宇宙ショーへようこそ

ネタばれ付き感想
渋谷パルコの映画館で見てきた。封切り初日で、しかも1日1回なのに、ガラガラってのはマズイだろ、いくらなんでも。
まず最初にあたりさわりないところから。ベサメムーチョって、イノシシ好き?かみちゅで出して気に入ったのかな。清兄ちゃんのキャラはさすがに地味すぎないか。金魚鉢の人は気に入った。ところで獅子堂桜は、なんでこんなとこでロケット作ってんだ。フルネーム出しても、もう誰も覚えてないかもしんないけど、宇宙をかける少女でエイリアンなえり巻してた天才幼女ね。あと、夏紀が動物の尻の穴を見るクセが面白かった。
印象は一言でいえば、まさに「宇宙ショー」だった。とにかく絵がキレイ。前半は田舎の日常風景を細かく描き込んでるんだけど、ジブリアニメとはまた違った、ちょっと地味に抑えたような感じ。後半、宇宙に飛び出すと、対照的に、爆発したようにハデだけど、やたらと情報量が多いのに画面がうるさくないのは手描きをメインに活かしたからか。ポチの家に行って、また田舎の風景に戻るんだけど、植生とかで違いを強調したりしないんで、異星というより中世ファンタジーっぽい。
最近のSFアニメだと、宇宙人とかもっと考証しちゃうんだけど、タコやらカボチャやらの宇宙人が宇宙バーガーだの宇宙コーラだの飲み食いしてるみたいな、わりと懐かしい漫画映画ノリ。ただし描き込みは細かいし、画面中でグリグリ動くし、劇場版ならではの贅沢な作画。奇想天外なガジェットとバリエーション豊かな造形の宇宙人、一方で車内販売でお菓子買ったりみたいな日本の情景をそのまま移し替えた描写がミックスされ、物見遊山で異世界を旅して回っているような、なんとも心地の良い映画だった。あくまで現在の日常生活を便利で楽しくするようなガジェットで、生活習慣や社会が全く違う異文化の道具ではないから、まさに修学旅行で初めての街に来てはしゃいでまわってるような、そんな感じ。さすがに、いきなりやってきた地球人が、すぐアルバイトで働けるのはちょっと驚いたけど。「宇宙ショー」は劇中の、宇宙で人気の番組名だけど、この映画自体が見せ物としての「宇宙ショー」になっていた。
途中のカーチェイスも、クライマックスのバトルアクションも、よく動くし爽快感があるし、おおいに盛り上がった。恥ずかしい告白をしながら戦うのは、プリキュアのデザトリアンみたいだったけど。全宇宙に勇名を馳せる大冒険になるわけだけど、あくまで小学生らしい動機や心情で動いてるのもよかった。声優に子役を使ったのも、吉とでてたね。ただ、そのへんの説得力が増した分、最年少の周が一番しっかりした意見を言ってるセリフにちょっと違和感があったりもした。
難点は、説明の少なさによるわかりにくさ。ストーリーそのものはシンプルですっごくわかりやすい。でも、一直線のストーリーで理屈抜きに楽しい娯楽映画、というにはキャラクターがかなり複雑。膨大な設定を作り込んで、記号的ではない生きたキャラになってることと裏腹ではあるんだけれども。悪役のバックグラウンドとかポチとの因縁とかさらりと流されるだけで、特にマリーとかなに考えてるのかよくわからない。まあ紅の豚ジーナ、とか思い出すけどね。裏にドラマを感じさせる脇役、というんならそれでもいいんだけれど、役柄としてはラスボスになるわけだし。クライマックスがわかりやすい悪役との対決じゃないだけで、印象はかなり複雑になる。
とにかく説明は少ない。ペットスターの秘密とか、ペットスターとワサビの関係とか、物語を動かしてる原動力なんだし、もうちょっとしっかり説明してもいいと思うんだ。悪役サイドの主張も説明してこそ、悪役としての魅力も引き出せるし、クライマックスも締まる。まあ夏紀にすればポチとネッポの因縁とかペットスター文明とか関係ないかもしんないけど、デザトリアン状態で古代文明のロボットと戦ってる夏紀は、一体なにと戦ってるんだということになってしまう。しかも実はポチとネッポの葛藤には、周が入国審査のとこで答えを出しちゃってるんだよね。だから最後のバトルとドラマで、葛藤がズレちゃってる。
夏紀と周のすれ違う想いが理解し合うに至るドラマは、キャラの掘り下げから丁寧な作画、演出と相俟って感動的だし、ハデなアクションが盛り沢山の娯楽活劇は楽しいんだが、その二つの組合せが微妙にズレて相乗効果を出せないでいるように感じた。