大日密身和合仏

heisai2008-05-30

[神仏]大日密身和合仏
     

 『立河聖教目録』(たちかわしょうぎょうもくろく)に「大日密身経」「三角宝塔大日密身和合潅頂(かんじょう)本経」なる経典名が記されている。

 その経典に説かれているであろうと推測される、極め付きの奇仏の画像(村井市郎氏所蔵)。その像容はおおよそ下記の通り。

・ 三面十臂で、
・ 中面は宝冠の菩薩形、
・ 左面は黒色の不動明王、右面は赤色の愛染明王
・ 胴体とその二臂は白色と金色の二色の顔料で彩色。
・ 十臂の内のその二臂は、法界定印を結ぶ如来のもの、
・ 他の二臂は剣と索とを持つ不動明王のもので黒色、
・ あとは愛染明王の赤色の六臂−−−から成っている。

 そしてこの尊像は、愛染特有の宝瓶(ほうびょう)上の蓮台に坐し、不動の眷属たる矜羯羅・制咤(ウ冠をトル)迦の二童子を侍らせた三尊仏形式をなしている。

 胎蔵大日の身色は金色・金剛界大日の身色は白色に塗るのが儀軌に基づく原則であるが、本図像では中尊の躯幹を、白色の上に金色をまぶすことで「両部一体」を表現している。
 しかも、不動・愛染はそれぞれ胎蔵大日・金剛界大日の化身であるので、このニ尊(左面と右面)とも一体とすることで、中面・宝冠を頂く尊格(=中尊の躯幹)が胎金両部冥合(みょうごう)の大日如来である、ということをより明確に示している。

 これは、両部の大日・不動・愛染という一仏二明王、否、二仏二明王冥合の、世に類いなき四尊合体仏である。(絹本で、鎌倉末期ごろの作と思われる)

 [大日密身]とは、胎金両部大日おのおのの自性輪[理・智]二法身と、教令輪[不動・愛染]二応身との重合(二重に冥合した状態)を かく称したものであろう。

※村井市郎所蔵の『立河聖教目録』(明暦三年・1657)は、『宝鏡抄』(明暦ニ年)と合冊の版本。
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上記は『京古本や往来』第50号(1990)所載「珍書稀覯画の神秘的探索」、同第100号(2004)所載「珍書稀覯画探究余聞」(ともに村井市郎著)の記述の一部を、平斎の解釈に基づいて要約したものである。前日のブログも同断。