3D小説 黒崎リョウ

2013-05-03

Scene18 2/3


 診療室を出た時に、吉川が言った。
「嘘だよね?」
 こいつまで騙す必要はない。
「もちろん」
「大丈夫なの? そんな嘘、ついて」
「さあ」
「さあ、って」
「とにかく入院させて貰えなきゃ、どうしようもないだろ。嘘よりも命の方が重いさ」
 早く、モップの飼い主を見つけなければならない。タイムリミットはあいつが入院している間だろう。
「でも治療費を払えなきゃ、モップ追い出されちゃうかも」
「あの獣医、そんな人には見えなかったけどな」
「そう?」
「どうかな」
 ただ話していて誠実そうだと思っただけだ。そういう直観には、あまり自信がない。
 オレは強引に、楽天的に考える。
「なんにせよ病気を治すよりは、金を集める方が簡単だ」
 そして、治療費を手に入れる方法に関しては、目途が立っている。今日のぶんくらいならなんとかなるはずだ。
「前進してるんだから喜ぼうぜ」
 オレは笑う。
 上手く笑えているだろうか? きっと大丈夫だ。
 だって、ほら、吉川が笑った。

 ゲーム機は友達を作る道具になるかもしれないけれど、でも。
 やっぱりモップの命や、吉川の笑顔の方が、ずっと重い。


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