四十回のまばたき / 重松清


重松清四十回のまばたき」を読みました!!


四十回のまばたき (幻冬舎文庫)

四十回のまばたき (幻冬舎文庫)


重松清の小説を読むのは初めてです。
以前から本屋に平積みにされている「流星ワゴン」が気になってましたが、ドラマで放送されたので、「流星ワゴン」はドラマで消化してしまいました。
個人的に、「流星ワゴン」は面白かったんですが、全てが終わって作品の中身を振り返ると、然程印象を感じない世界観です。
不思議なもので、今回の「四十回のまばたき」も面白いのですが、振り返ると、「結局何だったんだろう?」と、感じてしまう所があります。


まあ、これが重松清という人の書く作品の世界観なのかも知れません。


この「四十回のまばたき」は、かなり一般人離れした設定の中でのストーリーです。
主人公を含め、ほとんどの登場人物に「欠陥」があります。
主人公の売れない翻訳家は、性格は完璧。料理も掃除も完璧にこなす故に、妻が不倫に至ってしまいます。
翻訳家は、小説を訳すよりも、泡だて器の説明書を訳した方がマシ。と、言われる程、メッセージを解き放つのが苦手なタイプ。
上手く感情を表現できず、妻が死んだことも、不倫していたことも、特に何も感じないような。
そんな中で、他にも欠陥を抱える人々とのストーリーです。


ミステリー好きの人には、「で?どうなったの!?」という結果を求めてしまう結末で終わりますが、様々なキャラクターの心理を読み解くように読めば、今後、みんなが成長して行くような場面で終わる形になります。


人間の心理を読むことが重要な、ちょっと読みなれないような小説なので、物理的な結末を求めてしまう私には、「結局何だったんだろう?」と思ってしまいがちです。
この「四十回のまばたき」は、物理的な結末がメッセージではなく、人の心の変化が重要なので、しっかりとした結末が出てるんですよね・・・。


読み進め方が、ちょっと不慣れですが、良い作品に出会えてよかったです。


この小説の凄い所は、重松清が、29歳から書き始めた作品という点です。
もはや29歳の繰り出すメッセージではないので、ホント驚きました。


何か残せる仕事をできるのは、ホント羨ましいですね!
ある意味、その点で勇気づけられるような、作品でもあります。