お髭処blog

ドイツのものを中心としたボードゲーム・カードゲームのプレイ記録・感想を中心としたブログです。最新のドイツゲームから、紀元前から伝わるゲーム、旧西ドイツ製のレアゲーム、日本伝統の博打まで幅広くプレイしています。

2018年ベストボードゲーム10


今年2018年に初めてプレイした、あるいはとても久しぶりに昨年プレイしたボードゲーム・カードゲームの中から特に印象に残ったゲーム、面白かったゲームを10個選びました。
ベスト3は選びますが、他に順位はつけません。
全て既にブログに書いているので、抜粋して解説します。
今年は定番とか名作との評価を既に受けているゲームをプレイする機会が多くあり、大変に面白かったにもかかわらず、圏外となってしまったゲームが多数ありました。例えば、次のゲームは大変に残念ながらトップ10には入りませんでした。

さて、2018年ベストボードゲーム10、10位から4位までのボードゲーム・カードゲームは以下の通りです。

クアックサルバー/Die Quackalber von Quedlinburg

現代的なバースト系ゲーム。ゲームのタイトルは最近Twitterでよく目にしていたけれど、最近プレイすることができました。
各プレイヤーは、自身専用の薬袋を持っています。ゲームではチップを獲得し、その袋に入れてゆきます。デッキ構築です。「オルレアン」を思い出します。
また、各プレイヤーは鍋のボードを持っていて、ゲーム中薬袋からチップを1枚1枚引いては並べます。これがたくさん並べれば並べるほど多くのものを獲得できて勝利に近づくのですが、同時にリスクがあります。白いチップがたくさん並ぶといわゆる「バースト」で取りすぎ・欲張りすぎ。失敗となり、得られるものが減ってしまいます。
チップには種類がいくつもあって、引いたときの効果が違うので、組み合わせを考えながら投入します。
「GREED!」に代表されるバースト系の常で、勝っているプレイヤーは手堅く得点を稼ぎ、追うプレイヤー達はリスクを取って多くの得点を狙います。
しかしながら同時に現代的な救済措置があちらこちらにあります。これが自然な不自然な印象を与えず、ビジュアル的にもうまく取り入れられているのが上手いところ。例えば、スコアボードのネズミのイラストには意味があって、しっぽをまたぐ本数が得られる救済措置の数となっています。
この総合的な完成度の高さが高評価につながっているのでしょうね。

http://d.hatena.ne.jp/higedice/20181119/1542638324

バザリ(バサリ)/Basari

こう思った! これはまるで《ハゲタカのえじき》を立派にしたボードゲームだと。
毎ターン、各プレイヤーには3つの選択肢があります。それを示すタイルを持っていて、裏向きに1枚出し、皆で一斉に表に向けます。3人以上が同じ選択をしてしまうと、その人達はそのターンは行動できません。1人だけならば、予定通り実行できます。そして、2人の場合はその人達同士で交渉し、どちらが実行できるか決めます。交渉といってもルールの手順に従うだけです。交互に「これだけ宝石を渡すから、私だけにそれを実行させてほしい」と言う提案をします。相手はそれを引き受けるか、さらに価値を釣り上げた提案をします。

それらがうまくまとまって、全体としての完成度が高い。
ルールは単純、勝つのは難しい。まさにそれを実現した90年代ドイツゲームだと思います。

http://d.hatena.ne.jp/higedice/20180114/1515927018

コールトゥグローリー/Call to Glory

ルールを読んだ時点では単純すぎて、「これゲームになってるの?」と疑問に思うも、プレイしてみると切れ味鋭いプレイ感。これはすごい。同作者のコロレットを思い起こさせます。シャハトっぽい。苦しい。

http://d.hatena.ne.jp/higedice/20180219/1519044605

にわとりも歩けば/Blindes Huhn extrem

にわとりも歩けばは、トリックテイキングゲームです。コロレットやズーロレットのミヒャエル・シャハト(シャフト)によるデザイン。
スートはなく、各プレイヤーが1枚ずつカードを出して、数字が一番大きい人が勝ちます。そして、その時に出したカードを総取りします。その際、3枚だけ存在するこぶたカードは獲得すれば得点に、何枚もあるにわとりカードはマイナス点になります。大多数のカードは得点には影響しません。最終トリックを取ると特典があります。
キモとなるのが、手札をシャッフルしたり並べ替えてはならず、その右端か左端のカードしか出してはいけないというルール。それを前提に、最初にカードを配ったらそれぞれ好きな順に手札を並べ替えます。それ以降は並べ替え禁止です。
実は最初このにわとりも歩けばのルールを読んだ際には、駄作ではないかと心配しました。あまりにゲームをコントロール不能に見えたのです。しかし、実際にはとても面白いゲームでした。
今回のメンバーは全員にわとりも歩けばは初プレイ。確かに、最初のラウンドでは制御不能で偶然が面白いパーティーゲームのような展開となりました。しかし、その経験を前提に繰り返すと、急にゲームに能動的に影響を与えることができるようになったのです。
左右の一方は数字の大きなカード、他方は小さなカードを置くよう調整し、ところどころに特殊カードを置いてゲームをコントロールしようとします。最初の並べ替えが重要かつ面白いところです。
この加減がとても面白く、変わった、しかし面白いトリックテイキングだと思います。

http://d.hatena.ne.jp/higedice/20180423/1524438496

アズール/Azul

それぞれのプレイヤーがゲーム盤を持ち、そこに色別のタイルを並べて得点を競います。
単にタイルを置くと1点ですが、直列にタイルが並ぶように置くと得点が多く入ります。2枚並べば2点、3枚なら3点、最大5枚で縦と横を別々に計算します。つまり、きちんと望むところにタイルを置かないと、全然得点が伸びません。
しかしながら、タイルを盤面に置くには2段階の手順を踏みます。そこでは、枚数を効率よく取得することも考えなくてはいけません。自分で効率よく取ろうと頑張ったのに、よく見たら次の人が大喜びということも…。その辺りを全て押さえるのはとても難しい! つまり、上達の余地と考えることの余地がたくさんあります。
自分自身のパズル的・効率追求的思考と、他のプレイヤーがどのタイルを欲しがっているのかを考えるインタラクションの多さが同居するデザインが素晴らしい。
しかもこれ、運の要素がないアブストラクトゲーム的な要素があります。各ラウンドの初めにタイルを取る丸ボード(?)に配置をするのはランダムですが、そのラウンド中には運の要素がありません。《メキシカ》を連想させます。そう言えば、このアズールのデザイナーはミヒャエル・キースリングですが、メキシカはそのキースリングとクラマーのタッグによるものでした。
タイルの美しさも魅力。美しい文様のある、厚みのあるタイルを使用します。厚紙のタイルでも同じゲームを作ることはできたでしょうが、その場合プレイ感はだいぶ違うものになったのではないでしょうか。
1時間かからずに終わるのもまたいいところ。似たゲームがなかなか思いつかないところも評価を上げます。

http://d.hatena.ne.jp/higedice/20180308/1520517561

砂漠を越えて/Durch die Wueste

ライナー・クニツィアによるデザインのボードゲーム。1998年作品。
盤面の初期配置と座席順以外に運の要素はない、完全情報公開型多人数アブストラクトゲーム
自部族のキャラバンのラクダを増やして、池を獲得したり(早い者勝ち)、オアシスに隣接したり(隙間があれば何人でも)、砂漠の土地を囲い込んで得点を獲得します。ゲーム終了時に得点が一番高い人の勝ちです。
毎手番できることは、ラクダを2個置くことだけ。しかし、それだけで思惑入り乱れるゲームが展開されます。
囲碁がわかる人達によると、「多人数囲碁だね」とのこと。そういう意味では「レーベンヘルツ」が好きな人には合いそうなゲームです。
「ひげさん(私)、全員と戦うように初期配置するんだもん」と言われながらのプレイ。そう、僕は1対1のトレーディングカードゲーム育ちのため、二正面作戦と言わず、三正面、四正面と全方面に対して全力で戦ってしまう傾向があるのです。だって、この狭い盤面で4人ではどのコマも誰かしらと張り合うことになるし、1人とだけ張り合う方がおかしいでしょ、全員と戦いますよ、などと主張しますが確かに複数方面に同時に重要な局面が訪れます。苦しい。
ここはいつかは置きたいけれど、いつおいても同じなので後回しにして…などということの連続です。でも、同時に囲碁のように囲うよりも池、オアシス、各色最大のキャラバンの得点が大きくもあります。ジレンマです。
この手のアブストラクトゲームは、1手番1つアクションを行うものが多い気がしますが、このゲームは2つのラクダを置きます。後から失敗をフォローできる気がします。特徴的なところだと思います。
1時間で終わるボリュームもいいところ。

http://d.hatena.ne.jp/higedice/20180313/1520896476

市場のお店/Auf Heller und Pfennig

90年台ドイツらしい、クニツィアらしい、シンプルなルールとコンポーネント
少数のコンポーネントとルール要素で複雑に思惑が入り乱れる面白さ。
お店コマの数字によって上昇する点数が掛け算なところなんて派手で過激。
極めて良い。

http://d.hatena.ne.jp/higedice/20180216/1518783917

そしてトップ3!

ついにトップ3の発表です!

アメン・ラー/Amun-Re

アメン・ラーライナー・クニツィアによるデザインの3時間級競りボードゲーム。2003年発売(最近発売されたアメンラーカードゲームは別のゲームです)。
3時間と長時間ボードゲームですが、まだ90年代の流れを感じる、そこまで複雑でないルールと、プレイヤー視点では遊びの焦点を絞ったデザインで好みです。でもルールを読むだけではプレイ感の想像がつかないところはありました。古代エジプトをテーマ・モチーフにしています。4人でプレイ。
何かと競りで陣取り・建築等を行います。
ゲームは前半と後半に分かれています。この前半終了時点で決算後、盤面に並べたほとんどのものが流れてしまいます。面白いのが、ピラミッドという重要建築物だけはその際に残ります。それを残しつつ、他の要素は最初からゲームを始めます。ピラミッドのオーナーの権利も無くなります。これが、ルールは変更なく前半と異なる条件でプレイするのです。これは魅力的。プレイするたびに展開が変わるとも言えるでしょう。
特殊カード(パワーカード)の存在は展開に指針を与えてくれます。他のプレイヤーのパワーカードを予想しながら手を考えるのも楽しいところです。カード構成を把握できる程の種類しかないのもいいところ。
立体的なピラミッドを盤面に建設していくのも楽しくなります。
クニツィア最後のゲーマーズゲームとなっているとの声も聞きます。

http://d.hatena.ne.jp/higedice/20180507/1525646863

3位はアメン・ラー
ど定番のボードゲームを初プレイしたのでした。

パンデミック:レガシー シーズン2/Pandemic Legacy: Season 2

昨年世界で高評価を得た《パンデミック:レガシー》の続編。ネタバレにならないよう開封コンポーネントからわかること、ルールからわかる事、「プロローグ」までプレイしての内容とします。
前作では病気で滅びに向かう人類を救うべくゲーム内時間で12ヶ月の長丁場を戦いました。そのゲーム回数は12回を超えます。TRPGでいうキャンペーンです。ストーリーが繋がっていて、ゲームの進展があるたびに秘密の箱の蓋を開けて追加のコンポーネントを取り出したり、ルールの追加が発生したりします。カードには銀はがし(スクラッチ)があったりと、基本的に繰り返して遊ぶことはできません。ボードゲームなのに! しかし、だからこそ作ることができたと思われる斬新な仕組みがありました。これが斬新なだけでなくとても面白かった! ストーリーも面白かった!
だから、続編である今回の《パンデミック:レガシー シーズン2》に大期待なのです。
70数年前世界は滅亡した。わずかに生き延びた人類は的ストーリが熱い! 確かにキャラクターイラストは打って変わって北斗の拳かマッドマックスかという雰囲気に。
ゲーム盤を見ると、いかにも隙間がたくさんあります。これから探索を進めるのでしょうか。よく見ると印刷されている部分は大西洋と地中海です。プレイヤー達が操るキャラクター達はヘイブン(隔離地)の住人です。人類は疫病から隔離した都市を海上に作り、そこから旧来の都市に補給を行なっていたのでした。しかし、ヘイブンから各地への連絡が取れなくなることが発生し始めます。そこでヘイブンは精鋭をその外へ送り出すことにしたのでした。それが我々、今回のキャラクター達です。

http://d.hatena.ne.jp/higedice/20171120/1511185225

2位はパンデミック:レガシー シーズン2。
協力ゲームです。
これはストーリーを終了するまで(クリアするまで)プレイすることができました。ストーリー面でもシステム・ルール面でも「ネタバレ」の要素があるので、表現が難しいところです。大きくいうと、シーズン2を終えた後にシーズン1を振り返ると、シーズン1があくまでパンデミックの延長として作られたように思えてくるのでした。つまり、シーズン2は独自性が大きく増しています。
ストーリーも前作をきちんと引き継いており、後半までそれが関連して感動すらあります。
難易度はシーズン1よりも難しく、苦労しました。
これからプレイするのであれば、シーズン1がおすすめです。ストーリーも繋がっているし、ゲームシステムも、勝利するための難易度もだんだんと難しくなってくるから順に遊ぶのがベストかと思います。

サンチアゴ/Santiago

2003年のボードゲーム。地味な碁盤の目状の盤面にタイルと水路を置いてゆきお金を稼ぐ。説明を聞くと恐ろしく地味。しかし、プレイしてみるとこれが面白い。なんか面白いという次元を超えてすごい。実プレイ時間90分から100分で多人数ならではの駆け引きを味わうことができます。今回5人でプレイ。
各プレイヤーは手番が来ると、タイルを一枚盤面に置きます。タイルはプランテーションです。置いた人はいわばプランテーションのオーナーで、ゲーム終了時に得点となります。全員が1枚ずつ置くと、ルール指定の方法で選ばれたプレイヤーが水路を1本起きます。各プランテーションは水路に接していないと、枯れてしまい価値を失います。この水路がプランテーション2枚分の長さなのがみそ。長さ2枚分で両側にタイルがあるという事は、合計4枚のプランテーションに水を供給できます。5人プレイなのに!
ここにマルチプレイ的な駆け引きがあり面白いのです。皆自分自身だけに有利となるように水路を引いて欲しいのですが、なかなかそうはいきません。結局相乗りして一人だけに有利とはならないようにタイルを配置したり、そうだというアピールをして水路が来るようにします。しつこいようですが、毎ラウンド5人で各人1枚ずつタイルを置いて、最大4タイルまでしか水は供給されません。相乗りアピールがモノを言います。サンチアゴにおいて5人プレイはかなりいいと思います。
もう1ラウンド目に水路を意識してタイルを1枚置く時点でものすごく面白い。90年代から2000年代前半のドイツゲームってこうだよな!と思わせるゲームです。

http://d.hatena.ne.jp/higedice/20181211/1544535830

2018年ベストボードゲーム10、トップはサンチアゴでした! 全く新作ではありませんが本当に面白い。
ルール・システムがズバッとゲーム全体を定義して、楽しみの根幹もそこにある。そんなゲームが好きなのです。1990年代から2000年台前半のドイツゲームがそれであり、サンチアゴもそれに当てはまるボードゲームだと思います。