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イギリス文学・文化関係の本の紹介

2010-08-07

【漫画】ブームにあやかって…

09:12

もともとが貧乏性なのか、ひとつのことだけに集中するのが苦手である。そのため、BGMに音楽を流しながらの「ながら〜」はいつものことだし、トイレには必ず本を持ち込んでは家族に嫌がられている。東京の方へ出かけることがあれば、ついでに(というのを口実に)神保町界隈に寄ってから帰宅することが多い。だって、せっかく東京へ出かけるのだから、ひとつの用事だけで帰ってくるのは「もったいない」感じがするのである。鎌倉から東京へは「わざわざ」出かけていくという感じが強いのだ(出かけてしまえばそうでもないんですが…)。

そんな感じで、昨日も神楽坂にある某学会事務局に用事があったので、ついでに神保町に寄ってみた。行くところはいつも限られていて、新刊では三省堂書店東京堂書店、古本では大島書店、崇文社書店、源喜堂ブック・ブラザー、北沢書店、小川書店の各洋書古書店ボヘミアンズ・ギルド友愛書房、小宮山書店などの和書古書店くらい。以前は平気で一日中歩き回っていたものの、最近は時間も体力もなくなってしまったため、このうちの数軒をぶらぶらとまわるだけになってしまった。それでも、主に洋書古書のテキストを中心に数冊は必ず買うのですが。昨日も、Everyman版の伝記と小説などを数冊買いました。

その途中の三省堂書店イギリス文学コーナーに下の漫画が平積みにされているのを発見しました。オーウェルの『1984年』の漫画版。なんか、このところ、やたらにオーウェルづいていますね。

COMIC 1984

COMIC 1984

この作品は、純粋にこの小説を漫画したいというよりも、村上春樹の『1Q84』のブームに便乗して企画されたのだろうが、まさかこの小説を漫画で読むことができるようになるとは思わなかっただけに驚いた。本来であれば買って読むべきだとも思ったものの、少し立ち読みをして買うのをやめてしまった。ひとつは、自分の持っていたイメージとは違う感じの漫画になっていることと、何よりも絵柄がダメだったから。この小説は近未来小説の中でも特に漫画化するのは難しいように思うが、もし『AkIRA』の大友克洋が漫画を描いていたら、おそらく私は迷わずに買っていたように思う。

AKIRA(1) (KCデラックス ヤングマガジン)

AKIRA(1) (KCデラックス ヤングマガジン)

漫画の場合、キャラクターを含めた好みが大きく反映されるようなところがある。それ以上に、この小説の世界については、大友のように詳細にリアルに描き込んでこそ、漫画化することが効果的に感じられるのではないだろうか。少なくとも私には、本書の漫画は雑すぎるように感じられた(個人的な好みですみません)。蛇足ですが、『AKIRA』は素晴らしい近未来漫画だと思いますので、興味のある人は村上龍の『コインロッカー・ベイビーズ』を合わせて読んでみると面白いと思います。

新装版 コインロッカー・ベイビーズ (講談社文庫)

新装版 コインロッカー・ベイビーズ (講談社文庫)

とにかく不思議に思ったのは、「果たしてこの漫画は売れるのであろうか?」ということ。小説の『1984年』については高橋和久先生による新訳が出たばかりで(出版を急いだため、ほぼ1ヶ月で訳したとか。スゴイですね…)、この作品に興味のある人は、まずは読みやすくなったこちらに手を出すのであろう。その後、わざわざ漫画を読んでみようと思うだろうか。

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

あるいは、漫画を好む人がハルキの『1Q84』を読むとは思いにくいし、『1Q84』を読み終えた人が漫画を読んでみようと考えるとも思いにくい。そもそも、電車の中を見てもわかるが、携帯電話が普及した後、漫画を読んでいる人の数が圧倒的に減ったように思う。そもそも、今の大学生は漫画を読んでいるのだろうか…。そんなイメージもないので、少し前にゼミ生に尋ねてみたところ、「読まないことはない」という消極的な返事であった。また、授業で『1984年』を扱ったにしても、小説を読むのをサボって、映画を観るだけで誤魔化そうという学生はいるように思うが、この漫画を読んでレポートを書こうと企むことはないように思う。もしそうであったら、この漫画はいったい誰が読むのであろうか? 私には疑問である。

漫画の好きな人、ぜひ、この作品を読んで感想を聞かせてください。面白いようだったら、私も読んでみようと思います。