2011-12-09
■[memo]母乳についての私の経験
やっと客観的に振り返ることができるようになってきたので、記録しておく。
日本小児科学会では、様々なメリットをあげ、母乳育児を推進している。小児科医としてトレーニングを積んできた私が、子どもは母乳で育てたいな、と思うことは自然なことだった。
しかし、簡単にはいかなかった。まず、生まれた赤ちゃんが早産低出生体重児だったこと。生下時体重が2000gを大きく下回っていた娘は、直接私の乳首から飲めるようになるまでに3週間を要した。それから、私が産褥期に体調を大きく崩してしまったこと。必死で搾乳していたが、一時はほとんど母乳が出なくなってしまっていた。
母乳が出なければミルクで育つ。それでいい、と思う。今は。
けれど、産後すぐの混乱した頭では、そういうふうに落ち着いては考えられなかった。母乳が出ないことは何よりも苦しかった。罪の意識が私を苛んだ。NICUに入院中の子どもに母乳を届けること、飲んでもらうことは、数少ない「母としてできること」の一つである。それすら十分にできない自分を責めて泣いた。退院後も、ミルクを足すことに罪悪感が付きまとった。
母乳育児への強いこだわり。できれば母乳で、くらいの気持ちだったはずなのに、どうしてこうなっちゃったんだろう。
でも調べていくうちに、多くのお母さんたちが同じような思考をたどり、悩んでいることがわかってきた。
母乳で育てたい、けれどうまく軌道に乗らない、と私のように悩むお母さんたちの目や耳に飛び込んでくる「情報」は、あまりにもひどい。
これはほんの一部。→ はてなブックマーク - hibigenのブックマーク - 母乳
「牛の乳を人間に飲ませるなんて言語道断」「ミルクで育った子は身体が弱い、母子愛着が弱い」「産院や健診でミルクを足せという医師は粉ミルク会社の回し者」といった極端な粉ミルク悪者論が席巻している。「油ものや刺激物は一切禁止、パンもだめ、麺類もだめ、甘いものはだめ、果物もだめ」という、これに従うと
になっちゃうという食事療法を推進している流派もある。さらに母乳がよく出るというハーブティやサプリメントが結構なお値段で売られている。
人の罪悪感につけこみ、藁にもすがるような気持ちを悪用する人、言説、商売は、まず信用できない。冷静になればわかる。しかし、普段はニセ科学を揶揄している側の(と思っている)自分でさえ情報に振り回されてしまったことを考えると、弱っている人が優しそうな顔をして近づいてくるニセ科学にからめとられてしまうのが本当によくわかる。
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大切なことは、正しい知識と、平静心。それだけだ。本来なら、妊娠中にちゃんと調べて、準備しておくべきだったと思う。
結局、きちんとセオリー通りの頻回授乳と適切なミルクの追加を実践してみたところ、生後3カ月を迎える直前で完全母乳となって落ち着いた。ちなみについ買ってしまった「母乳がよく出るハーブティ」は、効果のほどはわからないが、結構美味しい。ノンカフェインのあたたかい飲み物として今も愛飲している。
最後に懺悔。私は小児科医なのに、あまりにも母乳育児の実践についての知識が足りなかった。1年目のほんのひよっこの頃から1カ月健診を担当していて、体重の増えの悪い赤ちゃんのお母さんに、「少しミルクを足してください」と簡単に言っていた、と思う。医学的に間違ってはいなくても、母乳で育てたいというお母さんたちの気持ちを、深いところでは何も理解していなかった。これは本当に深く深く反省している。
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