「『韓半島とユーラシア東海岸の五〇〇年史』について」

『国文研ニューズ』No.43(平成28年5月6日発行)にこういった文章を載せました。

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○『韓半島とユーラシア東海岸の五〇〇年史』について
金 時徳(ソウル大学奎章閣韓国学研究院 助教授/平成21(2009)年度修了生)

この度、拙著『韓半島とユーラシア東海岸の五〇〇年史』(メディチメディア社〈韓国ソウル〉、2015)が、韓国の2015年度世宗図書・教養部門に選ばれた。この事業は韓国の文化体育観光部が毎年
1200種の図書を選定し、種毎に1000万ウォン(96万円程度)分を仕入れ、韓国内の図書館や海外の韓国関係機関に配布するものである。拙著はまだ日本語訳されていないが、茨城キリスト教大学の染谷智幸教授による書評が『リポート笠間』59号に載っているので、詳しい内容はこちらをご参照いただきたい。

拙著は韓国最大の日刊紙『朝鮮日報』の系列誌である『週刊朝鮮』に、2014年に1年間連載したコラムを集めたものである。紙面の性格上、筆者が研究を続けるなかで見えてきた設計図を、韓国社会に紹介する内容となった。拙著を通して韓国の市民に伝えたかったのは、?歴史を長いスパンで眺めること、?歴史をいわゆる「歴史学」的な方法でのみ見るのではなく、経済・文化など様々な面から捉えること、?ユーラシア大陸の東海岸という空間のなかに置かれた地域としての「韓半島」の歴史を眺めること、?中国中心の世界観からの脱却の試み、の4点である。

この本は私自身の予想に反して韓国社会で好意的に受け入れられた。それは、激変する東部ユーラシアの情勢が、日本以上に島国的な性格の強い「韓国」の市民をも刺激し始めたことを意味することだと私は解釈している。元となったコラムを連載した後、私は更に『朝鮮日報』『中央日報』などの韓国日刊紙にコラムを書くようになったが、このような時にこそ本領に戻るべしと思い、今年1年は、2010年に刊行した『異国征伐戦記の世界―韓半島・琉球列島・蝦夷地』(笠間書院)の続編『壬辰戦争の系譜学』(仮)を執筆することにしている。『異国征伐戦記の世界』の韓国語訳は、今年の上半期に出版される。この続編も、いずれ日本語訳されることだろう。

是非ご高覧いただき、ご教示下されば幸甚に存じます。

http://www.nijl.ac.jp/pages/news/043/043zentai.pdf