年俸制と残業代 〜シリーズ 改めて「残業代請求」1〜

先日、事務所内で打ち合わせをしていた際に、残業代請求の話題になりました。
色々と話をしていてわかったことは、「自分は残業代が発生しない」と思っている方がまだまだ多いのではないか、ということです。
例えば、「残業代は役付きでない社員に発生するものだから、役職の自分は発生しない。」や、「残業代が発生するのはお給料が月給制の人たちだから、年俸制の自分には関係のない問題だ。」など思っている方も多くいらっしゃるのではないかと思います。

多くの方が残業代の発生の対象であることは、当事務所の「残業代請求相談.com」で詳しく記載していますが、改めてこのブログでも簡単に説明いたします。

まずは年俸制についてですが、年俸制でも残業代は発生します

年俸制は1年の支払総額を決めておき、月に分割して支払う制度です。通常は、年俸の総額を12で割ったものが月毎に支給されますが、総額を16で割って、年2回のボーナス月に2ヶ月分ずつを支給するなどという場合もあります。
1年の総額が予め決められているからと言って、残業代の発生がないわけではありません。
特に何の条件も設定しなければ、基本的には原則1日8時間・週40時間(事業場によっては44時間)を超える労働に対して、割増賃金が発生します。つまり会社は、分割して支払っている毎月の給与とは別に、残業代を計算して追加支払いをしなければならないということになります。

会社が年俸制を導入するにあたり、あらかじめ残業代を年俸に含めておくことが認められないわけではありませんが、そのためにはいくつかの条件があります。

条件1.年俸に残業代が含まれていることが労働契約の内容から明らかであること
年俸に残業代が含まれているということを会社側が明確にしている必要があります。明確な規定や説明がない場合は、残業代の含まれない年俸制と考えられ、残業に対する割増賃金を請求できます。
条件2.残業代部分と所定労働時間に対応する基本給部分とを区別できること
年俸額のうち残業代の部分が区別されその額が明確になっている必要があります。この区別が不明確な場合は、実際の残業代部分を会社に請求することが可能です。
条件3.実際の残業時間に対応する割増賃金額を下回っていないこと
実際に残業した時間に対応する割増賃金額が、年俸に含まれている一定額の残業代を上回った場合には、その差額の支払いを会社に請求できます。

以上の条件がない場合には、年俸制であっても残業代は発生します。
給与が年俸制の方、改めてご自身の労働契約や給与明細をご確認ください。残業代が発生しているかもしれません。

次回は「管理監督者」について、記載する予定です。

当事務所には、残業代請求や不当解雇その他の会社とのトラブルについて、精通している弁護士がおります。
是非、経験豊富な日比谷ステーション法律事務所へご相談ください。