新書「プライド」 感想

そんなわけで。安食正夫著、中公新書「プライド 現代人の精神医学」を読了したので、軽く感想を書いておく。
人間が持つプライドは、精神医学、精神保健において薬にも毒にもなるんじゃないかと著者は着眼した。そこで、プライドの効用や社会における機能などについて考察したのが本書である。構成は以下の通り。

まえがき

  1. 精神不健康と社会とのかかわり
  2. 年齢層別プライドの特徴
  3. プライドの構造とタイプ
  4. プライドの機能
  5. プライド観の前提としての人間観

あとがき

んで、まあぶっちゃけた感想を言うとよく分かりませんでした。
まず、全体的なプライド総論をあまり語ってくれずに、章ごとのプライド各論に注力しているので、けっこうまとまりが悪い。そしてプライド各論はかなり専門的になってて、引用される文献も僕からすると難易度高いものが多い。教養として河合隼雄あたりを事前に読んでいれば良かったのかもしれない。
最後も総括しないまま終わっているので、読み終わった後「結局どういうことなの……」となってしまった。あと2,30ページとは言わないまでも、せめて5ページくらいでまとめのプライド総論を置いておいてほしかったな。
あとやっぱり社会科学系の文献では仕方ないことなんだけど、古い。33年前の本だからなあ。さすがに社会の様子とかも今とは違っているし、どう読んでも現代には生かせない部分もある。
プライドという点から人間心理や社会、組織を論じるという切り口自体は面白いと思うので、そういう部分に興味がある人にはおすすめ。ただし、前述のような古さと、専門的な引用文献の話についていけるかどうかに注意。

プライド―現代人の精神医学 (中公新書 457)

プライド―現代人の精神医学 (中公新書 457)

余談

ルース・ベネディクトの「菊と刀」(The Chrysanthemum and the Sword)は有名だよね。でも、ジャン・ステッツェルという学者が「菊と刀に非ず」(Without the Chrysanthemum and the Sword)という本を出していることはこの本を読んで初めて知った。
ジャン・ステッツェル(Jean Stoetzel)はフランスの学者。戦後来日して青年層を対象に実証研究を行い、「菊と刀に非ず(菊も刀もない青年たち)」を発表した。

菊と刀 (講談社学術文庫)

菊と刀 (講談社学術文庫)

Without the Chrysanthemum and the Sword

Without the Chrysanthemum and the Sword