3D小説 黒崎リョウ

2013-05-03

Scene21 1/2


 結果的に、ゲーム機を売ってよかったことが、1つだけある。
 手元にそれなりの金が残っていたことだ。

 父と母が正式に離婚することは、すぐにわかった。父は東京で新しい仕事を始めるのだという。オレもそれについて行くことに、自然と決まっていた。
 妙に清々しい気分だった。
 ――邪魔なのよ。あんたがいるから、結婚できないの。
 母の言葉の正解が、ようやくわかった。
 正式に離婚が成立して、オレが父の方についていけば、母は幸せなのだ。2人に誕生日を祝ってもらうことはできなくなるけれど、それほど悲観的ではなかった。
 ――生きてるってことは、それだけで奇跡的に幸福なのさ。
 焦らなくていい。長い目で、その夢を叶えていこうと思った。
 ゆっくり、じっくりと、間違いを正していこう。
 心残りなのは、もちろん吉川のことだった。
 あいつと公園で過ごせる時間は、両親の離婚が差し迫る中で、確かな安らぎだった。誕生日には彼女に祝って貰うことさえできた。
 引っ越しについては、なかなか彼女には伝えられなかった。結局、正直に話すことができたのは、当日になってからだった。
 その時にゲーム機を売った金が役に立った。
 わりに潤沢な予算で、彼女への贈り物を選ぶことができたのだから。


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