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ゴーゴーカレーでロースカツビジネスルー増し頼んでキャベツを4回おかわりするブログ

アンブロークンアロー 戦闘妖精雪風 神林長平

アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風 (ハヤカワ文庫JA)

アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風 (ハヤカワ文庫JA)

戦闘妖精雪風の新作が出たー! ワッショイヽ(゚∀゚)メ(゚∀゚)メ(゚∀゚)ノワッショイ
と思ったのが2009年。文庫になるの時間がかかるんだろうなぁ……と思ってたら案外早く文庫になって嬉しかった。

ジャムという姿の見えない異星人と人間と戦闘機雪風(戦闘知性体)の戦い。
ジャムからの人間への宣戦布告から始まるこの巻は、ジャムが人間とのコンタクトをとろうとし、徐々にジャムについて分かっていく。
いっぽう雪風とパイロットの深井大尉はお互いの理解を深めていく。

この作品は、本当に丁寧に描かれる人々の心理描写が素晴らしい。
いや、それは人なのか? 人を擬態したジャムかもしれない。
そのジャムの思惑を読みながら、もしくは独自の指向を持つ雪風やコンピュータたちとの対話など、そういったやりとりが、本当に丁寧に描かれていて、その一つ一つがこの雪風という壮大な物語を支えている。
ものすごく離散的で、量子論的な話が繰り広げられるこの巻。
存在というものが極度に曖昧で、いまいた世界がそのままの世界ではなくもう一つの現実であったり、それがリアルであったりする……構成としては何回なのだが、その中でも特に印象的だった台詞がある。
意志をもった機械や、姿の見えない異星人と戦う中で、ここが、きっと、この作品の一番のテーマなのではないだろうか。

 僕は人間だよな、とトマホーク・ジョンはおれに問いかけながら死んでいった。彼は、このおれに教えてくれたのだ、人間が人間でありつづけることの困難さを、だ。

物語はまだ、完結していない。
雪風は飛び続ける。次のフライトはいつの日か。
続刊がたのしみ。