昭和元禄落語心中

昭和元禄落語心中(10)<完> (KCx)

昭和元禄落語心中(10)<完> (KCx)

ただひたすら芸を磨き、自分の話芸は一代限りと言い切る落語家八代目有楽亭八雲の一代記。だから「落語心中」。と言っても、物語は八雲の弟子与太郎を中心とした現代編と、八代目八雲を襲名する以前の菊比古と兄弟子である助六の物語である回想編とが組み合わさっている。ストイックに高座に向かう菊比古にとって落語は自分のためのもの。一方兄弟子の助六は常に客に寄り添い、時代に合わせて自在に変わっていく客のための落語にこだわる。対照的な二人は良きライバルであり、親友でもあった。落語会を背負う名人となる二人だったが、助六は事故で死んでしまう。一人残された菊比古は、襲名して八代目八雲となり、孤高の名人となっていく。そこに素人の怖いもの知らずで強引に弟子入りしたチンピラが、やがて助六の芸を知り、惹かれていく。これは八雲と助六をめぐる因果の物語であり、芸人譚の傑作であり、屈指の落語マンガである。落語の芸風の違いによる演じ分けや、継承される芸風が物語の肝となっているが、マンガの表現としてしっかりと描写されている。全体の構成も見事で、全10巻できっちり完結している。長くも短くもなく、最近では本当に珍しい。アニメ化もされたが、こちらも名人の落語の表現では原作に負けていない。高座シーンにたっぷり時間をとって、ベテラン声優の芸を堪能させてくれる。
昭和元禄落語心中(1) (ITANコミックス)
昭和元禄落語心中(2) (ITANコミックス)
昭和元禄落語心中(3) (ITANコミックス)
昭和元禄落語心中(4) (KCx)
昭和元禄落語心中(5) (ITANコミックス)
昭和元禄落語心中(6) (ITANコミックス)
昭和元禄落語心中(7) (ITANコミックス)
昭和元禄落語心中(8) (ITANコミックス)
昭和元禄落語心中(9) (ITANコミックス)