あっと驚くジャナクプル! ネパール東南部、ラーマーヤナの故郷へ


カトマンドゥからバスで11時間、東ネパールのジャナクプルへ。

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ジャナキ寺院を中心に広がるジャナクプルは、詩聖ヴァールミーキによる壮大な叙事詩ラーマーヤナの舞台となった場所だ。
これまでのネパール旅行記は、こちらで。

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バスを降りて、砂塵舞う朝焼けの街をゆく…。とその前に、バスパークにダッシュで戻ります。バス車内に上着を忘れてたことが発覚したので、車掌さんに事情を話して見つけてもらった。「Oh, danger danger...」
気を取り直して地図をジロリと睨みつけ、街の中心部に移動していくと…

…えぇ?

「ブタが、こんなところにだとーっ?!」
富野台詞がつい口をついて出てしまうね。まともに突進を食らったらアバラの2〜3本は持ってかれちまいそうなサイズで、それも立派なたてがみつきのやつです。そこら中をウシやヤギが闊歩しているネパールとはいえ、自由に街を闊歩するブタを見たのはこれが初めて。
こういう思いもよらぬハプニングがあると、バックパックが急に軽くなるね。新鮮な感動を胸に抱きつつ朝ぼらけの街を突き進んでいくと、ジャナキ寺院が眼前に姿を現しはじめた。

ラーマーヤナのヒロイン、シータ姫を祀ったこの寺院は、ネパールのその他ヒンドゥー寺院とは趣が違っていて、それもそのはず…このあたりはミティラー地方と言ってネワール族のとは別物の文化が栄えてきたんだって。文化圏はインドとの国境を跨いでいて、どっちかっていうとインド寄りの文化。ちなみにこの寺院の建築様式は、ムガル様式という。
本堂に上がりこもうとしたら、周りの人たちから注意を受けてしまった。特に断り書きはなくとも、ヒンドゥー教の寺院では敷地内に入る時に履物を脱ぐのが常識になってるみたいだね。ごめんなさい…。
そんなこともあって、あたりにウシの糞などがこびりついた堂内を裸足で歩んでいく羽目になった。行商のお母さんから礼拝グッズはどうですかって勧められたりもしたんだけど、作法がわかんなかったので、現地の人たちが礼拝しているのを後ろから眺めてるしかありませんでした。
門のところにはウシがいて、暗がりからぬぅっと首を突き出している。

「どれ…」

「そろそろ行くとしようか…」

スク・サガル

とるもとりあえずは宿ということで、ジャナキ寺院のすぐそばにあった、スク・サガルというゲストハウスにチェックインすることにした。『地球の歩き方』によれば隣接しているレストランのスイーツが絶品とのことなので、むしろそちらが目当てです。
未就学児童っぽい少年がフロントで番をしていて、英語がほとんどまったく通じないのにどうやってチェックインしたのだろうかと今から思えば不思議だ。40秒で宿帳に名前を書き込み、宿代を前払いして部屋に転がり込むと、後はなす術もなくベッドに倒れるしかなかった。昨晩がバスだったこともあって寝れてないし、体じゅうが汗でベタベタ、もう限界です。

人生最悪のユニットバス

ここのシャワーとトイレの設備がひどい。インド式トイレのユニットバスという時点ですでに超デンジャーなんだけど、便器より一段低いところにシャワールームが設置されている…。
この構造の意味するところが、あなたにはおわかりか。
一応水洗にはなっていて、便器の斜め上にある蛇口をひねると、糞便に向かってシュバーッと水が噴出する。こんなんでもちゃんと流れるのがびっくりだよね…でも、なんか跳ねまくってるんだけど…。
ということもあってジャナクプルには一泊だにしなかったんだけども、いざ街区をウロチョロしてみると見どころがもう数え切れないくらいあって。

ジャナクプル散策


ジャナクプルには大きな池がいくつもあり、人々の沐浴する姿をそこかしこで見ることができる。裸になってる女の人もいたね。

「あぁ〜ハヌマンよぉ〜、口元キュートな猿の神〜♪」
修行者っぽいルックスのおじさんが、ハヌマンに向かって吟じているという場面。陰りのない朗々とした声で歌い上げてた。

池の周りに沿うようにして、寺院がいくつか立ち並んでいる。ペンキべた塗りの彫像がそこには据えられています。しっかりとメンテされている感じで、観光資源も兼ねているんだろうけども、日々の信仰生活のなかにしっかと根付いたイコンというわけです。すべてラーマーヤナを題材にとっている。

衛藤ヒロユキ風 ↓山野一

なんかちょっとこう、いい感じですよね…。

なんていうお寺だっけ、たぶんシヴァ寺院だと思う。ジャナクプルではただひたすらさまよっていただけなので、散策したルートや立ち寄った場所の名前がことごとくあやふやです。

これも池に周りにあった建物だけど、さっきとは別のところ。

横から見ると立体じゃなくて、レリーフ状に彫塑されてたりする。

ラム・ジャナキ結婚寺院


ジャナキ寺院に隣接しているこのお寺では、ラーマーヤナに出てくるラーマ王子とシータ姫の結婚シーンがこれでもかこれでもかと立体で再現されています。

結婚式が行われた舞台となったのが、このジャナクプル。

映りこんでるのはジャナキ寺院。入場料はたったの20ルピーと、実に良心的な価格でした。


ラグパティ・ミスタン・バンダル

暑さにグッタリしたせいかだんだん甘いものが恋しくなってきたので、ゲストハウス横のレストランに移動。
確かにスイーツは絶品で、ヤギの乳を固めたケーキも美味いし、ラッシーなんかは皮膜の上に糖蜜がよく染みた干し葡萄がのっけてあったりして、まぁアリも浮いてたんだけど、かなりの満足感でした。お昼にはダルバートもここで食べた。

ここのオーナーの息子さんかな、左に映ってるクマルとかそんな感じの名前のやつに絡まれまくった。
本人や奥さんの名前を日本語で書いてくれって頼んできたり、1円玉や5円玉や10円玉をちょうだいって言ってきたりとけっこう図々しいヤツ。美味しいものを食わせてもらったので、僅かだが心ばかりのお礼だ、とっておきたまえ、男なら聞き分けたまえというところですね。
Willcomスマートフォンやデジカメの機能を見せてあげたら、凄い興奮してたよ。で、デジモノの値段を聞いてきたから正直に答えたら、「オーゥ、ミリオネア…」なんていう言葉が彼の口からは漏れた。日本では赤貧ニートの俺だけど、いけるかな!?って思っちゃうよね。

このサイヤ人風のハンサムガイは、シャイでいいヤツだったなあ…。

ミティラー美術の村へ


ネパール唯一の鉄道路線の駅であるジャナクプルダム駅を見学したあと、そこからリクシャーを使ってクワ村へ。ジャナクプル女性開発センターというところへ向かいます。

畦道みたいなところを歩いていると、「ハーイ、いいカメラね。写真撮ってよ」と幼女が姿を現したので、撮ってあげた。


ちょっと必要以上に枚数を撮りすぎたかな。でもこれは頼まれたから仕方なく撮ったのであって、成人した女性にしか興味ないんだからね!

この施設では、パブロ・ピカソも愛好していたというミティラー美術の現物を購入することができる。これはナシだろうっていうデザインの異様にデカいマグカップを二個と、仏足石ふうのコースターを一枚買った。全部で600ルピーくらいだったと思う。ペインティングにもいいものがたくさんあって、一枚250〜350ルピーくらいだったかな…ものすごく欲しかったんだけど、絵を持ち帰る手段がないので諦めるしかなかった。でも今となっては、皺くちゃにしてでも持ち帰ればよかったと少し後悔してる。

売り場のテーブルクロスの陰に、サソリが!!
絵や工芸品の数々は、女性開発センターに通っている女性たちの手によるもの。尼僧院みたいな印象の施設で、静かでとてもいい雰囲気でした。

死のロングウォーク

さて、リクシャー代をけちったせいで帰りはこの猛暑の中を歩くハメになってしまった…。途中でバイカーから乗っけてってやるよと声をかけられたんだけども、怖いので断ったりしてて。で、途中で女の子に声をかけて道を教えてもらってたんだけど、そうしたら、わざわざオトコのところを経由してくんだよね…。別にナンパなんかじゃないのに無駄に敗北感を味わわされちゃって、もうションボリだったよ…。
ここジャナクプルで経験した猛暑は、人生最悪のものだったと思う。デフォルトで42度の世界でしょう。汗がダクンダクン出てきて見る間に水分が奪われていって、コーラやファンタで給水しながら死ぬような思いでホテルに到着。パンツ一丁になって巻きタバコを吹かし、ベッドにうずくまってじっと暑さを堪えているうちに、いつの間にか眠りに落ちてたよ。ブラスバンド得も言われぬオリエンタルな音色を奏でながら表を通り抜けてくのを、夢うつつで聞いてた。

わんぱくども

目が覚めたら夕方の4時。もう大体見て回れたから帰ろうということで、ぎりぎり間に合いそうなカトマンドゥ行きナイトバスのチケットを速攻取りに行きました。
広々とした公園に立ち寄ると子ども達が野球をやってて、カメラを向けたら奇妙な踊りを踊りはじめた。


君たちは、あほか。
全員がダッシュで駆け寄ってきて、撮れたての写真を見ながらギャハハ、アハハと大笑い。「撮って撮って」の大攻勢が始まり、たちまち収拾がつかなくなってしまった。


この写真が、ネパールで撮った中で一番のお気に入り。
キャプテンっぽい子が「これで最後にしてくれよ」と言ってきたので、野球を邪魔してしまったことを申し訳なく思いつつも、手を振ってお別れ。
ジャナクプルの子どもって、物乞いをしないんだよね。カトマンドゥやポカラとは全然違う。旅人やカメラの存在が純粋に面白いらしくて、好奇心だけを胸に、微塵の疑いも抱かずに駆け寄ってくんの。ネパール来てから色々あって疑心暗鬼になってた俺だけど、もうジーンと感動してしまって言葉にもならない。心がジンジン痺れています。
その後も、すれ違った子ども達に写真をせがまれたりしてた。がんがん載せちゃうよ。

撮れば撮るほど…

新顔が現れ…


「このプレッシャー、写真左上か!」

バァァーーーン!!
誰だキミは!

ジャナクプルさらば

で、ホテルに戻るとユラーッとした怪しい男が廊下をうろついていて、理由も言わずに部屋番号を聞いてくんの。こんなの絶対泥棒にちがいないと確信しつつも*1、どのみち立ち去るわけなので「202号室ですよ」って気前よく教えてあげたよ。
泊まらずにチェックアウトしたら、フロントの子どもに苦い表情をされてしまった。荷物を担いだまま隣のレストランに立ち寄り、ラッシーやだだ甘いスイーツなどをがっつきつつクマルたちともお別れ。結局ここには3回も来ちゃったな。ケーキ5個くらい食った気がする。

バスパークに着いたのは、集合時間を5分ほどすぎた頃。
係の人が、「5分も遅れやがって、俺たちは待ってたんだぞ」と腕時計をわざとらしく指さしながら説教をたれてきたよ。日本ではあり得ないと言うか、出発時間まではまだ30分くらいあるのにそんなことを言われるわけ。で、肝心のバスの出発は遅れまくってるというのに、奴らは謝意を表明しようともしない。でも、どうしてか腹は立たないんだよね。理不尽だとは思ったけど、ただ面白ぇなあとか喜んでた。

*1:ガジェットとか散々見せびらかしてたからね