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2007-01-16

[][][]イビチャ・オシムの真実 21:37

昨年の12月1日にはすでに手元にあったこの本を、ようやく読了しました。


オシム監督の生い立ちであったり、選手時代や欧州での監督時代の話も非常に興味深く、現在のオシム監督の複雑な(複雑そうに見える)性格を推察するにも役立つかと思います。ただ、記録的な記述も多いので、一度読むだけではついていけない部分や眠くなってしまう部分もありました。

また日本語版が出されるにあたり加筆されたと思われる日本時代の部分も短いながらも興味深く読めました。いくつか印象的な部分を引用します。

ヨーロッパ滞在中に必ず質問されるのが、日本人選手とヨーロッパ人選手の基本的な違いである。肉体的条件では簡単な話で、日本人は生まれつき小柄であるということ。これは確かに現代サッカーにおいてはカバーすることが難しいデメリットである。しかし日本人選手は別のクオリティーを有する。それは他国選手より大きなクオリティーでもあり得る。端的に言えば、日本人選手はとてもスピードがあり、極めて敏捷で、また技術的にも優れている。

(本文158Pより、一部引用)


しかし、日本のサッカーが抱えている大きな障害がある。それは厳しい上下関係だ。日本の人口が約1億3000万人であることを考えれば、その状況は理解し得るものだ。確固とした上下関係がなければ、日常生活の全てがスムーズに機能することは難しいだろう。しかし、サッカーにおいてはこの考え方はひとつのバリケードでしかない。

(中略)

事実、日本人選手はその性格上、ひとりでは何も決定してはならない。「誰かに確認する前には何もするな!」と頭の中に働くブレーキがあり、これはメンタルブレーキとでも呼ぶべきか。選手たちはピッチ上で抜群の連携を見せていても、ひとりで何らかのアクションを起こしたり、フィニッシュまで持って行くという、大きな個人的責任を担う場面になると、彼らはまず監督の許可を得たがっていると私はいつも感じる。このピッチ上の行動形式はこの国での日常を反映するものだ。このように機能しているのが日本社会なのである。誰もが常に口を挟もうとすれば共同生活は難しいというわけだが、サッカーにとっては非常に残念と言うしかない。何故なら、サッカーはインプロヴィゼーション(即興性)が命だからだ。

(本文160Pより、一部引用)


勝つためのサッカーには、「スピード」が前提条件のひとつだ。これは特に日本では重要な要素である。スピーディな組織プレーを以ってすれば、日本人がヨーロッパの選手より劣っているフィジカル面でのハンディキャップを克服して、なお余りある。

(中略)

さて、「スピード」というテーマに話を戻そう。「速くプレーする」とか「速い」とはどういう意味だろうか。それは別に、相手選手より速く走れることを意味しない。実際、足が遅い名選手だってたくさんいる。私が意味するところの「スピード」とは素早く考えて、迅速に判断することである。これもひとつの「速さ」だ。速いプレーと即断即決することは現代サッカーでますます重要性を高めている。


サッカーは基本的に3つの要素から構成されるパズルだと私は考える。プレー、戦術、フィジカル・コンディションの3つのうち、ひとつしか満たさないのであれば少なすぎるだろう。ただし、「戦術」はちょっとした特別な位置を占めている。つまり、戦術はふたつのチームの違いを引き立てるし、弱い方のチームが勝つことに貢献することもできる。また、戦術によって様々な弱点をカバーすることもできる。しかし、この3つの要素のひとつが他の要素と相互作用しなければ、上手く機能しないのが常だ。

(本文164〜165Pより、一部引用)


代表監督としての私のポリシーは、代表チームもクラブチームのように率いる、ということである。つまり、選手たちはお互いをよく知っていなければならず、ピッチ上で意識統一が取れてないといけない。自分達よりも強いと仮定されるチームに勝とうと思えばそれしかない。ドイツでのワールドカップを終えての私の感想としては、日本代表は「エンジンが動かなくなった自動車」のようなものだった。このエンジンを再び作動させなければならない!

(本文172Pより、一部引用)

ふぅ、またちょっと長く引用してしまいました。現実的にフィジカル面での弱点があったとしても、その弱点を補って対戦相手に勝つための何かを考えるのがプロの監督であり、それこそ”策”であると思うのです。”策を弄する”というと非常に悪いイメージですが、日本人選手の弱点を挙げるだけで終わりではなく、弱点を補っていける方法を考え、それを長所として活用していく。そのようなチームを作るのがプロの監督であり、優秀な監督であると思っています。また、日本人の精神的構造の問題点を把握し、それと社会との関連性も鋭く見抜いてますね。

限られた時間を嘆くだけでなく、限られた時間の中で最良の仕事をする。そのためには、海外クラブ所属の選手たちの力を評価していたとしても、移動合流の時間を考えるなら、あえて”呼ばない”という選択もする。日本代表のエンジンを動かすために。


そして、オシム監督が考える良いサッカー、勝つためのサッカーの考えの一端を知る「速さ」というキーワード、そしてここには引用していませんが自分で考えて決断しリスクチャレンジする「勝ちたい」という意欲もキーワードかもしれません。

これらの引用部分以外でも多くのキーワードがあるのですが、特に印象的だったのがコレクティブという言葉の使い方でした。

マンUはイングランドのベストプレーヤーばかりではない。アーセナルの方が良い選手を抱えているし、チェルシーもリバプールも、その他のクラブの選手もそんなに劣っているわけではない。しかし、マンUには全員が出せる限りの最高の力を発揮するコレクティブがある。アレックス・ファーガソンは自分なりの考えを持っており、それを実践に移したまでだ。それも成功裡に。

”コレクティブ”がオシムサッカーを理解する一番のキーワードのように思えてきました。*1

[][]”コレクティブ”と”ディシプリン” 16:03

で、上の言葉の印象が、前の前のトルシエ監督が好んで使った言葉と同じようで違う意味で、面白い使い方だなと。


コレクティブ

集合的無意識

ユングの用語。個人的な意識の領域を超えた、民族・集団・人類など人々の集合のもつ無意識。


ディシプリン

「弟子(disciple)、門人の教育」を原義に持つ英語

訓練、鍛錬、修養、躾、規律、風紀、統制、懲罰、調教、懲戒、折檻。


オシム監督とトルシエ監督の使う(使った)言葉が似てるですけど違うのが面白い。欧州地域出身の監督でサッカーのトレンドには敏感な良い意味でのサッカー馬鹿のお二人だと思いますが、性格なのかそれまでの環境なのか日本代表監督就任時点での年齢や監督としての成熟度の違いなのか、そんな様々な要素が欧州的サッカーの大枠の中でも味付けの違いとしてこのような言葉の使い方の違いに出てきているのかな、などと考えてしまいました。

*1:訳者あとがきも読みましたが、それについては長くなりそうなので、また別の機会に。

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