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Tuesday, 01/25/2005
■[AG][body,unity]ギデンズ『社会学』 
第3版6章「身体――摂食、病気、高齢化」の「まとめ」に次のような記述がある。
身体の社会学は、その研究領域として、われわれの身体がいかに社会的要因の影響を受けていくかに焦点を当てている。拒食症の摂食異常の増加は、こうした社会的影響の一例である。拒食症や摂食問題は、主に若い女性の間に見いだすとはいえ、現代の社会で進行している根本的な変化――とりわけ、食べ物の消費様式の変化や、女性の社会的地位の変化――と密接に結びついている。(Giddens 1997=1998: 171)
この分析枠組みは、加藤によって区別された「単に身体の二重性(物質性/社会性)を呈示する分析と、そうした二重性そのものがいかに構築されるかというより高次の問いに照準する分析との差異」の、前者の分析の典型例である。社会の外に身体があり、身体は社会の力を受けとめる。そして身体は行為によって社会に働きかけ、組み替えていく、というわけだ。
さらにつぎの「まとめ」が続く。
摂食異常はまた、自然の社会化というもっと広い過程とも関連している。自然の社会化とは、かつて「自然」であった多くの現象――つまり、自然の一部――が、今日、社会的要因やテクノロジーの変化によって規定されていることを意味する。一例が、生殖である。女性の人生は、かつてそうであったようなかたちで、出産と子育てに支配されることはもはやない。現代の避妊法等の技術革新は、「選択」が「自然」にとって代わっていくことを意味している。(同前)
これは上記の〈物質性/社会性〉区別に準拠したもののみかたの典型例であるといえる。自然である身体と、自然に影響を及ぼす社会テクノロジー的要因、という現実の位置づけである。このことが、「自然」から「選択」へ、という近代化のストーリーを語ることを可能にしている。
ここに端的な錯視を見いだすことができる。「女性の人生は、かつてそうであったようなかたちで、出産と子育てに支配されることはもはやない」という言明は、(生殖機能を割り当てられた個体を標示するカテゴリー名称であるところの)女性が、孕み、産むことに加え、子育てにも支配される、という前提に満ちた「社会的」イデオロギーを「自然」として指し示している点において、錯視ということができる。
ギデンズのいう「自然の社会化」――社会の外にあったはずの自然へ、社会が侵出していく、影響を与えること――とは、われわれがここで照準している〈自然/社会〉区別の社会的生産、という社会学的観察の対象そのものである。社会学の仕事は、〈自然/社会〉区別に準拠するのではなく、当該区別に基づく観察を観察することでなければならない。あるいは当該区別そのものを観察することでなければならない。いわば、「身体の自然化」という「社会的」事象が問題なのだ。このことをもって、われわれは身体論の社会学的観察、あるいは身体論のセカンド・オーダーの観察とよぶことにする。
『社会学』第3版「身体」の章の冒頭で、「基本概念」として「身体の社会学」「自然」の二つがあげられている。「身体の社会学」は、社会的要因がわれわれの生におよぼす影響を研究する領域として説明される。そして「自然」については、身体がテクノロジーによって自然から分離していくという事態をあらわすテーマである。ここでギデンズはフーコーの「社会的テクノロジー」概念をとりあげ、「自分の身体を特定の仕方で変えるために身体の機能にたいしておこなう、あらゆる種類の定期的介入」のことであると解釈する。その一例として「拒食症の中心的要素となるダイエット」があげられている。
- 作者: アンソニーギデンズ,Anthony Giddens,松尾精文,西岡八郎,藤井達也,小幡正敏,叶堂隆三
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『社会学』第4版ではフーコーの「社会的テクノロジー」概念は後景に退き、〈身体/社会的要因〉区別を主導的差異として「身体の社会学」全体をまとめ、ジェンダー・階層・エスニシティを媒介変数とした〈健康/病気〉の(区別を施した)構造化に焦点を絞る。そのなかで、パーソンズによる「病人の役割」概念に触れている。
タルコット・パーソンズが展開した病人の役割という概念は、病人が、病気の混乱を引き起こす衝撃的影響を最小限に抑えるために、特定の行動形態を選び取っていることを指摘する。病人は、たとえば通常の責任から離脱する権利といった特権を許されているが、医療者の助言にしたがって健康の回復に積極的に努めなければならない。(Gideens 2001=2004: 219)
なぜ病人は「特定の行動形態を選び取る」のか。病気として指し示された身体には、可能な行為の選択肢が開示される(ということはつまり不可能な行為の選択肢が開示されない)。病人役割のひとつの要素として「病人は、病気であることに個人として責任を負わない」ことがあげられているが、ここでも身体の自然化(「身体原因・要因論」)という社会的過程が前提となっている。
この病人役割の分析は、社会学的観察の様態をもっている。
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