がぼくの部屋にやって来るだろう。ゴトンゴトン、やあおはよう、きのうは雪が降ったね、今日はいい朝だ、何がいいかって?それはわからないけれど、まあ、わからないってこともふくめて、ゴトンゴトン、とってもいい朝なんだ。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/heimin/20100113/p1
 | 
プロフィール

heimin

heimin はてなダイアリープラス利用中

団結しろ万国のまよなかの白痴ども/きみらのことは誰も詩に書かない(岩田宏/のぞみをすてろ)