3D小説 黒崎リョウ

2013-05-03

Scene13 1/2


 満点の答案用紙を見て、ため息をつく小学生を見たことはあるだろうか?
 オレは一度だけ、それを見た。
 教壇で、先生が一枚ずつ答案を返却して、同級生たちがめいめいに騒いでいる時だった。
 その中でオレは、まっすぐに自分の席に戻った。点数はそれなりに誇れるものだ。だがそれを自慢する友人は、オレにはいなかった。
 ぼんやり席に座っていると、前の席の女の子が戻ってきた。右手につかんだ答案用紙を覗き込んでいる。難しい表情だ。眉間に皴が入っていた。
 ――点数が、悪かったのかな。
 オレは単純にそう考えていた。
 彼女が席について、答案用紙が見えた。
 赤いペンで右上に大きく、100と書かれていた。
 彼女は深々とため息をついて。答案用紙を、すぐに鞄にしまった。
 不思議な子だな、と素直に思った。

 その女の子が、今、目の前に立っている。
 息を切らせて、なぜだか手に、食べ物が入ったタッパーを持って。
 へんな表情だ。驚いているような、怖がっているような。
 ――吉川が、モップの飼い主なのか?
 きっと違う。食べ物が入ったタッパーを持って駆けつけるのは、飼い主の行動じゃない。吉川はきっと、オレと同じように腹を空かせたモップに出会って、それを取ってきたのだ。
「こっちこいよ」
 なんだか気恥ずかしい。でも他にどうしようもなくて、声をかける。
「それさ、こいつにやるんだろ?」


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