高校生3人でチームラボ行ってきた記

参考リンク:http://d.hatena.ne.jp/gotto-s/20090218/1234957041

去る3月10日火曜日、id:cooh(@cooh)id:quolc(@quolc)id:Iketaki(@Iketaki)の三人の高校生で、チームラボ株式会社に行ってきました。
今回の訪問もtwitterを介して実現しました。やりとりは以下。

tks いいなあこのブログ。 チームラボに社会科見学したがる高校生とかいるのかな。 http://tinyurl.com/d3xp4v 2009/02/18
21:41:30
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tks @cooh @gottos @Iketaki @quolc @shitu チームラボの中の人です。よければ、チームラボにも来ます? 2009/02/18
21:48:09
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quolc @tks とても興味あります!是非伺わせて頂きたいです。 2009/02/18
22:39:50
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cooh @tks 帰宅しました。興味あります。情報が錯綜して欲しくないので、 @quolc と調整してくださると助かります! 2009/02/18
23:52:32
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tks @cooh 猪子さんも会いたがってたのでぜひ皆さんで来社ください。 2009/02/19
00:14:54
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@gottos @shitu は残念ながら行けないということで、3人で行くことになりました。
本郷三丁目駅で待ち合わせました。春日通りを後楽園方面へ少し歩き、右に折れるとチームラボ本社のある本郷フジビルが見えてきます。
少し早く着きすぎてしまい、遠くからビルを眺めていると、非常階段の所に人影が見えたので、例によって*1コンビニに逃げ込んで時間をつぶしたりしました。
待ち合わせは18時だったのですが、僕らは5分前に到着しました。エレベーターで2階にあがると、3階に案内されました。

はじめ、僕たちをチームラボに呼んでくれた高須さん(@tks)から、チームラボとはどのような会社か、どのようなサービスを作ってきたか、などの説明を受けました。

チームラボは、社員が100名を超えるほどの大所帯で、主に受託開発を行っている会社です。事業内容は多岐に渡り、HPでは「何でも屋」な印象を受けました。


サグールテレビ」「マイナビバイト」「iza」「Laboo!」などのサービスを実際に見せてもらったり、KDDI au design project 2007の「ACTFACE」(右画像)のデモ映像を見せてもらうなどしました。「水墨空間」について、説明を受けながら動画を見せていただきました。

しばらくすると、社長の猪子寿之さんがいらっしゃったので、質問などしながら、お話を聞いてきました。

チームラボについて

――チームラボについて教えてください
猪子 チームラボはSIerなんだよね。受託でずっと作り続けてる。サービスというのは苦手で、相談を受けて次々と作るのが好き。
コンセプトはテクノロジー&クリエイティブなんだけど、テクノロジーというのは検索エンジン・レコメンデーションエンジンやマッチングなど中のこと、クリエイティブはコンセプト提案・プランニング、アートやデザインなど表面的なところをやってる。


 「SAGOOL」では「おもロジック」という独自の検索アルゴリズムを使ってて、「サグールテレビ」はローカルアプリケーションみたいに動画が再生できるようにしてる。いずれにしても、未来へのヒントになればいいなと思いながら作ってる。「idu+plus」は企業HPでゲームが出来たらいいな、と思ってこんな感じにした。普通じゃつまらないから。


 「ACTFACE」ではケータイのインターフェースを変えることを意識した。iPhoneもそうなんだけど、今はハードもソフトも同じ会社がやっていかなきゃいけない時代になってると思う。「ACTFACE」では目的のためのUI(行為)から、行為自体に目的を持たせることを考えた。電話をかけるためとか、メールをするために、僕らは仕方なくボタンを押すわけだけど、その「ボタンを押す」という行為自体が楽しくなればいいんじゃないか、って。そこで、「rhythm」では「押すこと/押し方」に、「play」では「使うこと/使い方」に注目した。
 でも、この「行為自体に目的を持たせる」ってのは僕らが独自に考えたものでもなんでもなくて、昔から日本が得意にしてきたことだと思う。
 前に「茶」についてイギリス人が書いた本を読んだことがあるんだけども、そこではイギリス、中国、日本の茶について書いてあった。イギリス・中国のところでは「何度で入れるとおいしい」「どのくらいおくとおいしい」「この茶葉がおいしい」とか書いてある。なのに日本の章に入ると「わけわからん」って書いてあるわけ(笑)日本の茶道って「どう飲むか」「器は何を使うか」とかいうところにこだわるじゃない。そんなことお茶をおいしく飲むためには関係ないのに、日本ってどこかそういう「行為自体」に目がいくところがあると思う。

情報化社会の中で

――HPには「日本」というキーワードが度々出てきます
猪子 日本は大事だと思うよ。僕は海外旅行とか好きだけど、こんな世界中いろんな国に行けるパスポートはあまりない。それって日本が信頼されてるから、日本が豊かだからじゃない。だから日本にはずっと豊かでいてほしい。
 社会の豊かさというのは技術と文化で成り立ってると思う。文化はものの付加価値をあげていく。ハーレーなんて、燃費は悪いのに、あんなに売れてる。それって文化の力でしょ。なのに今までは技術の方ばかりで、文化は無視されてきた。だから、文化を上げればメイド・イン・ジャパンの価値が上がると思って。
 特に、これからは情報産業が中心になっていって、パソコンさえあれば人次第でいくらでもいいものが作れる時代になってる。技術格差が格段に減る。そうしたら、もちろん技術で頑張ることも必要だけど、文化の付加価値が重要になってくる。情報化の社会で何かやっていくには、新しい表現をしていくことが必要。


――チームラボを設立しようと思ったのはなぜですか
猪子 日本の未来がよくなるように、日本の豊かさが継続できるように、というのがずっと思っていたことで、中学のときにそういう電波を受けちゃったんだよね(笑)だからそれは「夢」というより「義務」なんだよ。日本をよくする、っていう。そのためには評論家になるんじゃなくて、自分でやってみなくちゃ行けないな、と。楽しそうにしていればみんなもやるでしょ。
 別に起業したかったわけじゃない。そういう会社が当時なくて、あったのかもしれないけど、僕は見つけられなかった。だから、自分で作ろうと思って、みんなを騙して一緒に起業した。あくまで日本がよくなってほしいから、外資は「ないな」と思っていた。


――草食系ベンチャー*2という言葉が最近ありましたが、チームラボはどうでしょうか
猪子 草食系ベンチャー?(笑)何それ、例はどこが挙げられてるの?……pixivか。
 少し当てはまるかもしれないな。儲けたいとは思ってるし、人もたくさんいるけど、IPOとか上場は考えてないし、売り上げ目標とかの興味もない。
 そもそも、産業社会と資本主義は相性がいいかもしれないけど、情報社会はそうじゃないと思ってるから、あまり資本主義に寄らない方がいいと思ってるんだよね。ベンチャーキャピタルも入れる気はないし。ただ最近は案外そうでもないのかなと思うこともあるかも。


――情報社会と資本主義は相性が悪い、というのは?
猪子 産業革命後が産業社会で、情報革命後が情報社会とするでしょ。すると、情報革命前の会社というのは「買える」んだよね。つまり、株式を取得して会社を買うことが出来るわけ。情報社会でも確かに会社は「買える」んだけど、それは買うことにならない。価値が無形なんだよ。
 トヨタを買ったらさ、そのままトヨタで儲けられそうでしょ。トヨタの価値っていうのは、工場だったり、販売網だったりするわけ。だから、それは「買える」。だけど、Googleを買ったところで、そのままじゃどうしていいかわからない。確かにサーバーとかはたくさんあるのかもしれないけど、人が抜けちゃったらGoogleとして儲けることは出来ない。逆に、Googleの上位陣30%が抜ければ、それで新しいGoogle2みたいなのが作れそうじゃない。でもトヨタの上位30%が集まっても、トヨタ2を作ることは出来ない。Linuxなんて、あんなにシェアを持ってるのに、会社である必要すらない。だから、情報社会は株式だとか資本主義にはあまり相性が良くないのかなと思う。
 会社も大きくしたいんだけど、それはただ拡大したいというわけじゃなくて、目的が「自分たちの作ったものが未来や世界に行くこと」だから。会社は大きな方が有利。それに、僕らはすべて自分たちでやりたいタイプだから、必然的に大きくなっていっちゃう。「デザインだけ外注」とか、そういうことはしたくないし、してない。

文化を武器に

――「技術だけでは社会の武器にならない」という話が出ました
猪子 さっきも言ったけど、技術格差が減ってるから、情報技術に関しては特に、発展途上国だろうと先進国だろうと関係なくなってきてる。車とか、産業社会の技術に関してはまだ先進国に優位があるんだけど、情報技術はそうもいかない。


 じゃあどうするか、先進国が優位に立てるのは何か、という話だけど、それはやっぱり「文化」だと思う。iPodは先進国でしか生まれない。それは何故かと言うと、外で通勤中に音楽を聴くっていうライフスタイルが先進国にしかないから。「かっこいい」「かっこ悪い」は文化依存で、例えば「小悪魔ageha」みたいな格好は、渋谷とかにいるからかっこいいのであって、ガンジス川のほとりにいたってかっこよくないじゃない。確かにかっこいいのかも知れないけど、その格好が日本じゃなくてインドで生まれたら、同じかっこよさではないと思う。
 小悪魔agehaは東京とセットで初めてかっこいいし、iPodアメリカとセットで初めてかっこいい。そういうのは先進国だけが持ってるライフスタイル・文化に依存してる。
 欧米と日本ももちろん文化が違って、欧米はどちらかというと「目的のための手段は合理的であるべき」って感じなんだけど、日本は行為(手段)に意味を持たせる。茶とかね。「ACTFACE」もそうなんだけど。
 僕はマリオが大好きなんだけど、あれが出てきて何がすごいって、初めての「目的がないゲーム」なんだよ。さわってるだけで楽しいゲーム。そんなの初めてだった。確かにクリアはあるんだけど、それが目的と言うよりは、走って、ジャンプして、が楽しい。これは日本でしか出てこないゲームなわけ。

「水墨空間」について

――では、「水墨空間」は日本の文化を発掘しよう、と?
猪子 水墨画って何だろう、と。水墨画って「やぁっ」って描いた感じがするでしょ。僕らはあれを見ると写実しているようには見えなくて、個性の産物に見える。だけど、普段大和絵では写実的に描いてるような人も、水墨画になると急に非写実的になっちゃう。個性もないわけ。じゃあ、写実しようとしたんじゃないかな、と思ったんだ。
 あれが写実だとしたら、何を描いてたんだろう。もし本当に写実なら、それをコンピュータで作れるはずだ、と思ったわけ。CGで作ったものを大和絵みたいにするみたいに*3水墨画でも出来るな、と。それで、その変換の過程で、昔の人がものをどのように見てきたかがわかるんじゃないかな、って。


――結果はどうでしたか?
猪子 例えば一本の木があって、それをどこから見ても水墨画みたいに見せるには、森みたいな変な木を作る必要が出てきた。ちょうど「風の谷のナウシカ」の腐海みたいな。一本だけなのに。
 で、ちょっと電波なことなんだけど、彼らはエネルギーを描いてたんじゃないかな、という仮説が。


――エネルギー、ですか
猪子 うん。家がなかなか上手く作れなかった。どうやっても、どこか水墨画っぽくならなかった。調べてみると、水墨画に家が描かれてるものはとても少ない。これは「省いていた」のでなく、「描けなかった」んじゃないか、と。つまり、エネルギーが出ていないものは、描けない、と。


――エネルギーの輪郭を描いてるから、線があのようになる?
猪子 そうだね。


と、ここで、時間が遅くなってしまったので、名残惜しくも訪問終了ということになりました。

pixiv×チームラボ

猪子 そうそう、あの記事読んだんだけど、君らはpixiv好きなの?
――あ、はい
猪子 絵が好きなんだ?へえ、面白いね……


――pixivさんとは仲が良いんですか?
猪子 うん、仲いいよ。うちの取締役の青木がpixivの取締役で。前、pixivにベ
ンチャーキャピタルが来たときは、「***********************************(笑)
(しゃべりながら、書かないように(笑)と言われました)

 でもね、金がなくてベンチャーキャピタル受け入れるくらいなら、つぶれた方
がいいかな、とも思う。会社つぶれても、Linuxみたいに、運営してくれる優秀
なユーザーがpixivは多いだろうから、サイトは、問題なく発展したりして。

 ああいう****な会社っていいよね。隙だらけじゃん。そういう会社がいいもの
作ると思うんだよね。





 
帰る前に、一通りオフィスを歩かせてもらいました。チームラボではNHK美の壺」の新オープニングを担当されるようで、その制作風景ものぞかせてもらいました。リアルtodeskingも見ました。
受付にはタッチパネルで担当を呼び出す装置の試作品(画像左)が置いてあり、その横には社員がジャケットになっているCDが大量に飾ってありました(画像右)。
本当はファミコン風の会社案内があったらしいのですが、メンテナンス中ということで電源が入っておらず、残念でした。


情報技術で日本再生。ぜひ、これからも突き進んでいってほしいと思います。僕らも追いかけます。

 

*1:pixiv見学の際もコンビニで時間をつぶしました。

*2:クレイジーワークス総裁日記中の記事。該当記事は消えているが、以下はそこで挙げられていた条件。・あまりガツガツしない。・ムリに売り上げをふやなさい。・割と優秀。・お金より自分らの居心地や目的を重視。・IPOとか上場なんか考えていない。・社長は20代でスーツをあまり着ない。・「もっと稼げるんじゃないの?」ということをあえてやらない。・ベンチャーキャピタルが来ても、出資を受け入れないことも多い。・大企業から大きな金額の案件が来ても、あまりやりたいことと違うとあっさり断る。・規模拡大もそんなに考えていない。10人以下でまったりしてる。

*3:花と屍